第54話 クエフ飛行場
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BE36は、マモトク飛行場の東端、“25”と書かれた滑走路上にいた、
(セスナ172の約倍のパワーだからな・・・ちょっと慎重にいこう)
スロットルを入れると、BE36は、ゆっくりと滑走を始めた。徐々にスロットルを奥に持っていくと、パワーに引っ張られるようにBE36が加速していく。
(すごいパワーだ!)
操縦桿にその力が掛かってくる、トリムを間違ったら、腕力では制御できそうにない力だった。速度計が75㏏を超えた所で操縦桿を引くと、BE36空中に浮かび上がった。速度100㏏を維持しながら西に向かって上昇していくと、5分もしないうちに、高度5000ftを超えてしまい、まだまだ余裕で上昇出来そうである。前方に見える半島を迂回するように、僅かに左に進路を変えたところで5500ftの巡行飛行に移行。トリムを合わせるとほぼまっすぐ飛んで行く
(すごい安定性だ)
セスナ172では、飛行中もふわふわと漂っている感じで諸元を修正しながら飛行していたのであるが、BE36はオートパイロットが有るわけでもないのに、まっすぐ飛行していたのである。
(随分違うものだな・・・)
インストールされている知識ではわからない感覚的な違いを理解しながら飛行するジュアルであった。
半島の南端を通過した後、前方にわずかに見える半島を目指して飛行していく、幸い、雲は周囲になく、気流も穏やからしい。右を見ると、ガサキナ飛行場が海上に見えた。
(確か島を潰して飛行場にしたらしいが・・・)
135㏏(250km/h)で飛行していくと10分ほどで半島の上空にやって来た。
右前方には巨大な船?のような何かが見える。
(まさかな・・・)
と思った、次の瞬間、船のような何かから火の玉が飛んできた。幸い、精度が悪いのか、命中しなかったが・・・。
(仕方ない)
ジュアルは操縦席の脇にある小窓を開けると、高度を下げ始めた水面まで1000ftのところまで降下して来たところで、水平飛行に移行。船のように見えたのは、瓦礫の山と化した島だった。その南端からこちらに向かって火の玉が時たま飛んでくる。下手なのか、避けるまでもなく1つも命中しないのだが
島の南端が真西になるように調整しながら、飛行していく。そして、機首を北に向けた直後
『ファイヤーボール』
魔力を込めた1発を島の南端に向け発射、直後にスロットルを全開にして上昇を始めた。
ジュアルは自らが放ったファイヤーボールが命中したと思われる炸裂音を聞きながら、旋回して様子を見ると、島の南端部分有った瓦礫が全て消滅していた。島からの攻撃もなくなったので
(とりあえずはいいだろう・・・)
そのまま、西に進路をとりながら高度を3000ftで巡行するのだった。
VOR1を115.8MHzにセット。HSIの方位を調整してホーミングする。風の影響もほとんどないらしく、西にまっすぐ飛行しながら、飛んで行くと、10分もしないうちに前方に島がいくつか見えてきた。
(あれだな)
クエフの飛行場は、一番大きな島でもある南の島の東側、こちらに突き出したような山の裏側に隠れるにように存在している。R/Wは03/21。この飛行場にはターミナルが2つあり、旧ターミナルは空港事務所だったはずである(インストールされた記憶がそう言っている)。なので、ジュアルは、旧ターミナルに向かう予定にしていた。
(あいつ、何も言っていなかったしな・・・)
この飛行場に行くように言っていた、“神”と名乗った金色のあれである。
島の上空まで来たところ、特に風の流れもないらしく、港と思われるところから出ていた煙がまっすぐ立ち上っているのを確認したジュアルは、機体を左に旋回させた。その後、島の南端から右旋回し、一気にR/W03のファイナルコースに入ると、脚を降ろした。
(おっと!)
慌てて、トリムを調整する。セスナ172と違って、トリムを取らないと、操縦桿を支えるのが大変であることを体感したのであった。
その後、フラップをアプローチに変更。滑走路が2000mあること、ターミナルが北側にあることから、Maxまでフラップを降ろさずに着陸することにしたのである。カウルフラップをOPENにして、ミクスチャーとプロップがMaxであることを確認。速度が80㏏を切らないように注意しながらBE36を滑走上まで持ってくると、僅か操縦桿を引いた。その直後、BE36はクエフ飛行場R/W03に無事着陸したのであった。
・・・
右手に駐機場とその奥にあるターミナルを見ながら、ノースエプロンと言われる北型の駐機スペースに移動。
(誰もいない?)
人気の感じない建物の近くでBE36を止めたのである。
念のため、異次元ポケットにBE36を収納し、何故か入れないようになっている入り口の脇に空いている部分から中に入る。
倉庫のような所と思われる場所を抜けると、建物に入れる扉があった。思わず、ショートソードを構えるジュアル。
(今まで、全て何かいたからなあ・・・)
警戒しながら扉を開けると・・・何もいなかった。
人は勿論、魔物の気配も感じない。ジュアルは2階に上がる階段を登っていくと、右側に事務所らしき部屋を発見した。
(たぶんここに・・・)
警戒しながら、ジュアルが部屋に入ると、そこには、赤い花を頭に付けた女性(?)のような何かが待っていた。
『ようこそ、クエフへ~♪』
HSI:Horizontal Situation Indicator
RMI: Radio Magnetic Indicator
です。




