第49話 逃亡
一難去って、また一難・・・
結界は無くなっていた。このターミナルにあったものを確認した結果、やはり、電力が送られていたであろう、マクサアに何かがあるとしか思えなかった。というより、他に手がかりは見つからなかったのである。
(確か島のはずだがマモトクから橋が掛かっていたはず・・・)
マクアサ地方は、隣接するマモトク地方と橋でつながっていたのである。結界が無くなったことが判れば、ゴマシカの軍が押し寄せるはずである。必ず敵対すると決まってはいないが、関わりたくないのは本音である。
(ゴマシカの軍が、この施設を破壊しないとは思えない)
発電所というものを理解出来ないこの世界の人たちから見えれば、ここは謎でしか見えない。とすれば、破壊する可能性は高かった。
ジュアルはターミナルを出て、街道を西に向かった。
・・・
クラザキマの街の入り口まで来た所で、沢山の兵士が、街道の方を睨んでいるのをジュアルは発見した。幸い、兵士達はジュアルにまだ気が付いていない。街道から一旦外れて様子を伺っていると、荷馬車がクラザキマの街に向かって走っていった。兵士達に止められる荷馬車を見ながらその様子を観察していると、何やら似顔絵のようなものを見せながら、荷物の中に人が隠れていないか確認し始めた。ジュアルは見つからないように近づくと
『良いか。ゴマシカ地方にジュアルという逆賊が潜んでいるらしいのだ。見つけ次第、報告せよ。生死は問わん』
兵士の怒鳴る声が聞こえてきた。
(えっ?どうして逆賊・・・)
理由は解らないが、ゴマシカ軍がジュアルを捜索していることは明らかだった。一つ明確なのは、このままクラザキマの街に入るのは危険ということだ。とりあえず、街から離れて海岸に向かうと、港に漁船が1隻停泊していた。どうやら出港しようとしているらしい。
『こんにちは。今から漁ですか』
ジュアルは船の持ち主と思われる男に声を掛けた。
『おう。今からツマサ島まで、物資を届け行って、それから漁をして帰ってくるんだ』
見ると、船には、漁には必要なさそうな、生活物資、食料などが積まれている。
『なあ、私もその島に行ってみたいのだけども、乗せてもらえないか』
ジュアルが言うと
『あの島は何もないぞ。漁の基地以外には温泉くらいしかないかな。それでも良ければ銀貨1枚で乗せるぞ』
詳しく話を聞くと、以前、ゴマシカの偉いさんたちが保養施設として島に目をつけ、開発したが、あまりに不便ということで放棄されてしまったそうな。だが、漁場としてよいところなので、漁師たちが使っているらしい。
・・・
半日ほど船に揺られていると、島が見えてきた、東側に火山があるらしくあれが目印にもなっているそうだ。
『今日は、俺んちが使っている家に泊めてやる、明日以降は自分で交渉しろや』
船頭はそう言って船を島の西側にある港に付けた。港には、船が来ることが判っていたのか、人々が集まってきていたのである。
・・・
船から荷物を運ぶ手伝いをした後、船頭が使っている家にやって来た。誰もいないのかと思いきや、奥さんと思われる女性と2人の小さな子供がいたのである。ジュアルが挨拶すると、
『何が面白くて、こんな島に来るのか知らねえが、泊まっていくがええ。あんちゃんは3日も漁をすれば、船一杯になるけ、その時帰ればよいわ』
そう言って、女性は厨房に行こうとしたので呼び止め
『あっ。今日の食材にどうぞ』
ジュアルは異次元ポケットに収納していた、ブラックマウスの肉を取り出した。
女性の顔が急にほころぶ。
『肉じゃないか。もしかしてもっとあるのか。なら、ずっとここにいればええ』
どうやら、この島では肉は貴重らしい。
・・・
ブラックマウスは、豪快にステーキになった。楽しそうに、皆食べている。
『実は、西の外れにある飛行場を調べに来たのです』
ジュアルはこの島に飛行場があることを知っていた。なので、それを利用することにしたのであった。
『ああ。あれかい』
島では誰もが知っているらしい。
『何もないよ』
小さい子供が言った。
『あそこは何故か結界があってな。中に入れなかったんだが、島の動物が穴を掘っては結界の中に入っているのを見つけて、俺も入ってみたことがある』
何故か船頭が後を引き取った。
『だがな。あの建物の中には、魔物がいるらしくてな、慌てて逃げ帰って来たんだ』
船頭はその時の経験が余程堪えたのだろう、肩をすくめて見せた。
『私は、レベルDの冒険者ですから』
ジュアルが答えると
『そうだったのかい。なら頑張ってくれや』
・・・
翌日、船頭は漁に出ていった。
ジュアルは西の外れにある飛行場を目指して止めてもらった家から出ようとしたときだった。
子供が地面に絵を書きだした。どうやら、飛行場周辺の地図らしい。
『建物のちょっと北に言ったこのあたり・・・ここに牛が彫った穴がある。ここから中に入れるよ』
地図の場所を指しながら自慢げに語る子供に
『へえ~。牛って穴を掘るのか』
ジュアルが驚いてつい声を出してしまうと、
『牛って穴を掘らないのか?』
子共は驚いて聞き返して来た
(あまり聞いたことが無いよな・・・詳しく知らないけど)
『聞いたことが無いな』
ジュアルは正直に答えた。
『そうなんだ』
不思議そうに答えたのだった。
(この子供は島のことしか知らないのだな)
お世話になったお礼に、干し肉を一袋渡すと大喜びで受け取った。
『しばらくは、飛行場に籠って調査する予定です。なので、いつ、ここに戻ってくるかはわかりません』
ジュアルはそう言ってから、飛行場に歩きだした。
東に火山のある島・・・西の端にある飛行場。
どこがモデルかは言うまでもないでしょう。




