第46話 海岸へ
ランチ村を出て南に移動します。
村長宅に戻ってから、入り口・・・正確には少し中に入ったところに、異次元ポケットに収納していた、外から持ち込んだ土砂を放出して通路を塞いだ。破壊しようとすると、周囲に大きな衝撃は発生するので今は出来ない。とりあえず、基地に入れない状態にしたのであった。
・・・
調度、作業が終わったころ、村長宅にチェロがやって来た。見覚えのある茶箱を積んだ荷車を持ってきていた。
『あ~。言いにくいのだが、お前が買った茶葉を買い取らせてくれないか』
チェロは申し訳なさそうに言った。
『そうだな、代わりに、一袋、茶葉をくれ。それと交換しよう』
ジュアルはそう言うと、荷車に乗っていた空の茶箱に、ゴマシカの街で購入した茶葉の中身全て移し替えてしまった。
(箱は何かに使えるかもしれない)
ジュアルは空になった茶箱を異次元ポケットに収納した。
その様子を呆然と見ているチェロ。
『えっ!金貨10枚で買い取ったはずの茶葉を・・・』
チェロの呟く声を聞いた村長は
『金貨10枚じゃと!』
声を荒げていた。
村に残っていた茶葉は小さい袋1つ分になった。それを差し出す村長に向かってジュアルは
『あんなに沢山あっても使いきれませんしね・・・いいですよ』
そう言って、袋を受け取った。
『何から何まですまないのじゃ』
村長は元の言葉使いに戻っていた。
『俺は、ゴマシカの街まで行ってくる』
チェロは、茶箱を納品するためにゴマシカの街に向かって荷車を引いていった。
・・・
『ところで、この地域には、オークが出るにも関わらず、その対策がされていないのは何故なのですか?』
ジュアルは疑問に思っていたことを言った。すると村長は、
『ここから南西に13km、クラザキマの街の東にダンジョンらしきものがありますのじゃ。魔物はどうもそこから漏れてくらしいという話を聞いたことありますのじゃ』
クラザキマの街の東・・・ジュアルにインストールされている知識から該当するものがあった。
(あそこは、廃止されたはずでは)
ジュアルには廃止された飛行場の存在がインプットされていた。
『クラザキマの街の東にダンジョンは、ゴマシカの軍によって、破壊されたはずなのじゃが、何故か、その周囲は未だ入ることが出来ないときておりますのじゃ』
村長はそれ以上知らないのか、申し訳なさそうに頭を下げた。
(おかしいな・・・今まで飛行場は結界が張られていて誰も入れなかった。だが、クラザキマの街の東にダンジョンは、ゴマシカの軍が破壊した・・・わけないな。だが、既に飛行場としては使えないはず・・・行ってみるしかないかな)
ジュアルは、飛行場を開放する旅をしているわけではない。少なくとも、ジュアル本人にはそのような気持ちはなかった。だが、魔物の発生原因と言われてしまうと、冒険者として様子を見てみたくなるのが本音・・・。ましてや、廃止になった飛行場であれば尚更である。
・・・
翌朝、ジュアルは村長の家を出発して、南の方角に歩いて行った。平野のようになっているらしく、特に山はなく、街道は多少蛇行しながらも、南に向かっている。海岸付近にある街道を西に向えばクラザキマの街まで通じているとのことで、その手前にクラザキマの街の東にダンジョンはあるのだという。途中、ブラックマウスの巣穴を見つけ、ついでとばかりに討伐していたところ、海岸に出るころには夕方になってしまった。マトヤでブラックマウス狩りをしていたころと違い、いきなりショートソードで仕留めることが出来るようになっていたことと、このあたりの人は、ブラックマウスを狩るのではなく、馬車などで、振り払って逃げているらしく、かなりの数が生息していたのである。
(おかげて貯肉は十分できた)
海岸線に沿うように、ところどころ集落が存在しているが街のようなものはない。冒険者ギルドもなさそうなので、ブラックマウスの買取をしてくれそうなところもなさそうであった。
・・・
街道の集落と集落の間あたりで、野営することにしたジュアルは、昼間仕留めたブラックマウスを解体し、拾ってきた串に刺して焼き始めた。手元には塩くらいしか調味料がないので、軽く振って食べてみる。
(味はマトヤ付近のと変わらないな)
マトヤからはかなり離れているが、ブラックマウスの味は変わらなかった。
・・・
この街道は、あまり往来が無いらしく、一晩経っても人が通った形跡は無かった。
(まあ、街道はあるわけだし・・・大丈夫だろう)
ジュアルは、歩いて最初の集落近くに来た所で変な音に気が付いた。
“バリバリ・・・”
木造の建物が、何か壊されるような音であった。よく見ると、集落からは火が上がっている。集落が襲われているらしい。ジュアルは、ショートソードを右手に握ると、集落に向かって走りだした。
・・・
(???)
ジュアルが集落に着いたときには、集落の建物は全て焼け落ちていた。ところどころに転がる集落の人と思われる死体が散乱していた。
(なんと酷い・・・)
『誰かいませんか~!』
ジュアルが生存者を探し始めると、建物の残骸・・・というか、焼け跡から何人か出てきた。皆放心状態である。
出てきた中の最年長と思われる老人は、ジュアルを見るなり走り寄ってきて
『シーサーペントに襲われた~!』
とその場に泣き崩れたのだった。
海・・・と言えば、シーサーペントの登場です。でもジュアルには興味が・・・。




