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第43話 茶箱

いつもよりちょっと長いです。

(さっき飲んだ緑のお茶を探してみるか・・・)

ジュアルが市場を適当に歩いていくと、大きな箱を納品している男を見つけた。何だろうかとしばらく見ていると、店の主は木箱を開け中身を確認している。中に入っていたのは、緑色をした葉を乾燥させたものだった。


『さっきから見ているようだが、何か用か?』

商人がジュアルに気が付いて声をかけてきた。


『それは、緑色の茶の葉っぱか?』

ジュアルの問いに、商人と、すぐ隣にいたこの箱を納品に来た男が怪訝そうな顔したあと

『そうだよ。これが茶葉だ。ランチ産の上物だぜ』

商人はジュアルをよそ者と見抜いたらしい。


『その茶葉というものを購入できないか』

思わずジュアルが答えた。

(これは、うまくすると脱出できるかも)

ジュアルは大きな箱を見て直感的に思ったのだった。


『まさかとは思うが・・・箱ごととか言わないよな』

商人はジュアルを見ながら聞いた。


『そのまさかだ。箱ごと欲しい』

ジュアルの言葉に商人と納品に来た男は驚愕した。


・・・


商人だけあって、売らないという選択肢はなかったらしい。荷車ごと店の裏側に連れてかれた。もちろん、納品に来た男も荷車を返してもらう都合上、付いてきている。


『金貨10枚なら売ってもいい』

そう言って商人はにやけて見せた。そのまま小売りして完売したときの売り上げそのものであるらしい。ジュアルは、ポケットから出すふりをして異次元ポケットから金貨を10枚取り出した。

『商談成立だな』

ジュアルはそう言うと、茶葉の入った大きな箱のところに行き、箱を持ちあげた。そのまま奥に行くふりをして、商人が金貨を回収している隙に、異次元ポケットに収納したのである。


『えっ!』

突然消えた茶箱に驚く商人。慌てて納品に来た男に追加を依頼したらしい


『今年は豊作なので、村に帰れば、もう1箱分くらいはあるだよ。だが、その分の茶箱がねえだよ』

納品に来た男は、そう言って首を横に振った。

ジュアルが様子を見ていると、商人は店の倉庫から、先ほどをほぼ同じ箱を持ってきた。


『この箱をやるから、急いでもう1箱納品してくれ』

その言葉に納品に来た男は、


『なら、何とかするだよ』

そう言って箱を受け取り荷車に載せたのである。


『あ~。おれも村に連れて行ってくれないか』

ジュアルは荷車にむしろを被せようとした男に言った。


『村に何の用だ?』

『茶がなっている所を見てみたい。旅のものなのだが、茶畑を見たことないんだ』

納品に来た男の問いにジュアルは答えた。


『なんもないけど、それでいいなら構わねえだよ。どうせなら、荷車に乗っていくとええ、運んで行ってやるだよ』

(これは都合がいい)

納品に来た男からの都合のよい申し出にジュアルは乗ることにした。


『では頼む。昨日忙しかったので、できれば荷車でひと眠りさせてくれ』

ジュアルはそう言うと茶箱の脇に寝転がり、むしろをすっぽりかぶってしまった。


・・・


1時間くらい荷車に乗っていただろうか・・・。納品に来た男は、空の茶箱とジュアルを載せた荷車を引いて街を出て歩いていた。途中、街から出たのはむしろの隙間から確認済みである。


『旅のお方。ちょっと休憩するからな』

納品に来た男はそう言って荷車を止めた。いかにも、今起きたように装って、ジュアルがむしろから出て、


『助かったよ。もう大丈夫だ。ここからは、一緒に歩くよ』

そう言いながら、周囲を見渡す。細い街道の、ちょっと休憩できるように広くなったスペースに荷車は止まっていた。他に人らしきものはいない

(どうやら、尾行を撒くことが出来たらしい)

商人には、

『俺を探しに来る奴がいたら、宿に帰ったと言っておいてくれ。面倒なので』

と言っておいたので、今頃、尾行していた奴らは、街の宿を探しているだろう。


納品に来た男を見ると、水筒の中身を飲んでいる。恐らく水だろう。

ジュアルが異次元ポケットから水を取り出そうとしたところ


『なあ・・旅の方。どんな事情か知らねえが、あの茶葉本当に要るのか』

ジュアルの様子をうかがうように言った。


(こいつ、こっちの事情を察知したか!)

ジュアルは、内心動揺していたが、


『正直なところ、あんなに沢山は要らなかったんだよ。だけどな、あの商人の様子をみていたらな・・・』

ジュアルが思わせぶりに言ったところ


『なるほどね』

納品に来た男は納得したように言った。


『俺は、あの商人に、金貨2枚であの茶箱を売ったんだよ。目の前で5倍の値段で売りやがったんだよ。彼奴。だから、村に帰ればもう1箱分あると言ったんだよ。』

(なるほど、金貨2枚で仕入れて、金貨10枚で売った訳だ)

ジュアルは納得していた。おかげで尾行を撒くことが出来たのだから

『ひょっとして、もう売る茶葉は実はなかったりするのか?』

ジュアルは納品に来た男に言った。


『おう。実はそうだ。村はここから約30㎞ある。今日は途中で野宿になるぞ!』

そう言って、再び歩き始めた。


・・・


街道を10㎞くらい歩いただろうか。街道の脇に、少し広い空間が広がっていた。


『今日はここで野宿だ』

そう言うと、荷車を置き、近くの林に入って言ってしまった。ジュアル荷車の脇でゴマシカの街で購入しておいた、パンと肉(多分うさぎだと思う)を取り出し、肉を串焼きに出来るように準備していく。しばらくすると、納品に来た男が戻って来た。ジュアルの用意している串焼きに、目が点になっている。


『沢山あるから一緒に食べませんか?』

ジュアルが言うと、納品に来た男は首を縦に振った。


・・・


納品に来た男が拾ってきた薪で焼いた串焼きとパンを食べながら

『おら、チェロビリーって言うんだ。チェロって呼んでくれ』

納品に来た男は串焼きを頬張りながら言った。


『私は、ジュアル。レベルDの冒険者だ』

『へえ~レベルDか。結構強いのか?』

ジュアルの言葉の内、レベルDに反応したチェロに

『オークくらいは倒せる』

とジュアルはが答える。


『オーク!本当か?』

チェロは驚いたように言った。ゴマシカの街にも冒険者ギルドはあったのだから、それほど驚くことではないはずなのだが・・・。


『そんなに珍しいのか?』

不思議そうに聞くジュアルに

『村に着いたら、村長に会ってもらうだよ』

チェロはそう言いながら串焼きを頬ぼるのだった。

茶箱と共にゴマシカの街を脱出・・・でもチェロってただの農民ではないのかも?

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