第41話 船旅
とりあえず、海を渡ってゴシマカへ
船はゆっくりと西に向かって進んでいくゴマシカの街は北西らしいのだが、あまり陸地に近いと、賊に襲われることもあるらしい。
『こんなところに賊ですか?』
ジュアルが船頭に問うと
『おう。北に島のように見える山があるだど。あの麓に隠れているんだど。俺らみたいのか近づいていくと、小船に乗って襲ってくるんだど』
確かに北側には山頂から噴煙を上げている山があり、その海岸線には、小船を隠しておくのに都合の良さそうな林がある。
『2時間くらいで着くからよ』
船は北側の島(本当は島ではないらしい)との距離を気にしながら西に向かってゆっくりと進んでいく。この速度なら、手漕ぎの小船でも追いつけそうである。
『旅の途中なのですが、何か面白い話はないですか』
ジュアルは暇に任せて船頭に話掛けてみた。
『そうさなあ・・・旅の方ならいいか。ここだけの話だけどよ・・・』
船頭は思い出すように話始めた。
『昔、他の国と戦をしてな、完全に負け戦になってしまったそうでな。敵を迎え撃つために海岸線に秘密基地を作ったらしいんだよ。ところが、作った連中が皆やれちまってな。どこに作ったかわからなくなってしまったそうな・・・飛行機なんちゅうもんを隠してあったらしいど。なんでも、カタパルトとかいうもので空中に発進するようになっていたそうだど。上手く行ったら、ノヤカにある結界に入れるらしいとも聞いたど』
(どうやら、航空機を隠しておく秘密基地だったようだな・・・だけど、見つからないということは、海岸線の部分はつぶれてしまっているのだろうな・・・)
ジュアルがそんなことを考えていると、
『しまったあ~。風に流されて、島に近づきすぎちまったど』
船頭は焦っている。島の方を見ると、小船が10隻くらい、この船目指して近づいているのが判る。
『なあ・・・あいつら倒したらどうなるんだ?』
ジュアルは必死にこちらに向かってくる小船を指さしながら船頭に聞くと
『おう・・・生死を問わず、ゴマシカの領主様から褒美が出るど』
船頭はジュアルが落ち着いているのを見て、何か安心したらしい。
そう言っているうちに小船から声がした
『お前の船は俺たちが貰った。大人しく降伏すれば、積み荷以外は助けてやらあ~』
賊の頭なのだろうか、妙に目立つ兜をかぶった男が叫んでいる。
『やっつけていいよな』
ジュアルの言葉に船頭が頷く。
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
『ファイヤーボール』
船目掛けて、ファイヤーボールを飛ばすと、賊たちの船が全て炎上し始めた。賊たちは消火できないと見たのか、皆、海に飛び込んだ。そして、賊たちはこちらに向かって泳ぎだしたのである。
『こいつら捕まえる?』
ジュアルの言葉に首を縦に振る船頭を確認して、
『アイスエリア』
賊たちを周辺ごと凍らせると、賊たちは身動きが取れなくなった。いちいち縛るのは面倒だったので、そのまま船から出したロープに引っかけて、氷の塊にして運んで行く。ざっと30人くらいはいそうである。途中、溶けてきたところで、
アイスエリアを重ねて掛けして補強しながら、船はゆっくりと進んでいく。ゴマシカの港に着いたのは、ルミズタを出港してから3時間以上過ぎ、夕日が沈む直前であった。
・・・
『いや~大したもんだど』
船頭は驚きながらも、大喜びである。何せ、船を襲う賊たちを一網打尽に捕らえ、ゴマシカの港に着いたのだから・・・。港の関係者が総出で、氷漬けになった賊たちを回収していく。1時間以上凍らせたこともあって、生きている者はいないらしい。正直なところ、かなりエグイ状況である。雪すら滅多に降らないらしいゴマシカで、賊とはいえ、凍死体が30体並んでいるのである。そして、誰かが呼びに行ったのだろう・・・ゴマシカの街の兵士達がやって来た。
『おお・・・間違いなくお尋ね物のサクラ一家だな』
兵士の隊長のような感じの男が呟いた。そして、船頭とジュアルのところに来ると、
『お前たちが捕らえたのか』
隊長らしきもが船頭に問いただした
『こちらのお客が・・・』
船頭は兵士が怖いのか、震えながらジュアルを指さしながら答えた。
『ほう。私はゴマシカの港守備隊隊長、ヒサミツだ』
ジュアルを舐めまわすように見ながら隊長は話しかけてきた。
『私は、ジュアル。レベルDの冒険者だ』
そう言って冒険者カードを見せると、ヒサミツはカードをしばし眺めたあと
『間違いなさそうだな。報告書を書かないといけないのでな、面倒だろうが、今日は私の屋敷に泊まってもらいたい。そして明日、ゴマシカ城に一緒にきてほしい』
『わかった』
ヒサミツの言葉に短く答えたジュアルに
『今夜は賊を退治してくれた勇者を歓待させてくれ・・・ハハハ』
何故か上機嫌のヒサミツであった。
(面倒なことになった・・・)
内心、舌打ちするジュアルであった。
無事では済まない定めのようで・・・。




