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第38話 シリョウカンの英霊

少し短いです

 司令部には、他に何もいなかった。シヒコト=ダワラオは、何も残さず消えてしまったのである。1階の受付にいた魔族も同様である。


(とりあえず行ってみますか)

ジュアルは司令部の更に北にあるシリョウカンという建物の前に来ていた。入り口側には何故か回れず、他の入り口がないか探すと、小さな出入り口があった。特に張り紙はない。


(これはダメかな?)

ジュアルは思いつつも、扉のノブを回してみると、意外なことに、扉は簡単に開いた。


恐る恐る中にはいるジュアル。すると、目の前に軍人と思われる人々が出迎えてくれた。


『シヒコト=ダワラオ少将を倒してくれたのですね。ありがとうございます』

ジュアルがよく見ると、目の前の軍人は敬礼しながら泣いていた。


『さあ。2階へお越しください。皆が待っています』

ジュアルは案内されるまま、2階に連れていかれた。


・・・


『敬礼』

ジュアルが階段を登り切った途端、通路の両側に並んでいる軍人が一斉に敬礼した。よく見ると、昔の飛行隊の制服である


(ということは・・・みなパイロット?)

ジュアルが促されるまま通路を進んでいくと、謎の老人が目の前にいた。


『ジュアル=ラィシカーラクセン殿。よくぞ参られた』

そう言って老人は頭を下げた。


『私は、キチリョウというものじゃ。ここに飛行場を誘致した張本人なのだよ。私は、この飛行場は役目を終えたことを理解しておる。もう、ここは開放されなければならないと思っていた。だが、魔族に隙を突かれ、強力な結界を張られた上で、この飛行場内を支配されてしまったのじゃ』

そう言って、キチリョウと名乗った老人は再び頭を下げた。


『ここにいるのは、かつて此処から出撃していったパイロットたち・・・死後、成仏できず此処に集まってしまったものたちじゃ』

申し訳なさそうに話をするキチリョウに


『第五格納庫にもそのような方が・・・』

ジュアルが話始めたのをキチリョウは遮るように


『ああ・・・沢山おったのじゃ。実は、大半のものは魔族になったシヒコト=ダワラオ少将に幽閉され、第五格納庫に押し込められていたのだ。此処にいるのは、幽閉される前に、この建物に逃げ込めたものたちだけなのじゃ。ここだけは、結界の中にあるにも関わらず、魔族からの干渉を跳ね返す結界を張れたのでな・・・』

ジュアルが振り向くと、約100名のパイロットたちがジュアルの後ろに控えていた。


『ジュアル=ラィシカーラクセン殿。あなたが、第五格納庫の英霊を成仏させてくれたのはわかっているのじゃ。ありがとうじゃ』

ジュアルは、キチリョウの言葉に返す言葉を失っていた。あまりに重かったのである。

しばしの沈黙の後、ジュアルは


『皆さんにこれだけはお伝えしておきます。シヒコト=ダワラオ少将は、私が、第五格納庫の人たちを成仏させたことにお礼を言ってくれました』

ジュアルの言葉は、ここにいた英霊には驚きをもって伝わったらしい。口には出さないが、信じられないと顔に書いてありそうな感じである。


『無念から、魔族に身を落としてしまったようですが、どこか、元の心も残っていたのではないでしょうか?』

ジュアルは、思うままに言葉続けた。


『そうか・・・これで、私の役目も終わった・・・』

キチリョウの言葉に、ジュアルの後ろにいた英霊たちも頷いている。


『ジュアル=ラィシカーラクセン殿。私たちを成仏させてくれ』

キチリョウの言葉に、ジュアルは一歩、後ずさった。振り向くと、英霊たちも頷いている。


『ここの結界を解除する方法は、私たちを成仏させることなのじゃ』

(だから、インライトメントの魔導書があったのか)

キチリョウの言葉に、ジュアルは内心納得していた。


『わかりました。皆様、よろしいですね』

キチリョウと英霊たちが頷いている。同意した上での成仏が望ましいと思っていたジュアルにも依存はない。


『インライトメント』

100人の英霊とキチリョウは、シリョウカンから消えてしまった。


(もうここには用はない)

ジュアルは、シリョウカンの正面出入口から外に出た。

(結界は本当に消滅したんだな)

ジュアルは街の中心部に向かって歩き始めたのだった。

さて、ジュアルはどこに行くのでしょう

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