第31話 ユウの村
新しい章のはじまり・・・。
『ありがとう。帰ってこれたよ~』
ユウの故郷である山の集落が見えてきた。
『無事、ここまで連れてこれてよかったよ』
ボナ・・・いやジュアルはそう言うそ少し寂しくなった。
(また、ここから一人か・・・)
山の集落で、カイガーの手配してくれた馬車を降りたジュアルは、集落の中を散策し始めた。馬車は、直ぐに街に帰るとのことで、既にいなくなっている。ユウの希望で村長のところに挨拶しようと、村人に尋ねると、村長の家は直ぐに判った。
『すいません』
ジュアルは家の入り口で叫ぶと、かなり高齢と思われる老人が現れた。
『あんたは誰じゃ?』
ジュアルを不審者のごとく見つめる老人・・・。ユウがジュアルの服から出てくると
『えっ!一反木綿様ではないですか!』
いきなり土下座する老人・・・ジュアルはあまりの光景に何も言えないでいた。
『・・・ということで、ここまで送ってくれたんだよ~』
ユウは、タチ村で出会ったときから、ここまで来るまでを老人に話してくれた。
『おお。一反木綿様を助けてくれたのですね。ありがとうございます』
ジュアルを見る老人は、先ほどとは激変していた。恩人モードである。
『でね。僕はユウという名前をジュアルに貰ったんだよ~』
ユウが名前のことを言った途端、老人の顔が変わった。
『それは・・・つまり・・・ジュアル様は一反木綿様の主なのですか』
老人は真っ青な顔になっている。
『そうだよ~』
ユウが答えた途端、
『ジュアル様、大変ご無礼いたしました』
今度はジュアルに向かって土下座したのである。
(ユウはこの村に好かれているんだな)
ジュアルはユウのことが少し羨ましくなった。
・・・
翌日は、村長であるこの老人の家に泊まりながら、ユウに村周辺を案内してもらっていた。村長の家に戻ってくると、村人たちが集まっていた。
『皆の物、落ちつくのだ』
村長である老人の声が聞こえてくる。何かあったらしい。
『何かあったのですか?』
ジュアルは村長である老人に言った。
村長は、ジュアルを見るや
『大変でございます。クブコ街の領主がこの村に軍勢を差し向けているらしいのです』
(???)
村長の話によると、ジュアルの乗った馬車を追いかけるように、クブコ街の領主が兵士100人を率いてこちらに向かっているという。たまたま、一反木綿様の捜索をしていた村人が、村に帰る途中で発見し、慌てて伝えてきたらしい。
『実はですな・・・一反木綿様は大変有名でしてな。それが、行方不明になっていたことがクブコ街の領主に知られてしまったようで・・・』
申し訳なさそうに話す村長に
『どうして、ユウが行方不明になると、クブコ街の領主が攻めてくるのですか?』
ジュアルには首を傾げながら言った。
『はい。ゴシマカ地方の東側には、クブコ街とこの村の西、山を越えてすぐにあるノヤカの街があります。ゴマシカ地方の西を治めるゴマシカ街と違い、東側はクブコの街とノヤカの街があり、ノヤカの街はゴマシカ街に忠節を尽くしております。クブコの街はゴマシカ街に対抗する力を得るため、ゴマシカ地方の東を支配しようと、ノヤカの街に圧力をかけておりました。街の規模では、ノヤカの街はクブコの街の1/5しかないのですが、すぐ東に一反木綿様がおられるので、ノヤカの街に攻め込まれなかったのです』
ジュアルは思わずユウを見てしまった。どういう訳か、ユウのサイズは、初めて会ったときとほぼ同じ、6mくらい長さがある大きな布になっていた。
『だって、ノヤカの街は僕を認めてくれたからねえ~。クブコの街は、化け物と言って討伐しようと言っているんだ。だから、僕はノヤカの街を応援することにしたのさ~』
ユウはそう言ってフワフワと飛び回っている。集まった村人も誰も気にもしないどころか、神様のように拝んでいるものまでいる。
『ノヤカの街は西に海、東に山、北の僅かな海岸沿いに街道があるという土地なので、ノヤカの街を攻めるには、この村から西に攻め込むしかないのです。今までは一反木綿様を恐れてクブコ街の領主はこの村に攻め込めなかったのです』
村長は説明を終えると座り込んでしまった。
この村には、村民が50人くらい・・・兵士100人に対処するのは厳しそうだった。
『ユウがいなくなったと思って、この村を占領に来たと?』
『はい』
ジュアルが確認するように言った言葉に、力なく答える村長に、
『何処か、500mくらいの平坦なところはありませんか?』
ジュアルの言葉に
『あるよ~』
ユウが答えた。
・・・
ユウがジュアルを連れてきたのは、川の傍だった。確かに川のすぐ脇は平坦な土地が広がっている。
(ここなら大丈夫だろう)
『ユウ。よく聞いてくれ。これから、セスナ172をここで出して、クブコ街の軍勢の上空まで行く。そこで、上空からファイヤーボールを打ち込んで、奴らを殲滅する。奴らが敗走し始めたら、ユウが出て行って、村に二度と来ないように叫ぶ』
ユウは納得したようだ。
『だが、問題がある。恐らくセスナ172は気が付かれるだろう・・・なので、私はそのままノヤカの街に向うことにするよ・・・残念だが、ここでお別れだ』
ジュアルの言葉にユウは納得いかないのか、布が真っ赤になった。
『ここは、離陸は出来そうだ。だが、この土ではセスナ172が無事着陸するのは難しい・・・解かってくれ』
ジュアルの言葉にユウの布は元の色に戻った。理解してくれたらしい。
『またいつか来る。それまで達者でな』
『わかったよ~。解っていたんだ。本当は。ジュアル=ラィシカーラクセンは次のステージに行かないといけないことは・・・』
『えっ?』
予想しないユウの言葉に驚くジュアル。だが、ユウはそのあと何も答えてくれなかった。
クブコの街は、周辺の傘下にある街を含めても1.2万人くらいしかいない。一方ノヤカの街は1万人弱なので、人口だけならそれほど変わらないのです。




