第21話 離陸
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『はあ・・・はあ・・・』
ボナは滑走路の北端まで走って来た。風は、僅かに南から吹いている。地面にある大きな石には“19”と書いてあるところで、ボナは、異次元ポケットからセスナ172を取り出した。
外部点検を行って、異常がないことを確認、エンジンオイルは正常に入っていた。よじ登って、主翼にある燃料タンクを確認すると、ほぼ満タンである。燃料タンクの大きさは判らなかったが、3時間の飛行は問題ないだろうと思われた。
左側のドアを開けて室内に入る。VORが2つにDMEまで付いている。フラップのレバー形状から推定して、恐らくP型に近いものだろうと思われた。
(って・・・何でわかるんだろう)
ボナは不思議な感覚を感じながらも離陸準備を開始した。フェイルセレクタバルブをBOTHにセット。サーキットブレーカーがオールインしていることを確認。プライマリーを数回動作して燃料を送り込み、エンジンをスタートさせる。何故か、イグニッションキーは刺さったままだった。
セルモータで数回回転した後、エンジンが掛かる。アビオニクスパワーを入れて、無線のスイッチを入れる(でも交信する先がない)QNHはわからないので、このあたりの海抜18mを参考にセット。
とりあえず、121.5MHzに合わせておく、エンジンの温度計がグリーンの中に入ったことを確認。エンジンの回転数を1700rpmまで上げたのち、マグネトーチェック。回転数現象は30rpm程度(50rpm以内だから大丈夫)、その後、1000rpmまで回転数を下げた後、ミクスチャーを引いてエンジンが止まりそうなになるのを確認。元のとおり奥まで押し込んでから、アイドルチェック、700rpmをちょっと下回るくらいなのを確認してから、アクセラレーションでフル回転にしてみる。問題なさそうなので、直ぐに1000rpmに戻し、パーキングブレーキを解除して滑走向きに合わせた。
滑走路になにもいないことを確認して、ミスクチャーのフルリッチを確認してから、スロットをフルに押し込むと、セスナ172が滑走を始めた。速度が56㏏で操縦桿を僅かに引くと、機体が浮き上がった。そのまま速度が70㏏を超えるまで待ち、その後は70㏏を維持するように上昇する。高度3000ftで水平飛行に以降、燃料節約のため、ミクスチャーをリーンにセットする。
ふと外を見るとの左後方にマトヤの街が見える。東には多分王都だろうと思われる大きな街が見えた。
(空から見たことがないからよくわからないが・・・)
海岸まで来たのち、西に進路をとって飛んで行く。前方に山が見えてきた。左側(つまり南側)に陸地が伸びている。半島らしい。高度を6500ftまで上げ、そのまま西へ。しばらくすると、再び海岸が前方に見えてきた。後は、海岸にそって飛行していけばよい。この世界では、他に飛行機は飛んでいないはず(聞いたことがない)から大丈夫だろう・・・
機内にあった謎のメモによると、ゴヤナの途中にあるズオカシという街が謀反を起こそうとしているらしい。うっかり降りると危険とのことで、6500ftを維持した状態で飛んで行く。右側には、大きな山が見える。綺麗な形をした山なのだが・・・同じ景色が続くので面白くない。右(北)は山。左(南)に海。地上を見ながら、海岸線を飛んで行く。
確か、ゴヤナの街には、街の北、マキコというところと、街の南にある島に飛行場があったはずだが、ゴナヤの街には北にあるマキコにある飛行場の方が近かったはずである。
(ボナの中にインストールされた知識がそう記憶している・・・よくわからん)
半分海に繋がっているような湖の上空を通過したのち、更に西に進んでいくと、大きな湾が見えた。あの湾の一番奥にゴヤナ街があるはずだ。確か船の出入りも多いと聞いたことがある。
確か、空港から出ている周波数は114.2MHzのはず・・・VORの周波数を合わせてみると、
『えっ!反応した』
まさか空港のVORTACの方向を示している。示している方位も、記憶と合致していることを確認したボナは、機体を包囲340°に変針、徐々に高度を下げていき、3000ftでの水平飛行にした。これ以上下げると地上で騒がれそうだと思ったのである。
『飛行機ヨ。アレガゴヤナノ街ダ』
思わずボナは叫んだ・・・だれも聞いていないのに・・・。
ゴヤナの街を過ぎると前方に滑走路が見えてきた。滑走路のファイナルコースにそのまま入り、高度を落としていく。ボナの記憶には、PAPIという進入角度を確認するものが地上にあったはずであるが、何処にも見当たらない。ボナは感覚でセスナ172の高度を落としていく、もちろん、ミクスチャーをフルリッチにすることも忘れない。この飛行場は滑走路が長いから多少の誤差は許される・・・はずだ。
速度が60㏏を切らないように調整しながら高度を下げ、フラップを30°まで下げた状態で、滑走度上へ。滑走路を300mほど飛んだところで、セスナ172は滑走路に接地した。
そのまま、誘導路に入ってターミナル前のスペースに機体を止める。
(恐らく、飛行機が飛んできたことに気が付いてやってくるだろう・・・)
ボナは、冒険者たちが気が付いて飛行場にやってくることを予想し、顔をしかめた。
ボナは、エンジンを切ってから、機体の外に出て点検してみるが、特に異常はないようだ。ボナは、セスナ172を異次元ポケットに収納すると、ターミナルビルの探索に向かった。
(きっと何かある・・・嫌な気がするが・・・)
やっと飛行しました。




