40話 王子様とお姫様……
ある国の王子様とお姫様の物語……
大国ザウツブルグの隣にエル・クラウディアという小さな王国がありました。 エル・クラウディアは他国と戦争状態にあり、戦力も乏しい弱小国。 クラウディア国王は滅亡を回避する為に、ハンスという一人の王子様をザウツブルグへ使者として遣わします。
そこでハンス王子はステラというザウツブルグのお姫様に出会います。 二人はとても愛し合い、将来を約束するまでになりました。 これを聞いたクラウディア国王は、大国ザウツブルグとの同盟の理由にしてしまったのです。 周りから見れば両国の同盟の為の政略結婚という形ではありましたが、二人はそれでもいいと気にも留めずに時を重ねるのでした。
結婚式も間近に迫ったある日、エル・クラウディア王国の地方で抗争が起きました。 ハンス王子はその抗争を鎮圧する為に出向きますが、彼はその抗争で命を落としてしまいます。
姿を見せなくなったハンス王子にステラ姫は心を痛めます。 そんな中で聞いた風の噂。
ハンス王子が亡くなられた
ステラ姫は深く悲しみ、自室に閉じ籠ったまま出てこなくなりました。 ザウツブルグ国王はステラ姫を想い、クラウディア国王に抗議をします。 ハンスは死んでしまったと言えないクラウディア国王は、悩み悩んだ末…… 遠く離れたアーバンという国に住む、一人の魔女の元に赴きます。 国王はその魔女に言いました。
ハンスを生き返らせてほしい
しかし例え魔女であろうと、死者を生き返らせることはできません。 そこで魔女は、ハンス王子をよく知る付き人の男を、ハンス王子と違わぬ容姿に変えるのでした。
ハンス王子は生きていた
ザウツブルグ国王の知らせに、ステラ姫は部屋を飛び出しました。 ハンス王子と変わらない容姿に変えられた付き人のラウムは、誰が見てもハンス王子だと言うほど見事に代役を務めます。 そしてそれはステラ姫までも欺いたのでした。
両国が見守るなか、壮大な結婚式も終わり、エル・クラウディア王国へと嫁いだステラ姫。 両国との間には同盟が結ばれ、ザウツブルグ王国の後ろ楯もあって、エル・クラウディア王国に侵攻してくる国はなくなりました。
様々な人に見守られながら、ゆっくりと二人の時間が流れます。 しかし時を重ねるごとに、ラウムの心は罪悪感と嫉妬が支配していきました。 彼はハンス王子としてではなく、ステラ姫を愛するようになってしまったのです。 国王の命とはいえ愛する人を生涯騙し続けなければならない罪と、ハンス王子に対する嫉妬心に蝕まれる日々…… そんな彼にステラ姫は語りかけます。
貴方の本当の名前を教えて
ステラ姫はわかっていたのです。 誰もがハンス王子だと信じて疑わなかったラウムを、ステラ姫には最初から別人だと悟られていたのでした。 愕然とするラウムは、どうしてかと尋ねます。
ハンスの代わりを出来る者などこの世にはいないのです
ステラ姫の一言にラウムは言葉を荒げます。
ではなぜ今まで!
愛する人を真似した自分を拒絶するどころか、結婚までして側にいるステラ姫の心がラウムには理解出来ませんでした。 ステラ姫は、この結婚が両国の戦争を回避する手段だったということをラウムに告げました。
私達の結婚が両国の架け橋になることを、ハンスは願っていたから……
そう聞かされたラウムは、ステラ姫の前にひれ伏しました。 そして真実を全て話したのです。 ステラ姫はラウムの前に屈み込み、両手で優しく抱きしめました。
ありがとうラウム。 貴方のおかげで、彼の夢を叶えることができました。 これから先も私の側にいて下さい
激しく罵倒される事を覚悟していたラウムは驚き、ステラ姫を見つめるばかりでした。 ステラ姫は微笑んで答えます。
貴方の笑顔が私を勇気づけてくれたから
そう…… ステラ姫はハンス王子としてではなく、ラウムの心を見ていたのでした。 ステラ姫はラウムにひとつのお願いをします。 ハンスの真似事は二人の時にはやめてほしい…… 貴方の本当の姿を私に見せてほしい…… と。
その途端、ラウムにかけられた魔女の力が解けてしまいます。 ステラ姫は慌てふためくラウムに、大丈夫と言って手を取りました。
ハンスは今もこの胸にいます。 貴方は貴方自身でいいのです
数日後、ハンス王子の姿を解かれたラウムとステラ姫は、クラウディア国王によって軟禁されてしまいます。 悩んだ末、ラウムはステラ姫と共にクラウディア王城を抜け出します。 ですが逃亡中に、追っ手の兵士によって二人は命を落とすのでした。 ラウムは背中に矢を受けながらも、最後までステラ姫を庇い抱きしめながら……




