第二話
さて、この騒動は「静か」に始まった、というのは彼の視点に於いてである。
当然地球人たちは外宇宙から飛来した隕石について観測していたし、海に落ちたことも検知している。
飛来物の大きさに対して衝撃は非常に弱く、災害にこそつながらなかったが超高速で飛来したソレに対して各所公民問わず災害、海洋、天文に関わる仕事をしている者たちは東奔西走することとなった
彼に最初に接触する羽目になったのは、海上保安庁であった。
落下地点は海であったから。
「観測結果は事実なのか?」
海上保安庁所属の巡視船「こうつき」の船長、上白坂は白髪頭をかきながら3回目の同様の確認をした。
何しろあんまり信じられない情報だったから。
「はい、国内外の複数の施設で報告が上がっています。」
本部の担当官も3回目の回答をする。もちろん内容は同じ。
「しかし、船舶の被害は特に報告されてないのだろう?」
「センサー類でも隕石が落ちたような衝撃なんかは観測されていないですねぇ。せいぜい、大きめのイルカが飛び跳ねたとかそのくらいですね。うちの機器だと。」
言われてるほど大きな隕石が落ちたような状況とは思えない。
何しろ現地に向かう船に乗っていても海の様子がいつもと変わらない。
色んなところから来た情報も、だいぶ嘘っぽいと上白坂は思っていた。
陰謀論的なやつだろうか。上白坂はその手の話に冷笑的な部分があった。
「ふわふわしてるなぁ。ドローンは?」
船に先行して観測ドローンを出しているハズである。
そろそろ情報が来てもいいはずだった。
「ちょうど今映像が来たんですが。AI生成とかかなコレ。」
「・・・偽物ぽさあるな、こんなことあるわけがない。 」
少なくとも上白坂の常識にはその異様な物体に対する知識がなかった。
クリスタルでできた巨人のようなオブジェクト。
しかも頭部と思われる部分が周囲をうかがっているように動いている。
おそらくは前方であろう部分が桜島の方を向いて、少し経った頃だろうか。
「おい、映像が途切れたぞ」
どうなってる?と本部に確認を入れようとしたとき
「通信障害です、機器が壊れたってよりは電波がちゃんと受け取れてなさそうな感じです。」
通信担当技官から焦ったような報告が上がる。
「カメラなんかは動いてるか?」
「正常動作を確認しました、録画も問題ありません」
「そろそろ現着だ。目視とカメラで確認するぞ」
そうして、海上保安官たちはカメラと肉眼の両方で、何一つ疑うことのできない現実を直視する。
桜島に向かってのっそのっそと熊のように進んでいく謎の物体の姿。
上白坂は夢であってほしいとちょっと思った。
九州に熊はいないが、錦江湾には謎の巨大生物は現れてしまったようだった。




