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「さて、今日からは個別魔法について少しずつ勉強をしていきます。」
ヒュージュ先生の授業。
「ルイス様の適性は火と水と光、クラリス様は5属性全部でしたね。
お二人に共通している火または水からやっていきましょう。
どちらが良いですか?」
「火!!」
勢いよく答えるルイス。ヒュージュ先生もこの答えが来ると思っていたのかすぐに了承してくれた。
「個別魔法については基本的にイメージがとても大切になってきます。
実際の火を見てみましょう。」
そう言ってヒュージュ先生は訓練場の真ん中に枯れ木を置いてそれに点火した。
実際に燃えている様子をしっかり観察する。
「ルイス様はこの燃えている火をよく観察し、頭の中で自分の魔力が火に変換される様子をイメージしてください。
焦らなくて大丈夫です。
最初は魔石に赤い色の魔力を込める練習をしましょう。
自分の魔力が火となってこの魔石に込められる、そんなイメージです。」
そう言って小さめの魔石をルイスに渡した。
その後私の方を向いて口を開く。
「クラリスお嬢様に関しては火魔法を自在に操っておられるので、今現在どの程度の威力で、どれくらいのコントロールなのかを教えていただきたいです。
まずはあちらの的に当たるか、やってみてください。」
なるほど、確かに細かい文字はよく使うようになったけれど距離があるところへ飛ばすことは今はやっていなかった。
自分でもどれくらいの力があるのか確認しておくのは大事だろう。
ルイスが一生懸命魔石を真っ赤にしようと頑張っている横で、的に向かい合う。
『やってみます』
指先に集中して、大きな火をイメージする。的を破壊する様子を頭に描き勢いよく練り上げた魔力を放つ。
ドォーーーン
大きな音が轟き的は黒焦げに、そして地面も壁も煤けていた。少々、やりすぎたようだ。
チラリとヒュージュ先生を見上げるとその顔には”困りました”と書いてあった。
「あー、ええ、素晴らしい威力です!!コントロールも申し分ないですね!」
先生、口の端が痙攣していますよ。
『やり過ぎました
ごめんなさい』
「いえいえ、ちなみに今の力はクラリスお嬢様にとって精一杯ですか?
それともまだ余裕がありますか?」
『まだまだ余裕があります』
なるほど、と考え込むヒュージュ先生。
「それでは、あの的だけが焦げるように魔力を放ってみてください。
周りに火の影響がないように、今回は魔力を制御することを念頭に置いてやってみましょう。」
先生からの新たな課題だ。
ルイスは黒焦げにした的を見て、凄い凄いとはしゃいでいる。
「僕もいつかお姉様みたいな魔力が出せますか?」
「練習を重ねればきっとできますよ。」
まずは魔力の出力が一種類となるよう練習しましょう。そう声をかけながら私とルイスの二人を一度に指導してくれる。
私は先ほどの火を思い出しながら出力値を下げていく。的全体に当たるくらいの大きさを意識してもう一度指先から魔力を放つ。
ゴォっという音と共に的が燃える。先ほどよりは威力を落としたもののまだまだ火の力を抑えきれていない。かといって抑え過ぎるとあの的まで火が届かない。なかなか練習のしがいがある。
そんなこんなで私とルイスは火魔法の練習を繰り返しあっという間に授業が終わる。
二人とも課題を持ち越し、次回の授業までにイメージトレーニングをするよう宿題が科された。
「楽しかったね!」
ルイスはヒュージュ先生の授業が大好きなようだ。
今日の授業だって地道な魔力操作だというのに、一生懸命に取り組んで自分なりに工夫しながら一色の魔石になるよう頑張っていた。
「それにお姉様の火の威力が凄かった!」
自分でもあの威力には驚いている。こんなに強かったかしら?と首を傾げるほど。
『ヒュージュ先生の教え方がとても丁寧で勉強になるわ』
「うん!」
良い先生に家庭教師をしてもらえている。
そんな話をしながら自室へと戻っていく。
その日の夕食、どこか浮かない顔をしているお父様とお義母様。
『どうかしましたか?』
思わず声を掛けてしまうほどだった。
「いや、うむ。
クラリス、王太子がお前に会いたいそうだ。」
え?なんで??
『どういうことでしょうか?』
「以前のお茶会であまり話せなかったので二人きりでのお茶をしませんかというものよ」
アンネお義母様が教えてくれる。
いや、しかし声が出せないんだからお話も何もないでしょうに。
「しかも我が家に訪問したいとの申し出で……。」
『逃げられない、ということですか』
私の言葉に苦々しい表情を浮かべる二人。
前回のお茶会のように多数の参加者がいれば欠席を出しても問題はなかっただろうが、一対一での申し出を断ることなどできないだろう。
『受け入れるしかなさそうですね』
ため息をつきながら魔法文字を綴る。
「最善を尽くそう。」
お父様が眉間に皺を寄せながら食事を口に運ぶ。
『向こうは私が話せないことを承知の上で訪問したいと言っているのですよね?』
首を縦に動かし肯定の意を見せるお父様。どのような対応とするのが良いのか考える。
『この魔法文字は使わないとして、とりあえず筆記具があれば良いでしょうか?』
「それが無難だと考えるわ。」
ため息をつきながらお義母様が答える。
流石に王家の人間を招くのは骨が折れるのだろう。
「お忙しい方だからそんなに長く滞在しないとは思うわ。」
頑張りましょう、そう励ましてくれた。
『ちなみにいつなんですか?』
「来週だ」
急すぎない?そんなに急に王家の人をもてなす準備はできるのだろうか?いや、まあ公爵家だしそこは安心して良いのか。むしろ私の心の準備が間に合わない。どうしたものか。




