暴食のフィリア
美男子と共に正面に捉えているのは筋肉だるまとかいう奇妙な状況の中。
空間自体には緊張感が漂っている。
先ほどまで行われていた筋肉鬼ごっこは終わり、ここからは純粋な殺し合いが待っていた。
対峙するのはナブッコと夢菜&アルバだった。
もう!お昼ごろに逃げだしたばっかなのに、こんなに早く再開した挙句命まで助けられるなんて。
しかも今度は共闘?樹夫卿としては最悪だけど、シュチュエーションとしてはかなりいいわね。
まあ、こんな気楽なこと言っていられるのももうこれまでだと感じるけれど。
この目の前の筋肉だるまを対処しきれないと私とアルバは奴に取り込まれて死ぬ。
ただ、私の本能が感じてしまう。奴と私の経験の差。
つまりは戦力差を。
私は先ほどの鬼ごっこにおいて能力的な面で一度負けていた、と言っても決して過言ではないのだ。
だから私たちが今生き残るには実力が未知数なアルバがどれだけのものなのか、そして私が自身の能力を使ってどう立ち回るかが大切になるわ。
さっきまでは怖くてどうしようもなかったのだけれど、奴と私の間に入ってくれているアルバのおかげか怖さもかなり薄れている。
「夢菜。私の傍を決して離れないでください。恐らく彼の能力はすでにあなたを狙っている。間合いの取り方をミスった瞬間取り込まれます。私はその点、能力故に奴に取り込まれる心配はないと思うので」
それを聞いた筋肉だるまは不快そうな顔で答えた。
「HAHAHA。私が君を取り込むだと?気持ちが悪い。男は消化が悪い上に趣味ではない。声色も変わってくるだろう?女の甲高く心底恐ろしそうにしている悲鳴と男のおどけたような野太い悲鳴。私が積極的に聞きたいのは前者だとも。それに私が欲している部位を君は持ち合わせていない。私から願い下げだね。」
怖いを通り越して充分に気持ち悪いわね。やっぱり私の『薔薇の美眼』は使えそうにないわね。生理的に無理ね。
そ
れにしても、改めて見てみると、納得したわ。
奴の肉体の歪さには能力が関わっていた。
それ自体は筋肉の付き方の偏り具合から何かあるんじゃないかとは思ってはいたけど、
人を魂ごと取り込んだ分だけ強くなる能力。
彼を見るに、異常な上半身とそれと比較すると見劣りする足。
そして私を取り込もうとしていた時に奴は私を「足の筋肉」だと言った。
鬼ごっこ中の読み通りにやはり弱点は足なはずよね。
今までメインで取り込んできたのはほとんどが上半身の筋肉でそれに対してあまり取り込めている様子のない足。
無理やり行動できているのだろうけど、それにも限界はあるはず。
だとしてもこの空間で何をするにも狭すぎるわ。
とりあえず場所をこの廊下の突き当りから外とか広いところに移動しないといけないわね。
「アルバ!あいつの弱点は多分足。私の能力自体はあまり通じないから戦力に数えない程度にして!それと多分ここで戦闘は不利!兎に角外に逃げ出すわよ!」
私は今言える範囲でアルバに対して、この状況の打開のための情報を差し出した。
「最低限の簡易的な情報ありがとうございます。それではまずは外に出ることから始めましょうか。」
アルバはそういうとすぐに真っ直ぐ掌底を筋肉だるまに向けて差し出し、勢いのまま体に触れて突き飛ばした。そして筋肉だるまは廊下の反対側の突き当りまで吹っ飛んでいった。
あの巨体が軽々と吹っ飛んでいったわ⁉あの身軽そうな体のどこにそんな力があるの⁉
巨体を吹っ飛ばし何事もなかったようにアルバは夢菜へと振り返り言った。
「とりあえず逃げる隙だけ作りました。ただあれではすぐに起き上がって追いかけてくるでしょう。まずは外に出るだけ出て、開けた場所で迎え撃ちましょう。」
アルバの発言に頷き私はアルバと共に外に出た。
出てきた場所は校庭だ。
戦闘訓練等もできるように総合運動場の400メートルのトラック分の敷地面積がある。
私の学校にはこのような場所がほかにもいくつかあるのだ。
校庭の中心付近まで出てきたときさきほど抜け出してきた方とは反対側の廊下側の壁を破壊しながら筋肉だるまがやってきた。
「HAHAHA!一日過度に運動をしすぎると逆に筋肉に悪いんだけどね!
私の肉になっているこの子たちも悲鳴を上げて知ってるよ!だから早く私の糧になってくれないかい⁉
この町で一番強くて、逞しくて、力があって、何物にも恐れなくて、何事にも持ち前の笑顔で対処して、何物が前でも挫けない。そんな私と一緒に、いやそんな私にならないかい⁉」
男は夢菜が一緒になってくれなかったのを運動がしたかっただけだと認識していた。
そして運動が他の奴に邪魔された今、運動ではなく副目的である、自身の筋力増強を行おうとしていた。
忌々しい他の連中に上に立たれているのが腹立たしく。まだ筋力もなく、自身も自信もなく、ただただ空虚だった自分を馬鹿にしてきたあの連中を見返し、そして何よりも。
「いい加減に一度話を聞いてくれないかい?私の存在を認識しているはずなのに、ほぼ私の事眼中にないじゃないか?フィリア・ベール・ナブッコくん」
アルバは男が夢菜の、更には夢菜の能力しか見ていないことに若干の怒りを思いながらも、最優先である夢菜の身の安全を守るためにあえて注目させるように本名で煽った。
ただその煽りは成功と失敗の半々の結果で帰ってきた。
「?さっきから君は私に対して何を言っているんだい?私の名前は藤枝依蔓私がこの町で一番強く、漢らしく、筋肉があって、寛容で、他の誰よりも正義感にあふれている男さ。」
それを聞いてアルバは一瞬考え、小声でつぶやく。
「人違い…いやそれはない。兄さまの情報が間違えなはずはない…。ということは、やはり!」
夢菜はアルバの困惑している様子と初対面の時と同様に呼吸するかのようにポージングを変えている様子を見ながら考えた、異様な光景が故にむしろ落ち着いた、アルバが自分より余裕がない、状況に慣れてきてしまった、などの理由があるものだが。
アルバの言っていること、そして藤枝依蔓が言っていること、どちらも嘘は言ってないわ。理性と言うか魂に干渉していると言っても過言ではない私の能力にはなんとなくだが思考の方向性が捉えれる。
そのうえで両方とも嘘を言っているような方向性はなかったのだ。
どちらも真実なのだとすると、答えは。
「藤枝さん。あなたが一番好きな作品は何ですか?」
「HAHAHA!私が好きな作品かい!いい質問だね!私はね『鉄の巨兵』という私が出ている作品さ!私が自信の力をもって敵を蹴散らし、正義の行動を行い、そして敵であれ悪であれ改心させてしまう、力をもって周りの人達を鼓舞し、みんなで一緒になって一つの世界を強く生き抜く作品さ!私はそれの主人公でね。みんなを守るための力を得るために今頑張っているのさ!」
やっぱりそうだったわ。どこか盲目的で話がかみ合わないと思っていたのよね。
彼は私と同じで自身を元々の自分から他の何かに置き換えた者なんだわ。
そう、依蔓は皆のために勝ち抜かなければいけない。一緒にいる家族や友人。悪い奴もいい奴も等しく一緒だ。そうしてみんなで勝ち取らないといけないのだ。
あの憎らしいあいつらではなく自分こそが【ベーレト・バビリ】の勝者にふさわしいと認めてもらうのだ。
「さあ、今度こそわかってくれたかい?私は正義のためにも君の力が必要なんだ。私を手伝ってくれるかな⁉」
依蔓は断られるわけがないと信じ切り自身満々に発言した。
それに対して夢菜は
「嫌です。わたしには私のやりたいことがありますし、貴方と一緒にってことは貴方の筋肉になって過ごしてくれということですよね?きもいからイや。あなたが正義で私が悪だという認識をもし今持ったのなら本番で決着をつけましょう?そっちの方が正義と悪のぶつかり合いっぽくないかしら?」
出来る限り刺激しすぎず、そのうえでこの場を切り抜けられるように言葉を投げかけた。
横で見ていたアルバは少しだけ驚いた顔をしていたが、すぐにいつもの微笑みに顔を変えた。
そして依蔓はそれに対して少し考える様子を見せた後潔く承諾した。
「たーしーかーにー‼‼‼‼私は別にそんなに焦っているわけでもなければ私の正義の理解者も少ない。そのうち君にも理解してもらうためにまずは理解syを増やしておこう!では今は一度さらばだ!」
そう言って何事もなかったかのように後者の中に消えていった。
あー生きた心地があまりしないわね。命の危機ってやつを本格的に感じたのは久しぶり、いやここまでしっかり他人によって引き起こされる命の危機はなったのではないかしら?多分。
まあでも最後の方少しだけ賭けだったのよね。私と同じような人って認識したら『薔薇の美眼』少しだけ依蔓に使えたのよね。共感性っていうのは大事ね。
ただ少し違う点もあったと思う。
私の場合元の私っていうのがいるうえで、そうありたいと。完璧に同じでありたいと夢菜に対して考えていて、近づけていっているというのが認識としては正しいはずだ。
しかし依蔓は自分はもとからそうだったという認識のもとで動いており、更にはその前までの記憶すらも怪しそうだなという風に感じ取れた。
でもそれよりも、だ。
アルバの情報の通りならあれはフィリア家の人間だ。
今の私では太刀打ちは出来そうにないほどには。
あれがあと少なくともあと5人はいる。
早急に戦力を確保しないと本格的にまずいわね…。
わ、書きたい事が多すぎて文章構造がきもくなっている気配がするぞー?そのうち修正入れようかしらね。
あと、活動報告とかも更新したので、もし読んでいただけるような方いらっしゃればぜひ=
感想とレビューとブックマークも気になる方よろしくお願いいたします。励みになります。
それではまた次の夢で。




