海に漂うは後悔
章末です。
ただ想うことすらできず、憩いの時間も睡眠の時間も自らの体をかき回されて終わる。
そして私は愛に手を出すことにした。
愛とはかけ離れた破壊を生み出し、愛を壊すための衝動を生み出し、その熱情に突き動かされた愛する者達はそれぞれの道を考え歩んだ。対立か服従か。
愛する者の中でも一番のものを選び力を与えた。権利を与えた。そして愛する者達だったものに私は怒りと怨嗟をぶつけた。
そして私は殺して殺して殺して殺して。直接的にも間接的にも。肉体的にも精神的にも。殺して殺して殺して、殺された。
破壊も愛する者も秩序も殺された。
そして私は世界から廃棄された。ただただ思考しか許されない海に漂う怪物として。
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「はあ。いつになったら変な夢を見なくなるのかしら。」
夢菜はいつも見る奇妙な夢に頭を悩ませながらも起床した。この夢を見るといつも頭痛に悩ませられる。ただ、今の夢菜には大事な戦いが迫っているため、頭痛ごときに頭を悩ませるわけにはいかなかった。
最後にアルバやノアと会議を開いてからある程度時が経った。既にベーレトバビリは目前に迫っていた。
夢菜がしたことと言えば純粋な肉体強化と体力増強。そして情報集めだ。アルバにただ頼んでしまえば情報集めなど簡単に行えるだろうが、それでも自分がすることに意味があると感じたためだ。ある種他にすることがなかったとも言える。
「本当は自分に第二の能力があるんじゃないかとか、考えて色々試してみたのだけれど、結局何にも分からなくて、出来ることをやろうとしただけなのよね」
結局夢菜が今日の今まで出来たことは自身の能力の再確認程度になってしまった。
『薔薇の美眼』相手の理性を蒸発させて魅了及び洗脳する能力。今のところ防がれることはないが、相手にとことんまで拒否反応が出たりとか、相手に対して緊張したりすると能力の発動はしない。自身に能力を使うことも可能で、その場合は理性による肉体のリミッターを解除して、身体能力などの底上げを一時的に行える。欠点と言えば能力使用中は体力がかなり持っていかれること。誰かに使ているときの体力の消費量はまだマシだが、自身に使用している時は肉体の消耗と同時に倦怠感を感じる。恐らくだが、疲れ切った後は動けなくなるのだろう。
一度暴食のフィリアとぶつかることになって本当によかったわ。あれがなかったら私は体力のことなんて気にせず能力を使って、疲れ切って殺されてベーレト・バビリを終えていたかもしれないわね。そして現在のこちらの戦力はアルバとノア。
アルバは毒の能力を持っていて、自身を毒に変えることも出来るし、毒を相手に付与することが出来る。そもそもの身体能力が高そうだし、重宝を含む能力面だけでなく、戦闘になってもどうにかできそうだわ。
あとはノアなのだけれど、怠惰のフィリアとだけ聞いてるだけで他には何にも知らないのよね。フィリア家の能力者だから強い能力ではあるとは思うのだけれど、戦闘面でどれだけ役に立つのかは分からないわね。実際フィリアの中には料理や芸術。他にはビールを出す能力だとか、戦闘面に役立つかと言われれば怪しい能力もあると聞いたことがあるし、まあ大船に乗ったつもりでとは言われてるから期待はしておきましょう。
私に出来ることはきっともうないわ。後は本選に備えるまでよ。
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「さて、こちらとしても準備万端だあ。俺自体の参加も出来るようにしたし、部下たちに関しても働きかけておいた。後はアルバ。お前の覚悟次第だ。お前は本当に無自覚な少女を目覚めさせようというんだな。自身の生まれもあり方も。そして本体のことも知らない夢見る少女を」
黒い外套に身を包み暗い裏路地に紛れ溶けそうな少年が相対するアルバに対して問いかける。相対するアルバはいつも着ている学生服ではなく、神聖さを感じる白装束の衣装に身を包んでいる。彼の覚悟を決めた表情から見てそれは彼にとっての勝負服のようなものだと推測できた。
「私は今の彼女のことを幸せだとは一切感じない。理性は彼女由来の者だ。しかし、本能は全くの別物。彼女の愛は本能に由来するものが故にどれだけ彼女が夢を見ようとも彼女が夢を叶えることも愛を知ることも叶わない。誰かのために尽くしてきた者の末路がそれだなんて。そんな哀れなことはありますか!?ないですよね!?兄さん。それに兄さんがこの世界に来たのはきっと目覚めさせるためなんでしょ?無意識下で彼女が既に死んでいた私をこの世界に召喚した、そしてそれを見つけて理解した兄さんが計画の方向性を変更しただけで。だから私は目覚めさせる。私のためにも彼女のためにも。それに夢菜のためにも、たとえ彼女が望んでいないものだとしても」
アルバは興奮した様子でそう答えた。アルバは理解していた。自身の願いが独りよがりで彼女の復活はきっと世界に破滅を呼ぶだけだろうとも。でもだからこそいいのだ。彼女も、私も居ないこんな世界など滅んでしまえばいいと。敗者で積み立てられた歴史は、勝者の歴史の目線で見た時では輝かしい戦勝の記録としてしか残らない。場合によっては敗者は歴史から完全に取り残され抹消される。場合によってはあらぬ汚名を着せられ、ただ勝者を飾り立てる道具へとなり下がる。それはどれだけ悲しいことなのだろう。自身がやった善意ある行いも歪んだ記録によって邪悪なる行いへと伝わっていくものは変わっていく。そんな現状を良しとする世界も人類もアルバにとっては滅ぼしたいというのが本心だった。
そしてそんなアルバの様子を見ているノアとしては心苦しい心持をしていた。アルバの言っている言葉が彼の心に深く刺さる。ノアは過去のことを思い出しながらアルバの言うことに耳を傾けていた。アルバの言う後悔の内容には自分は関われてすらいない。その内容にかかわることの出来たのであろう機械の時には既に囚われていて、むしろ争いの火種の一つにしかならなかった。あの時の自身に眠る記憶は地獄のような思い出ばかりだ。ただあの時の記憶があって、しれで出来た執念が自分にはある。だからこそ今新しい体に自分だけではない魂と器を入れながら新たに想像できる未来のために自身を働かせている。母を姉をあの少女を救うために私は今ここにて努力を行う。
アルバにはアルバなりの。ノアにはノアなりの。夢を叶えるための方法があって、理由があって、そこから先の目的があった。そのために彼らは以前までであれば叶うことがなかった手を組んで共に夢をこぐことを決めた。
「分かった分かった。本気なんだなアルバ。そしたら俺としてはお前を止めるつもりは一切ない。むしろ協力させてくれ。おれはどうあがいてもやることは変わらない。ならそれを邪魔するのではなく手伝ってくれる弟であるお前を見放すようなことはしないとも:
改めてアルバとノアは結託する。自分たちこそがこの世界を丸々終わらせて新たな世界へと紡いでいくと。そして世界や人間たち、ひいては神々に対してのう復讐を行うと。
「ベーレト・バビリまであともう少しだ。つまりは我々の計画の進行もこれから始まる。必ず夢菜を勝たせて、世界をつなげて、彼女を復活させたうえで、いらないものを潰して回ろう。必ず、神を殺そう。そして始めよう。エヌマ・エリシュの後日譚を。これは復讐と幸福に至るための物語だと」
ノアとアルバは顔を合わせて笑い合う。きっと我々ならば夢を叶えることが出来るのであろうと。
ベーレトバビリまではあと数日。最後の一人になるまで終わらない長期戦の始まりが近づいていた。
次回からベーレト・バビリ本選です!
ここまで来るのはちょい長かった。
まだまだまだまだの物書きではありますが、ここからがメインステージ。やり切ってやりましょう!(執念でげろ吐きながら)
それではまた次の夢で。




