第59話 永久婚約の神器人形ギギラ・クレシア
「てなわけで、お疲れのバラン君は休んでて」
「そりゃ助かるけどよ。大丈夫なのかよ?」
「今のギギラなら余裕だよ余裕」
ギギラがパチンと指を鳴らす。
ゲートが開き、吸い込まれるようにバランが中へ入っていく。
それと入れ替わるように、赤い渦を纏ったジェーエルが現れる。
「余裕とは、大きく出ましたね」
「だって事実だし」
赤い渦を纏った拳をギギラは片手で受け止める。
さっきまで肉を簡単に裂き、氷塊を砕いたその渦を彼女はものともしない。
「非常に腹立たしい事だけどさ。今の私は君とほぼ同じ力を持ってる」
「私と同じ?」
「ほら、君の力は民の願いに応える力なんでしょ?」
そんな事も分からないの?と煽りながらギギラは口角を上げる。
ジェーエルの攻撃を受け止めた右手は火花こそ散っているが、傷一つ付く気配がない。
「思いを力に変える……それが貴方という武器が持つ能力ですか」
「そ。でも君みたいに憎悪を力に変えてる訳じゃない」
ギギラの背後に魔法陣が浮き上がる。
その数は70。
ギギラの彼氏と同じ数の魔法陣が一斉に発光した。
「ギギラは皆と紡いだ愛を力にする」
魔法陣から放たれたのは白いビーム。
何の属性も持たない、ただのエネルギーをまとめただけのビームだ。
しかし、その威力は脅威そものもだった。
耳をつんざくような爆破音を奏で、目を焼くような閃光がほとばしる。
ビームが着弾した地面は焼け焦げ、黒に変色していた。
そんなビームをモロに食らったジェーエルはその場で姿勢を崩してしまう。
「さっきまでの攻撃とは……桁が違いますね」
「へぇ、あれ食らっても立てるんだ」
「まずは反撃ー」
「ま、そんなことさせないんだけど」
ジェーエルが体制を整える前にギギラの拳が放たれる。
グニャリとジェーエルの腹が歪み、彼女の体が面白いぐらい吹っ飛んだ。
「そもそもさ、人々の憎悪を代わりに叶える神なんてナンセンスでしょ」
「ッ……民意断罪【ヘイト・フル・レーゲン】」
ジェーエルは吹き飛ばされながらも姿勢をねじり、糸の弾丸を無数に打ち尽くす。
「憎悪で固めた力より、愛で固めた力の方が強いに決まってるんだからさ」
その弾丸からギギラを護るように、魔法陣が動いた。
魔法陣はギギラを護る盾となり、次々とジェーエルの攻撃を落としていく。
「ギギラはこれからも、大好きな皆と楽しく過ごしていく。その理想を壊そうとするクソ女には一人だって負けてやらない。相手がたとえ、神であっても!!!」
ギギラが地面を蹴る。
ジェーエルの懐にさっと近づき、彼女の体に何十発と拳を打ち込む。
「23発目!!」
「24発目!!」
もちろん、ジェーエルだってただ棒立ちでギギラの攻撃を食らっていたわけではない。
神である彼女はその全能をもってして防御に徹していたのだ。
「これで69発目!!」
ギギラの猛攻はそんな神の抵抗も涼しい顔で乗りこえる。
「これで70発目!!!」
その光景を見たとき、その場の誰もが悟ったのだ。
今のギギラ・クレシアを止める者は世界中を探しまわってもどこにもいないと。




