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【完結】死刑囚ギギラ・クレシアは禁術【武器化】で歴代彼氏を保管中  作者: アカアオ


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第47話 決戦前夜な予感

 「この試合は貴方の勝ちです。早く独房に戻ってください」


 「それ聞いてさ、はいそうですかってギギラが答える訳ないじゃん」


 ギギラは呆れた声を吐き捨てる。

 バランを掴み、魔弾を目の前のジェーエルに放とうとしていた。


 その瞬間ー


 「無駄ですよ。少なくとも禁術で戦う貴方では私を倒すことは出来ない」


 ジェーエルの左目が赤く光った。


 「あ、あれ??魔弾が出ない。ていうか、なんか体もなんか重い」


 「バラン君?」


 「おいこれやべぇぞ。多分禁術が封じられてる」


 その言葉を聞いたギギラは察する。

 ジェーエルの赤い瞳に何がにめられているのか。


 「【禁術殺しの禁術】。このコロシアムを覆ってる結界と同じ力だね」


 「私が使っているのは所詮借り物にすぎないですが……貴方一人の禁術を止めるぐらいは容易ですよ」


 禁術を封じられる。

 おまけに、さっき激闘を繰り広げたばかりで体に疲労が溜まっている。


 そして、ジェーエルにはあの赤い糸を操る能力がある。


 このまま戦っても勝ち目は無い。


 仮に戦ったとして、ギギラが死んでしまったら、彼女の禁術で武器にしている70人の彼氏も一緒にお陀仏だ。


 勝てもしない戦いに挑んで彼氏を殺してしまうなんて、ギギラには耐えられない結末だろう。


 「分かったよ。大人しく独房に帰る」


 「そうですか。それはよかったです」


 「だけど、次同じような事があったら」


 「あったら?」


 「その時は君をその糸と目ん玉ごと殺すから」


 「限りなく不可能だと思いますが、せいぜい頑張ってください。また近いうちに会うと思いますので」



 「あーむかつくむかつくむかつくむかつく!!!!」


 そうして数時間後。

 独房に帰った後のギギラは荒れていた。


 その理由は言わずもがな、先ほどのハプニング。

 せっかく気持ちよく勝った所に横槍を刺されたのだ。

 晴れ晴れとしていた気持ちが台無しである。


 「まぁギギラ、そこまでにしとけって。早く寝ないと明日に響くぞ」


 「あのクソ女ぁ。今すぐにでも【禁術殺しの禁術】を対策してぶっ殺す」


 「あぁ。聞こえちゃいねぇなこれ」


 「バラン君もアイデア出し手伝ってよね。あんなのが居たらギギラ達の命が危ないんだから」


 「はいはい。にしても程々にしとけよ」


 そうして二人は夜中に作戦会議を続けた。


 時にはギギラが精神世界に入り込み、他の彼氏にも助言をもらったり。

 その間にバランがギギラの為の飲み水を用意したりとあれやこれや。


 一応、有効そうな作戦が形だけ完成。

 これ以上夜更かしするのはか体に悪いからとバランがギギラをすっと寝させる事となった。


 「ねぇバラン君」

 「お前まだ寝てねぇのかよ」

 「もう少しで寝るよ。ちょっと伝えたい事があっただけ」

 

 ギギラはそう言って目をつぶり、うつろな声色でバランに語り掛ける。


 「明日、きっとロクでも無いことが起こる」

 「……どうしてそんな事思うんだよ」

 「なんとなく。ギギラの感は当たるんだよ」


 どこか得意げな表情でそう言った後、ギギラは大きなあくびを一つ。


 「だからさ、また明日もよろしくね。頼りにしてるからさ」


 そんな一言だけをバランに残して眠りについた。



 「よっジェーエル。さっきはありがとな」


 時を同じくして、ジェーエルはとある独房へ足を運んでいた。

 そこに鎮座しているのは、監獄長ジャンネ・ダルケー。


 【禁術殺しの禁術】の本来の持ち主であり、この監獄と死刑囚同士の殺し合いを作り上げた男。

 そして、ジェーエルと同じ【耳無し】の神の信徒。


 「死刑囚以外がコロシアムで死ねば、民衆の暴動が始まりこの国が内部から崩壊する。あなたからそう聞いたから動いたまでです」


 「それでもノータイムで動いてくれるのはお前ぐらいのもんさ」


 「あなたが必要と言ったのです。だったら、この世界の秩序を守るためには必要なのでしょう」


 「嬉しい事言ってくれて光栄なもんだ。もしかして俺の事好きなのか?」


 「私に感情はありませんよ。あなたが信徒の中で一番【耳無し】様に近い。だから貴方の言葉には従う価値がある」


 ただそれだけですと、ジェーエルは無表情な顔のままジャンネに告げた。

 ジャンネはそんな彼女とは対照的に、感情をむき出して笑った。


 「これからお前に汚名を着せる人間に言うセリフじゃねぇな」

 

 「私達はそういう存在です。我らが神の為ならば、この世界の秩序の為ならば、どんな非道も厭わない。自分自身すら投げ捨てる」


 「あぁ。その為にここまでやってきたんだ」


 少しの間、沈黙が訪れる。

 そして、ジャンネはじっとジャーエルの目を見つめる。


 「最後の確認だ。お前は明日、死刑囚としてギギラ・クレシアと戦う」

 「はい」

 

 「罪状は死刑囚であるギギラ・クレシアに上手い飯を食わせた事。対戦相手の情報を教えた事。その他諸々のギギラ・クレシアに関する事。全部俺がお前にやらせた酷いマッチポンプの死刑囚」

 「必要な事です。その為に私は毎朝あの女の独房へと足を運んだのですから」


 「明日の戦い。お前が勝つか負けるか、生きるか死ぬかは目的には関係しない」

 「私がするべきは全力で彼女と戦う事。彼女へ憎悪や恐怖を抱く民衆の代行者となること」


 「そうすれば、俺達の神様が望んだ結果を得られる」

 

 二人の確認は淡々と進んでいく。

 平気で人の命を代償にする作戦が、まるで当たり前の事の様に粛々と進む。


 「てな訳だ。お前は明日ただ戦えばいい」

 「……ジャンネ。一つ聞いても良いですか?」

 「なんだ?」

 「明日、私とギギラ・クレシアのどっちが勝つと思いますか?」


 そんな確認が終わった瞬間、ジェーエルから問いかけられた質問。

 ジャンネは頭をゆっくりと揺らしながら「そ~だなぁ」と答えを模索する。


 「んなもん興味はないが……個人的には、お前に勝ってほしいと思ってるよ」

 「そうですか」


 ジェーエルのその声は機械的だった。

 彼女の感情の無い表情と声色を崩さぬまま、独房の扉を開けた。


 「そんな言葉を聞かされてもパフォーマンスに影響はないです。感情がありませんから」

 「おうおう。冷たいね」


 「ですが」

 「ですか?」


 その一瞬、ジェーエルはこれまでの人生をふっと振り返った。

 そして、この一言は上司であるジャンネに伝えるべきだと思ったのだ。


 「それでもこの胸の中には、貴方が与えてくれた信徒としての使命感がありますから……貴方の希望に添えるように頑張りますよ」

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