第37話 彼女に絶望は似合わない
「ラーナの能力と同じってことは、あのコピーは本体と性能が同じって事だね」
「おいおい……冗談きついって」
「あの時はカニみその味がしたけど、この状態のアイネを食べてもカニみその味がするのかな」
「バカ言ってる場合じゃねぇの!!」
ギギラはその猛攻をギリギリの所で交わしていた。
ただでさえ強い相手が何十体にも増え、それが連続で襲い掛かってくるこの状況は絶望的以外の何物でもない。
「あなたは言ってた、イってたねぇ!!一人じゃ勝てなくても、何人かの力が合わされば勝てるってさぁ!!」
狂人となり果てたアイネは叫び声をあげながら分身を増やし続ける。
今は増殖したアイネの数はコロシアム全体を埋め尽くすほどだった。
「アハハハハ!!あなたも飲み込む!!皆まとめて!!」
「セトラッ、お願い」
3人分のアイネが黒い液体を纏いながら突進する。
それを見て、ギギラは手に持っていた39番目の彼氏、エトセトラを剣から盾にモードチェンジした。
光輝く長方形の盾が、濃い闇の魔力である黒い液体を抑える。
すると、今度はギギラの背後から別の分身が攻撃を仕掛け始めた。
「バラン君」
「任せろ。足掻きの聖魔弾 」
空中に浮遊するバランが光の魔弾を撃ち、アイネの分身をけん制した。
しかし、この状況も長くは続かないだろう。
「どうするんだよギギラ。このまま戦っても勝てるビジョン浮かばねぇぞ」
「……」
「しかも、俺と盾の子以外は光の魔力を使える武器は居ないんだろ?そのうえ光の魔力が無いとあの黒い液体に飲み込まれる。もう滅茶苦茶じゃねーか」
これが普通の相手なら、いくらでもやりようがあっただろうとバランは思う。
何なら、ラーナの時と同じように彼氏No59、【悪食の咢ブロン】の力で分身を食べつくすだけでもそれなりの成果は出るはずだ。
だが、アイネの纏う魔力がそれを許さない。
液状に張るほどまでに濃い闇の魔力。
光以外の魔力を宿した武器は一瞬で飲み込まれてしまう。
この特性がある以上、バランとエトセトラ以外の光の魔力を有さない武器は切り札たりえない。
「……一人だけ。この状況を打破できるかもしれない武器が居るの」
「へ?」
バランが思考を巡らせながら目の前の敵を捌く中、ギギラは小さな声でそんな事をつぶやいた。
「おまっ、そんな切り札があるならなんでー」
「問題があるんだ。彼はバラン君達と違って不完全な状態で武器化してるの」
「不完全、能力が弱いとか」
「そっちに関しては心配いらないかな。ただ、能力を使うためにギギラと……最低でも2人以上の武器の協力が必要になるの」
真剣な表情で語るギギラのその顔を見て、バランは悟る。
その協力というものが、一筋縄ではいかないことを。
かなりリスクも高いのだろう。
そして、そのうえでその武器を使うために協力してはくれないかとバランやエトセトラに問いかけている事を。
「その武器がどんなのか知らねぇけど……死ぬよりましに決まってんだろ!!さっさと使えるなら何でもするし、そういう事は早くいってくれ」
バランがそう叫ぶと、盾の状態で攻撃を防いでいたエトセトラも、纏っていた魔力をブワリを膨れ上がらせた。
どうやら、二人の気持ちは同じ様だ。
「そっか。そうだよね。二人ともありがとう、あと少しだけ時間稼いで」
ギギラはいつものようにワームホールを作り、そこから武器を取り出した。
「そしたら、ギギラが全部終わらせるから」
そうして取り出したのは、人の大きさ程あるであろう大剣だった。
その刃は赤くさびており、所々に年季を感じる大きな鈍。
それがギギラの出す、最後の切り札だ。
「そんな鉄の塊で?私を倒せるとでも」
「倒せるよ。だってこれは世界で一番豪快な人の魂が宿った剣なんだから」
ギギラはその錆びた剣を撫でる。
すると、その刃に赤いラインが浮かび上がった。
「バラン君、セトラ!!少しだけギギラとこの件に身をゆだねて」
「分かった……って!!ぎゃぁぁぁなんか吸い込まれる」
錆びた剣にバランとエトセトラが吸い込まれる。
二つの武器は大剣に吸い込まれ、妙な効果音を鳴らして内部に取り込まれた。
刹那、大剣が光り輝く。
「ワイルドチューン」
その光の正体は途方もない光の魔力だった。
「アイネ……ギギラは君の事嫌いだけど。その強さだけは認めてあげる」
錆びだらけだった大剣は、浄化の光に飲まれてその姿を更新する。
「その剣を抜いたのが、その証明??」
「そうだよ。この剣に宿ってる彼氏は特殊な状態にあるから出来るだけ安静にさせてあげたかったんだ」
現れたのは見るも美しい、赤き刀身の豪剣。
その中心には杖と羽の絵が浮かび上がっていた。
「豪剣抜刀。彼氏No2、【原初の豪剣ガルチャ】」




