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【完結】死刑囚ギギラ・クレシアは禁術【武器化】で歴代彼氏を保管中  作者: アカアオ


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第36話 彼氏No39、【希望の双翼エトセトラ】

 『セトラはさ、将来の夢とかあるの?』

 『ギギラお姉ちゃん忘れたの?僕は明日死ぬんだよ?』

 『明日死なない前提で話してよ』

 

 これはとある国に生まれたとある男の子の話。 


 彼の名前はエトセトラ・アーゼム。

 彼と仲の良い人間はセトラと言う愛称で彼を呼んでいる。


 生まれた時から強大な光の魔力を有している子供だった。


 彼の体から溢れる光は全ての悪を滅した。

 病原菌を消滅させ、悪しき心を浄化する。


 いつしかセトラは平和の象徴として、国中の皆に愛されるようになった。


 しかし、そんな幸せな日々も長くは続かない。

 人智を超えた余りにも強大な力はいずれ大きな被害をもたらしてしまう。


 セトラも、自身の宿した光の魔力に耐えられず、暴走してしまう日が必ず来てしまうだろう。


 ゆえに、彼は10歳を迎える誕生日に安楽死を迎える事が決定されていた。


 『そんなもしもの話、町の人に聞かれちゃったら、また皆んなを悩ませるよ』


 『ここは二人きりだし、君の事を過剰に心配して騒ぐ人達の事なんて気にしなくて良いよ』


 町ではセトラに関する口論が日常茶飯事になった。

 それを仲裁するように、セトラはいつも笑顔で話に割って入る。


 それでみんなが助かるなら、僕は嬉しいとはにかんで。


 そんな彼にとって、自分の心のうちをさらけ出せるのは、当時旅人であったギギラ・クレシアだけだったという。


 『もし、僕に将来があるなら、旅をしてみたいな』


 『良いねぇ。どんな所に行きたいの?』


 『美味しいお菓子がいっぱいの国とか、かっこいい兵隊さんが居る城とか』


 『いいねぇ。兜を取るとすっごいイケメンの兵隊さん見つけて連れ去るとか』


 『あはは……僕は遠くで眺めるだけで良いけど』


 時にギギラに呆れながら。

 時に彼女の話に目を輝かせながら。

 

 少年は少し早めの青春を送っていた。


 『それから……それから……』

 『それから?』

 『お姉ちゃんも一緒だと……嬉しい』


 その言葉は、セトラが精一杯捻り出した彼なりの告白だったのだろう。

 自分は明日死んでしまうけれど、自分は貴方が好きでしたと、愛多きギギラに伝えるために。


 『ねぇセトラ。もし、ギギラに君を助けられる力があるって言ったら……信じる?』


 『え?』

 

 『この国では違法な、ちょっと悪い力だけどね』


 そう言ってギギラはゲートを開く。

 そこからあふれ出たのは、鉄製のグローブや魔法陣が刻まれたワイングラス、その他さまざまな武器だった。


 『肉体の成長は止まるけど、君の魂と力を武器と言う形で保存できる』

 『それじゃ、魔力の暴走も起こらない?皆を巻き込まないで済むの?』

 『もちろん』


 ギギラはニヤリとはにかんで少年の頭を撫でた。

 

 『そういえば、ちゃんとした自己紹介したことなかったね』


 ギギラは彼を武器にしたその日を忘れない。


 『ギギラの本名はギギラ・クレシア。【武器化】の禁術を持つカワイイお姉さんだよ』



 「綺麗な羽……素敵」

 「驚いたね。とんだイカレ女なのにまともな価値観持ってるんだ」

 「えぇ……だって、素敵なものを汚す時が一番楽しいじゃない」


 彼氏No39、【希望の双翼(そうよく)エトセトラ】。

 その力で光の羽を生やしたギギラが天を舞い、黒い雫を纏ったアイネを見下している。


 その羽から照射される光はコロシアム全体を照らし、アイネが纏っていた闇の瘴気を中和させていた。


 「強い光を感じるよ。私の闇と同等の力……でも残念」


 アイネは黒い液体で作り上げた槍を発射する。

 槍は照射される光に屈する事はなく、真っすぐにギギラの胸に向かって飛び続ける。


 「練度は私の方が上みたい。その子の力だけじゃ勝てない」


 複数の槍がギギラの体に刺さる。

 槍がぐちゃぐちゃと嫌な音を鳴らしながら彼女の体を支配しようとうごめいていた。


 「なんか勘違いしてるみたいだから教えてあげる」

 「ん~?」

 「今君が戦ってるのはギギラ達だよ。セトラ一人と戦ってる訳じゃない」

 「何が言いたいの?」

 「つまり、セトラ一人の力じゃ君に勝てないとしても……そこにギギラとバラン君の力が加われば逆転できる」


 次の瞬間、ギギラに刺さっていたはずの槍が内部から爆ぜた。

 全てを飲み込む闇の雫で出来た槍が灰と化したのだ。

 不思議な事に、ギギラの体には傷一つ付いていない。


 「君はバラン君に手を出して、シャイちゃんを怖がらせて、セトラを汚したいって言った」


 ギギラが(バラン)の標準をアイネに合わせる。

 

 「灰も残さずに消してあげるよクソ女」

 「自分の事を棚に上げてクソ女だなんて。あなたって面白い」


 ギギラの目は冷ややかで、まさにゴミを見ている様だった。


 「足掻きの聖魔弾 (ホーリー・ストラグル)


 バランから無数の魔弾が繰り出される。

 アイネはその弾幕の雨を黒い液体で作った壁で防いだ。


 ブヨン、ブヨン、と攻撃を受けるたびに振動する液体を見てアイネはある事に気づく。


 「さっきより強くなってる」


 さっきの攻防を経てバランの力がどれほどの物か痛いほど理解している。

 彼がどれだけ限界を超えたとしても、これほどの火力が出るはずがない。


 だとすれば要因は一つ。


 「あの羽のおかげでパワーアップしてるんだね。誰かを助ける力、なんて優しい子」


 「そうだよ。セトラは善を助け、悪を撲滅させる優しい力の持ち主なんだからさ」


 背後から聞こえたその声に、アイネは驚きながらも振り返る


 「あの杖(バラン)に攻撃させたまま後ろに」


 「二人の愛があってこそなせる技だよ。君みたいな性悪には一生分からないだろうけど」


 ギギラはそんな毒を吐きながら、自分の羽となっている彼氏(セトラ)に魔力を回した。


 「セトラ、決めるよ」


 彼氏No39【希望の双翼エトセトラ】にはある特殊な機能が備わっている。


 それは、3つの形態に変化できるというものだ。


 一つは、光の魔力で善なる者を助ける大楯に。

 一つは、光の魔力で皆を助ける羽に。

 そして……もう一つは光の魔力で悪を滅ぼす大剣に。


 「ギギラお姉さんにかっこいい所見せて」


 ギギラは地面を踏みしめて、アイネとの距離を縮める。


 それと同時に、セトラが羽から大剣へと形態を変えた。


 「希望剣(ホープバスター)!!!」

 「洒落た名前だね。それも含めて汚してあげる」


 アイネはギギラ達を迎撃するように立ち、口をカパっと開いた。


 その口から闇の魔力で出来立た液体が湯水のように湧き出し、蛇のようにうねりながらギギラの大剣(セトラ)と激突する。


 両者が出した技の威力は奇しくも互角。

 互いの光と闇は互いを押し合い続ける。


 「おいおいお前、ギギラに夢中になりすぎてこっちが疎かになってるぞ!」


 そんな膠着状態を壊したのは、一人で弾幕を放ち続けていたバランだった。

 弾幕からアイネを守っていた黒い液体の防壁がぐにゃりと大きく歪み、そして崩壊する。


 その衝撃で、アイネは大きく体と回していた魔力のバランスを崩した。

 その一瞬をギギラ・クレシアは逃さない。


 「決めろよギギラ!!」

 「バラン君ナイス!!」

 

 高濃度の光に包まれたその剣は闇の権化と化したアイネを押し切り、そして叩き切った。


 「良し!!やったか?!」


 一瞬、閃光がコロシアムに走る。

 それが晴れた後、そこに残っていたのはー











 「きっとあなたは……いや、あなただけじゃなく、ここに居る観客も、この戦いはもうこれで終わり……なんて考えてるんでしょ?」







 右半身を失ってるアイネの姿だった。


 「まだ終わりじゃない。まだ終わりじゃないよ??だって死に際で見つけたの、見つけた見つけた見つけたの!!逆転の鍵を」


 無くした体の部位を闇の魔力でなんとか補い、無理やり地面に立ち尽くしている。

 その言動は先ほどとは全く異なるもので、言葉を選ばずに言えば常軌を逸している。


 「勝ったと思っている相手を叩き潰す……フフフ、アハハハハ!!!それはなんて、心がそそる光景だろうね」


 アイネが狂ったような声を上げる。

 その様子を見て、ギギラとバランはただただ困惑していた。


 「やめてよね。ただのクソ女ってだけで無理なのに、死にかけて精神も壊れた狂人の相手なんかギギラしたく無いんだけど」


 「愚痴ってる場合かよ!!なんかやべぇぞ」


 「私ね、さっきつかんだの!!悪魔の残滓を!!たまたまこのコロシアムに残ってたの!!」


 子供のような口調でとち狂った声をアイネがあげる。

 その声量が上がるたび、ドプン、ドプンと嫌な音がなり続ける。

 ギギラやバランはその音の出所はなんだと周囲をみはる。


 「ねぇ、ねぇ!!ギギラ!!ギギラ・クレシア!!あなた、昔ここで悪魔の力を使う女を殺したでしょ?」


 「おいおい、それってもしかしてラーナって聖女の事じゃねぇだろうな」


 「コピーと本体を食べたんでしょ?食べて殺したんでしょ??残滓から読み取ったよ?どんな味だったの?教えてよ?私も代わりに教えるから、君達を闇で取り込む感想を教えるから!!」


 そして、二人は見つけてしまった。

 一人、二人、飛ばして十人と増殖しているアイネの姿を。

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