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異世界探偵にご依頼を  作者: 板川松雄


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6話 贈り物

目が覚めた2人は客室のベッドで寝ながら話す。


「お前…意外と弱いよな。」


「…失礼なこと言わないで。あなたがいるから

規模の大きい魔術を使えなかったのよ。

なに人質になんかなってんのよ。」


「…悪い。」


きまずい沈黙が続く。

なんかほかの話題ねえかな…。


「ねぇ、弓のこと。というか、ネルドの妻のこと。誰から聞いたの?」


せなが聞いてきたが、誤魔化す必要もないか。

本人も了承済みだし。


「お前の兄貴からだよ。」


「私ひとりっ子なんだけど…てか家族もいない。」


「血縁上は、だろ?」


「…」


セナは拾い子だ。境界の森に捨てられていた所を、

保護された。そして拾った男女が育ての親となった。


「当時お前の母親はアクスに狙われていた。

厄災を持ってると気づかれたんだ。

争いの火種になると考えたそいつは、境界の森に隠すことを思いつく。

そこで隠し終わったあとで、魔王軍に殺された。

恐らくリッドだろうな。」


「…もういい。わかった。

そう。…依頼人ってニックスだったのね…。」


「お前、店の前で青ざめてたからな。

最後の家族まで死んだと勘違いしたんだろ。

あれは酒の仕入れに出かけてただけらしいぞ。」


そこまで話すと、セナは大粒の涙を零していた。


「家族なんかじゃ…ない…!

私は拾われただけ!!だから家族になるために!

そのために頑張ってきたの!お母さんの形見があれば…みんなに認めて貰えるって…受け入れてもらえるって…!同じ姓を名乗れるって!

でも…私…なんにもできなかった!!」


「そう思ってんのはお前だけだよ。

なんのためにお前だけ違う姓を与えたと思う?

血縁者とバレれば、アクスは幼いお前を狙う。

5属性使えるやつなんて目立つからな。

お前はその名前に守られたんだよ。

いいか?勝手に家族から抜けようとしてんのは

お前の方だ!!」


セナは何も答えない。ただ泣いている。


「贈られた愛だけは裏切るな。

それは、何よりも重い罪だ。」



コンコンと、ドアをノックして話しかける者がいる。


「リンボルグ様、ケンゴ様。

入ってもよろしいでしょうか。」


「ああ、構わない。」


部屋に入って来たのはベンディとジャックだった。

あと使用人の女もいた。


「この度は、誠に申し訳ございませんでした!」


ベンディが頭を深々と下げる。


「第1騎士団団長としても心から詫びる。

すまなかった。」


ジャックも頭を下げる。こいつ意外と常識あるのか?


「俺らも地下洞窟に入ったんだが、3人がぶっ倒れているとこを発見したんだよ。

アクスの野郎は牢にぶち込んだ。

お前ら2人は治療したが、体はどうだ?」


俺もセナも完治している。たった2日であの怪我が?

いや、王城ならネルドのような治癒魔術が使えるやつがいてもおかしくないか。


「そう。ありがとう。助かったわ。

ひとつ言うなら、すぐ動いて欲しかったけど。」


セナの悪態にベンディが答える。


「まったく耳が痛い話でございます。

リンボルグ様が使用人に渡された手紙ですが、

私が確認するまでに時間がかかってしまいました。リンボルグ様はすでに城を飛び出したとお聞きしたのでこれでも急いだのですが…。」


「んで、ベンディが筆跡を確認してアクスの物と断定。そこから徴兵するわけだから、早く動いてやった方だぜ?」


ジャックが付け足す。

だが、俺は不可解なところに気づいた。

セナも気づいた顔をしている。


「じゃ、俺はこれで。客室は好きに使っていい。

何かあれば使用人に伝えろ。」


ジャックは部屋を出ていく。

ベンディも出ようとするが、俺とセナが引き止めた。


「待て、ベンディ。お前にはまだ話がある。

セナが一人で客室にいた時、

担当の使用人はこいつのままか?」


「使用人?ええ、この者です。」


「そうか。

セナ、お前が手紙を預けたのはこいつか?」


「いいえ。だってこいつが1番怪しいでしょ?

アクスは地下洞窟にいたのに、手紙が渡されたのよ?ドアの近くに使用人がいるのに。」


使用人は狼狽えはじめる。


「な、何をおっしゃるんですか!?

なぜ私がそのようなことを!?」


王城にはセナをおびき寄せる手紙を出して、

回収する予定の奴がいた。

そんなことが可能なのはドアの近くにいて、

すぐにセナのところへ駆けつけられたこいつしか居ない。

「ベンディ。アクスの固有魔術だが、盗聴だよな?」


「え!?ええ、そうです。盗聴といえば聞こえは悪いですが、対象の周囲の音を聞くことができます

…はっ!まさか!?」


殺害するにも、ネルドの様子を把握できないと行動に移せない。なにより弓の情報も知っていた。

ほとんど王城から出ていないのに。

考えられる可能性は盗聴しかない。

そして盗聴しているなら、この使用人を通じて今も聞いている。


「いえ!私はそんな…!おやめ下さい!

放して!放せえ!くそっ!」


使用人は拘束され、連行される。



ようやく全部終わった…。

あとはニックスから報酬を貰うだけだ。

いや、そういえばもう1個あった。

あの銃はどこいった?

この世界に銃なんかないから、

ジャック達が見つけたならば何か言うはずだ。


「私のことでしょうか。」


また声がするセナの物じゃない。直接頭に届く声。


「あなた達の言う、破砕の弓ですよ。

今は貴方の左手に収納されています。」


破砕の弓?なんで俺の体に?アクスが持っていたはずじゃ…。


「貴方は私の力を望んだ。そして私は貴方を所有者と認めた。それだけの事です。」


思考で会話が出来ている…?

いやいや、そもそもなんでなんの力もない俺が

認められたんだ?っていうか弓だったろ?

なんで銃に?


「質問が多いので1つずつ回答します。

まず、貴方と私は思考を通じて会話が可能です。

会話の意思が無ければ声は届きませんので、ご安心を。

次に所有権ですが、貴方は医者や騎士の者と違い、私本来の力を引き出せる者と確信しました。

理由はそのまま次の質問の回答になります。

私の姿は持ち主が想像した弓に変形します。

しかし、貴方の想像は異次元のものだった。

この銃という武器。私ですら想像したことのない

弓です。こんな体験をさせてくれた貴方に、力を貸すのは道理。」


なるほど、とはならなかった。

銃って弓じゃねえし。しかしこいつが変形できたってことは、認識の問題か?

他に要因がありそうだが、考えるのはまた今度だ。

なんにせよ、力になってくれるなら幸いだ。


「そろそろ行こう。いい店を予約している。」


「そう、楽しみね。」


俺たちはニックスに完了の報告を終え、

乾杯した。

話を聞きつけたネルドの元患者もどんどん集まり、

すごい勢いで酒が無くなっていく。

嬉し涙、笑い涙、悲し涙、悔し涙。

いろんな想いはあるが、ほとんど皆泣いていた。

前の世界でも仕事終わりの酒は格別に美味い。

だが今回は、いつもより酔いがまわる。




「ちょっと〜、ちゃんと歩きなさいよぉ〜。」


さすがに飲みすぎたなあ。

家まで歩くのがしんどいもんだ。


「ほら、もう着くから。ちゃんとしなさいよ!」


あー、やっと着いた。

って、ん?着いてねえじゃねえか。


「おまえぇ、道間違えてんぞぉ。

ここはからっぽの小屋じゃねえか。

ほら、ちゃんとしろぃ。」


こいつも結構飲んでたからなぁ。

まったく、俺がちゃんとしねえとなぁ。


「ねえ、ケンゴ。

今からすっごく大事なことを聞くわね。

心して応えて。」


ん?真面目な顔になってどうした?

なんかまずいことでも…



「あなた…ちゃんと鍵閉めて出ていった?」



…あ。


からっぽの小屋は、家具も何も全て盗まれた後の

セナの家だった。

お読み頂きありがとうございます。

6話をもちまして、第1章は終了でございます。

次回より、第2章を投稿させていただきます。

よろしくお願い致します。

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