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異世界探偵にご依頼を  作者: 板川松雄


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7話 橋の襲撃者

やばいな…金がない…。

家の責任とらされて宿代も全部俺持ちだったしな。


「とりあえず…犯人を探そう。

もしかしたら、まだ何も売ってねえかもしれねえしな。全部取り返せるかも…。」


「本気で言ってるの?数日で全財産盗ったのよ?

荷物減らすために売ってるに決まってるでしょ!

あー、もう何やってんのよバカぁ!」


返す言葉もない…。


「ま、まずは聞き込みからだな!家の向かいに肉屋あったろ?何か見てるかもしれねえぞ!」


ずっと目が怖いセナを宥めながら肉屋に向かった。


「ごめんくんださーい」


玄関から大声で呼ぶと、出てきたのは幼い女の子だった。


「はぁーい。あれ?お姉ちゃんたち向かいの?」


「ええ、向かいの家の者よ。悪いんだけど、お父さんかお母さん呼んできてもらえる?」


さすがに子供の前でカリカリできないか。

このまま許してくれればいいんだが…。


「あー、パパもママも仕入れに行ってるの。

明日には戻ってくるよ!」


「そっかあ、じゃ他を先にあたるか…。」


そう言って別の人に聞こうと思ったその時。

少女が驚くことを言った。


「あ、あの…お家…大丈夫?」


え?なんで知ってる?

先に飛びついたのはセナだった。


「お嬢ちゃん!何か知ってるの!?」


「え!え…うん。何回かお家に入って物を運んでる人がいたから…お引越ししちゃうのかなって…。」


値千金の情報だ…!

犯人の特徴は暗すぎてわからなかったが、

隣国のシーランド王国の方へ向かったらしい。


「ありがとう!お嬢ちゃん!ほんとにありがとう!」


酒飲んでる時より嬉しそうだな。


「えへへ…。あたしリリィ!またねお姉ちゃん!」


シーランド王国に行くには巨大な川を越えないとならない。一本橋がかかっているが、関所を通らなきゃならないから時間がかかるかもしれない。

だがセナがいれば話もすぐ通るだろうし、

最悪川を凍らせて貰って渡ればいい。

身体強化してセナを抱えて走ればすぐに着く。

出力を抑えれば反動も大したことない。

セナも風魔術で追い風をくれている。


数時間で一本橋まで来た。

だが…関所には誰もいなかった。

困惑している俺たちに、女が声をかけてきた。

「関所なら機能してねえぞ。あたしが暴れたら血相変えて逃げてったよ。人間ってのはあんな弱えのばっかかい?」

妙な女だ。背はでかいし、口は悪いし。

なんか…尻尾みたいなの生えてるし。

てか待て。あいつが座ってるあれ、セナの椅子だ。

よく見たら、他にも盗まれたものが全部ある。


「そう…。あなたが盗っ人ね…。

声掛けてくるなんていい度胸じゃない。

粉々に消し飛ばす前に全部返しなさい!」


俺…離れた方がいいよな。


「盗っ人ぉ!?あたしが!?

おいてめえふざけたこと抜かすな!

この家具全部、ここ通ろうとしたやつから巻き上げたんだよ!」


「同じことじゃない!結局あなたも返す気無いんでしょうが!」


「わかんねえやつだな!ぶん殴らなきゃわかんねえか。あたしはカレン・ニール。竜人だ!」


「泥棒に名乗るほど安い名前じゃないわ。

消し炭になりなさい!」


カレンとセナは戦い始めた。

ついていけない。もっと離れて見てよう。

セナも見たことないくらいでかい氷の魔術を使う。

「混合魔術…ウルテレイドルム!」

「あぶねぇ!…やるなぁ!魔術師!」

地下洞窟であんなのぶっ放さなかったことに感謝した。間違いなく死んでた。

カリンも火と風で応戦する。

破砕の弓で援護しようとも思ったが…

まあ、しなくていいか。


「私も同意見です。警戒は他に向けるべきかと。」


ん?警戒?なにか来てるのか?


「おぉい…。なんだよこれ…。

橋の襲撃者って1人じゃねえの…?

いや、戦ってるってことはどっちか1人か。」


後ろの方を見ると、黒い服を着た男がブツクサ言っている。何だこの男?気だるそうに歩いてるが、

何しに来た?橋の襲撃者って言ってたな…。

念の為隠れていた方がいいか…。


「おーい。」


男が2人に呼びかけるが、気づかない。


「おーい。」


また呼びかける。でもやっぱり気づかない。


「おー…チッ。もう動くな。」


男がそういうと、2人の動きがピタッと止まる。

今何をした?奴は全く動いてない。

なのに2人とも奴に止められた…?


セナとカレンも訳がわからない様子だ。

指1本動かせていない。

この男はなんの魔術を使ったんだ?


「どっちが橋の襲撃者だ?」


襲撃者…多分カレンのことだ。

セナはすぐ理解して、話した。


「こ…こいつよ。この竜人よ。」


「そうか。じゃこいつを連れてく。

じゃあな。」


男は動けないカレンの腕を掴んで、

引きずるようにその場から去ろうとする。


「おい!待て!やめろ!どこに連れてく気だ!?

お前何なんだ!?」


カレンがせめてもの抵抗でひたすら喋る。


「何者?あー…名乗れとか言われたな…。

えーと、シーランド王国の…直属…なんだっけ…」


ずいぶんと返事に困っている様子だ。

お前のことだろうに。


「まあいいや。シーランド王国の

ラノス・オーカーだ。じゃ。」


シーランド王国って隣国じゃないか。

なんでわざわざここに?

だが一番の疑問はそこじゃなかった。

名前を聞いた瞬間、セナとカレンの顔が強張る。

そんなにヤバい奴…なのか?

弓が言ってたのはこいつの事か?


(おい!おい!助けてくれ!)


カレンがアイコンタクトで隠れている俺に助けを求める。


(馬鹿言うな!なんで俺がお前の味方をするんだよ!

助けて欲しけりゃ金だ金!)


ジェスチャーでカレンに伝える。

でも伝わってないようだ。


(あ?なに寄越せって?)


(金だ!金!かーね!)


ジェスチャーを大振りにして伝える。

カレンは少し考えたが、今度はちゃんと伝わった。


「ああ!金か!わかった用意する!

だから助けてくれ!!」


すっごいでっかい声で返事してくれた。


(ば…ばっかぁ……!)


ラノスがじっとこっちを見る。

というか目が合っている。


「お前もグル?」


「そ、そんなわけないじゃ…」


俺も連れてかれた。



ーサバル王国 王城ー


「おい!犯人はそのトカゲだって!

やめ…うわっ!!」

俺とカレンは牢にぶち込まれた。

冤罪だろ。ラノスに必死に訴える。


「ふっざけんなよ!お前!俺は無関係だって!

こんなバカみてえな女知らねえんだよ!」


「でも金要求したんだろ?なら協力者だよ。」


ラノスはド正論で返して来た。


「いやいや、そんな事やってな…」


俺の言葉に割り込んでカレンが騒ぐ。


「そうだ!言ってたぞ!金と体で支払えば助けるって!そうだよな!ボス!」


てんっめぇふざけんなよ!?何余計な脚色までしてんだ!誰がボスだクソトカゲ!


「…もう決まりだな…。」


ため息をついてラノスが部屋を出ていこうとする。


「おい!待て!どこ行くんだ!まだ俺の話を…」


扉が閉まる。

…最悪だ…。なんでこんな目に…。

しかも向かいの牢部屋って…。


「何…やってるんですか?君は…。」


アクスが馬鹿を見る目で見てくる。

やめて!見ないで!すっごい恥ずかしい!

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