シュークリームと栄養ドリンク≪桜咲≫
(桜咲)
「ハイ終了!ペン置いて答案は裏返しねー!」
この科目のテストで2学期の期末テストは終了。
「答案は後ろから前に渡して、一番前の子は先生までって来てね」
さぁ、ここから怒涛の日々が始まる。
採点に通知表作成、親も来ての通知表渡し、3学期の準備。
ゆっくりできるのも今日まで。
答案をまとめて職員室に戻る桃子。
咲良も職員室に向かってきた。
「やっと終わったけど、始まるね…」
咲良とお茶を飲みながら、一休み。
「そうだね、通知表渡しまでにやることいっぱいだしね。それに私、生活指導で夕方は補導員の人たちと巡回。桃子は?」
「今日は早めに帰ろうかな?」
「たまには良いんじゃない。ゆっくりしなよ。」
咲良も言ってるし、今日は早く帰ってゆっくりしよう。
ピロリローン・ピロリローン
イートインを見る。
この時間に居るはずのない人を探す。
今日は栄養ドリンクを飲むほどの疲れは、無い。
シュークリームとコーヒーで良い。
イートインで時間を贅沢に使い、来るはずのない人を待ってみる。
昼は電車の本数も少ないし、次まで時間はまだある。
待ってみる。
昼のデイリーリーフの景色は簡単には変わらない。
電車の時間まであと15分。
来るわけないか…
桃子はゆっくりと歩きだし、駅に向かった。
桃子が駅に向かった後、ほんの少しの時間差で咲良が補導員を引き連れ、デイリーリーフに現れた。
「ちょっと待ってて。」
ベテランそうな女性補導員は、店長に声を掛けに行った。
親しく話をしている様子から、ここへ寄るのもいつもの巡回ルートって感じる。
コンビニの人と仲良くなれば、桃子に情報提供できる。
ちょっとした探偵気分。
咲良はこの業務が楽しくなってきた。
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昭和の時代。
学校が、生徒が、荒れていた時があったってことを聞いたことがある。
生徒が荒れるにつれ、校則が厳しくなる。
校則が厳しくなると破る者が増える。
悪循環。
制服は長かったり、短かったり、ズボンはダブダブ。
学生カバンはぺっちゃんこ。
帰りの買い食いも禁止。
ポケベルも携帯も無かった時代、生徒同士が連絡を取り合うために自然と集まっていた商店。
商店にはテーブルゲームが数台あり、それを囲んで喋っていた。
バイクに乗り捕まる者。
繁華街のゲームセンターにたむろする者。
学校の窓ガラスが割られたり。
喫煙に飲酒…
先生は生徒にどう対峙して良いか悩む日々。
そんな時代だったそうだ。
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「あ!田中だ。ヤベー」
生徒が数名入ってきた。
咲良は生徒から苗字で呼ばれることが多い。
「ヤベーじゃないでしょ。これから塾?お家に帰るの?」
「みんな一緒な塾だから、ちょっと時間つぶしてから行くんだ。」
「暇つぶしてる間に悪いことすんなよ。ところでさ、君たちさ、先生のこと呼び捨てしただろ?」
「買い物して帰りまーす。さようならー。」
可愛い生徒たち。
少しでも先生と喋れる子なら、そんなに悪いことはしないだろう。
「店長さん、うちの生徒、迷惑かけてませんか?」
咲良はさっきの生徒をきっかけに、店長と話してみることに。
「ええ、良い子ばかりですよ。ちゃんと、ありがとうって言える子ばかり。無駄に長くいる子もいないしね。」
「良かったです。うちの生徒が迷惑かけたらすぐに連絡くださいね。」
「大丈夫だと思うけど、何かあったらね。」
ここへくる子は良い子たちばかりのよう。
それに店長と話せたし、これから桃子のために情報収集ができそう。
「お疲れ様です、おはようございます。」
あの子がやってきた。
「あ、あの子、アルバイトさんですね?」
店長に聞いてみた。
「そう、大学生のアルバイト。今日はちょっと早めに来たみたい。だいたい4時か5時から10時まで、入ってもらってるんだ。」
「1年生?ですか?」
「ううん、4年生。あの子だけだよ、1年からずーっとコンスタントにシフトに入ってくれるの。みんな試験だからとか、卒論で忙しくてとか、で休むし。3年になったら就活で辞めちゃうこと多いし。」
「いい子ですね!」
「ね、こんないい子なのに彼氏は居ないんだって。今の男の子たちはどこに目を付けてんだろうね。」
「ほんとですね。」
この時間までにはそれらしいオジサンは来なかった。
けど、彼女の情報は得られた。
大学4年生で彼氏なし。
シフトの時間は4時か5時から10時。
週に何回か勤務してる。
桃子、この情報欲しいかな?
帰ってからSNSで報告。
---お疲れ様、桃子。今日、生活指導で補導員とコンビニに行ったんだ...---




