10-2【佐藤雄介の視点】
田村が優子の告白に感動している様子を見て、俺は複雑な気持ちになった。嬉しさと、そして深い悲しみ。俺たちはもう生きていない。でも、こうして友情を確認し合えることの奇跡。
俺のターンが来た。
「田村、今度は俺の番だ」俺は立ち上がった。「お前に言いたいことがある」
高校時代、俺は生徒会長として皆をまとめる役割を担っていた。でも、本当は田村のような人間になりたかった。彼の誠実さ、真面目さ、そして他人を思いやる心。
「お前は知らないかもしれないが、俺はお前を尊敬していた」俺はテーブルに手を置いた。「生徒会の仕事で困ったとき、いつも『田村ならどうするだろう』って考えたんだ」
感情アルゴリズムが、俺に適切な表情を作らせる。
しかし、この想いは確実に本物だった。
「お前は決して目立つタイプじゃなかった。でも、お前には芯があった。ブレない何かがあった。俺は派手で人気者だったけど、内心はいつも不安だった」
田村の表情が驚きに変わった。俺が不安を抱えていたなんて、思いもしなかっただろう。
「社会人になって、その不安は現実になった。プレッシャーに押し潰されて、本来の自分を見失った。でも、お前のことを思い出すたびに、正しい道に戻ろうと思えた」
俺は田村の前に歩いて行った。
「最期の瞬間まで、俺はお前のことを考えていた。『田村だったら、こんな風に諦めないだろう』って。お前の存在が、俺を最後まで人間らしくしてくれた」
俺は田村の肩に手を置いた。システムが再現する触覚は完璧だった。
「ありがとう、田村。お前が友達でいてくれたから、俺は自分を誇りに思える。たとえ死んでしまっても」
田村が俺の手を握った。「雄介…俺こそ、君から多くのことを学んだ。リーダーシップ、責任感、皆を思いやる心」
「互いに支え合ってたんだな、俺たち」俺は笑った。「これが本当の友情ってやつだ」




