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もういない子だれだ  作者: 相生


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10-3【鈴木美香の視点】

雄介くんと健一くんの友情の確認を見て、私の心は温かくなった。でも同時に、切なさも感じていた。私たちの時間は限られている。この美しい瞬間も、やがて終わりを迎える。

私の番が来た。芸術家として、この瞬間をどう表現すればいいのだろう。

「健一くん、私からも話させて」私は静かに立ち上がった。


私の人格継承には、生前の芸術的感性が完全に移植されている。色彩への敏感さ、美への憧憬、創造への情熱。それらが、今もデジタル空間で脈動している。

「あなたは私の芸術を理解してくれた。高校の文化祭で、私の絵を見て『美しい』って言ってくれたわね」

あの時のことを思い出す。私が描いた風景画を、健一くんが真剣に見つめていた。他の人は通り過ぎるだけだったのに、彼だけが立ち止まって、じっくりと見てくれた。

「『この空の色、本当に綺麗だね』って言ってくれた。その時、私は確信したの。この人は本物の美を理解できる人だって」

私は想像の中で絵筆を握る。デジタル空間では、思考するだけで美しい色彩が空中に描き出される。健一くんの周りに、虹色の光が舞い踊る。


「フリーのイラストレーターになったのも、あなたのその言葉があったから。『美香ちゃんの絵は、人の心を温かくする』って」

病気になって、思うように絵が描けなくなった時のことを思い出す。絶望の淵にいた私を支えてくれたのは、健一くんとの思い出だった。


「病院のベッドで、最後の作品を描いてたの。皆との思い出を描いた絵。でも、一番大切だったのは、あなたに私の芸術的な魂を託すことだった」

私は健一くんに近づいた。

「健一くん、あなたには美を見る目がある。創造されたものの価値を理解する心がある。私が死んでも、私の芸術への愛を受け継いでほしい」

私は空中に描いた光の絵を、健一くんに向けて送る。それは私の心の形だった。


「美しいものを大切にして。創造する喜びを忘れないで。そして、人の心を温かくする何かを、あなたも作り出して」

健一くんが光の絵に手を伸ばした。触れた瞬間、光は彼の心の中に溶け込んでいく。

「美香…君の絵は本当に美しかった。これからも、君が教えてくれた美の心を大切にする」

私は微笑んだ。これで、私の芸術的な遺志は確実に継承された。

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