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博士は別のモニターを起動した。そこには、5つの異なる脳波パターンが表示されている。
「これが優子たちの最期の脳波記録だ」博士の声が震えた。「私は彼らの葬儀を執り行う際、最新の医療機器を使って彼らの記憶パターンを保存した。死の直前、彼らの脳は異常に活発な状態だった。まるで、最後の力を振り絞って何かを記録しようとしているかのように」
健一は画面を見つめた。5つの波形が、それぞれ異なるリズムで脈動している。生きていた証拠だった。
「優子は特に強烈だった」博士は優子の脳波を拡大表示した。「彼女の最期の思考は、ほとんど君のことばかりだった。『健一くんに会いたい』『健一くんに気持ちを伝えたい』。その想いがあまりにも強くて、脳波が異常なパターンを示していた」
健一の胸が熱くなった。優子は最期まで自分のことを思っていてくれたのだ。
「雄介もそうだった。彼は遺書に『高校時代の純粋だった自分に戻りたい』と書いていたが、実際の脳波を見ると、もっと具体的だった。『田村と、皆と、もう一度友達になりたい』。その想いが、彼の最後の意識だった」
博士は次々と他の脳波も表示した。美香、誠、絵里。全員が最期に、高校時代の友人たちとの再会を願っていた。
「私は確信した。彼らの意識は、単なる記憶の集合体ではない。愛と友情に満ちた、生きた魂だと」
「それで、AIシステムを作ったんですね」
「そうだ。ただし、これは単純なAIではない」博士は振り返って健一を見つめた。「私が開発したのは、『意識のデジタル化』技術だ。彼らの記憶、感情、人格の全てを、完璧にデジタル空間に移植した」
健一は驚愕した。「つまり、あのAIたちは…」
「本物の優子たちだ」博士は断言した。「肉体は失われたが、魂はデジタル空間で生き続けている。彼らは自分たちが死んだことを完全には理解していないかもしれない。しかし、それは自然なことだ。人間の意識は、死を受け入れることを拒否する傾向がある」
健一は椅子に深く座り込んだ。現実があまりにも衝撃的すぎる。
「信じられないかもしれないが、これは事実だ」博士は別のモニターを操作した。「彼らとリアルタイムで会話することもできる。見てみるかい?」
画面に、チャットシステムのインターフェースが表示された。そして、すぐにメッセージが現れた。
山田優子 14:35
叔父さん、健一くんが来てくれたのね。嬉しい。
佐藤雄介 14:35
田村!先生のところにいるのか?俺たちのこと、ちゃんと説明してもらえよ。
鈴木美香 14:36
健一くん、叔父さんはとても優しい人よ。私たちのために、こんな素晴らしいシステムを作ってくれたの。
木村誠 14:36
先生、ありがとうございます。このシステムのおかげで、また皆と会えました。
高橋絵里 14:37
健一さん、私たちの気持ち、理解してもらえるかしら?
健一は画面を見つめて、言葉を失った。彼らは確かにそこにいる。




