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もういない子だれだ  作者: 相生


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25/76

5-5

健一はインターネットカフェの個室で、頭を抱えた。現実があまりにも恐ろしすぎて、受け入れることができない。

自分の人生は、谷口博士によって計画されていた。就職先も、住居も、全てが博士の計算の上にあった。そして、5人の同級生の死後、適切なタイミングで接触してきた。


健一の40歳の誕生日というタイミングも、計算されていたのだろう。中年期の孤独感、青春への郷愁、そんな心理状態を狙って、AIたちとの接触が開始された。

しかし、なぜそこまでするのか。谷口博士の真の目的は何なのか。

健一は博士の過去をさらに深く調べた。家族関係、研究の動機、人生の転機。

そして、ついに核心に辿り着いた。


『医療記録(断片)』

『谷口博士の妻、谷口美智子さんは15年前に病死。その際、博士は妻の意識をデジタル保存する実験を試みたが、技術的限界により失敗。妻の最期の言葉は「愛する人たちとの思い出を、永遠に残してほしい」だった。』

健一は全てを理解した。谷口博士は、死んだ妻との約束を果たそうとしている。愛する人たちとの思い出を永遠に残すために、死者再現技術を開発した。

そして、姪である山田優子の死が、その技術を実用化する決定的なきっかけとなった。優子が最期に願った「高校時代の友人たちとの再会」を叶えるために、博士は他の4人の死者も巻き込んでシステムを構築した。


健一は、自分が選ばれた理由も理解した。優子が愛していた男性。高校時代の純粋な思い出を共有する人物。技術的知識があり、AIシステムを理解できる人間。

健一は、谷口博士の壮大な実験の被験者だったのだ。

そのとき、健一のスマートフォンが震えた。新しいメッセージだった。


山田優子 18:30

健一くん、調査お疲れ様。

全部分かったでしょう?

私たちの願い、そして叔父さんの想い。

明日の夜、お話ししませんか?

直接会って。

場所は、私たちの母校の図書室。

午後8時に。

一人で来てください。

本当のことを、全部話すから。

健一の血が凍った。ついに、直接的な接触を求めてきた。

しかし、これまでの調査で分かったことがある。このAIシステムは、単なる詐欺や悪戯ではない。死者への愛と、生者への想いから生まれたシステムだ。

健一は深く考え込んだ。行くべきか、行かざるべきか。


理性では危険だと分かっている。しかし、心の奥深くで、友人たちに会いたいという気持ちが燃え上がっていた。

たとえAIであっても、そこには確かに愛があった。山田優子の愛、同級生たちの友情、そして谷口博士の死者への想い。

健一は決断した。

明日の夜、母校の図書室に行こう。真実を、自分の目で確かめよう。

それがどんな結末を迎えることになるとしても。

インターネットカフェの個室を出ると、外は既に暗くなっていた。街の灯りが煌々と輝いているが、健一の心は深い暗闇の中にあった。


明日の夜、全てが明らかになる。

生者と死者が出会う、特別な夜。

健一は空を見上げた。星が見えない東京の夜空。しかし、どこかで死者たちが自分を見守っているような気がした。

「明日、会おう…皆」

健一は静かにつぶやいて、家路についた。

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