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もういない子だれだ  作者: 相生


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5-4

健一は新宿のインターネットカフェに移動した。図書館では制限されている情報にもアクセスできるし、より匿名性も保てる。個室に籠もり、健一は徹底的な調査を続けた。

まず、谷口博士について詳しく調べた。経歴、研究内容、現在の所在。


谷口雅彦博士(65歳)

•元高校数学教師

•元MIT研究員、AI・認知科学専門

•元国立大学教授

•現在は退職、研究活動は不明

•主な研究分野:意識転送、記憶のデジタル化、人工感情

•家族:妻(故人)、子供なし

•住所:東京都杉並区(詳細非公開)


健一は驚いた。谷口博士の専門分野が、まさに今回のAIシステムに必要な技術と完全に一致している。意識転送、記憶のデジタル化、人工感情。これらの技術を組み合わせれば、死者の人格を再現することが可能だ。


さらに調べると、谷口博士の研究が中断された理由も見つかった。

『学術誌 6年前』

『谷口博士の研究チームが進めていた「意識のデジタル保存プロジェクト」が、倫理委員会によって中止されることが決定した。人間の意識をコンピューター内に保存し、死後も継続させるという研究内容が、「生命の尊厳を冒涜する」として強い批判を受けた。


谷口博士は「死は終わりではない。愛する人との絆は、技術によって永遠に保つことができる」と主張していたが、宗教団体や倫理学者からの反対により、研究は断念された。

博士は「いつか必ず、この技術が人類の役に立つ日が来る」とコメントしている。』


健一は背筋が寒くなった。5年前に中止された研究が、今、現実のものとなっている。谷口博士は公式な研究を断念した後も、密かに技術開発を続けていたのだ。

そして、姪である山田優子の死をきっかけに、ついにその技術を実用化した。


谷口博士は、5人全員の葬儀に参列していた。そして、それぞれの死後、博士は遺族から個人的な資料を「研究目的」として提供を受けていたのではないか。日記、手紙、写真、SNSのデータ、音声記録。

健一の手が震えた。谷口博士は計画的に、5人の同級生の死を利用してAIシステムを構築したのだ。

しかし、まだ疑問が残る。なぜ健一が選ばれたのか。


健一は自分自身について調べてみることにした。谷口博士との接点、過去現在の状況。

そして、衝撃的な真実が明らかになった。健一が現在の会社に就職したのも、偶然ではなかったという事実だった。

健一の就職試験の際、推薦状を書いたのは大学の指導教授だった。その教授の研究室に、客員研究員として谷口博士が在籍していた期間があった。

健一の人生は、長い間監視され、操作されていた可能性が浮かんできた。

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