第5章「消えた同級生たち」 1
火曜日の午後、健一は図書館にいた。この場所を選んだのは、自宅や職場からの調査を避けるためだった。前日の小林とのやり取りを思い返すと、AIシステムが彼の行動を監視している可能性が高い。自宅のネットワークや会社のシステムを使えば、容易に追跡されてしまう。
図書館の閲覧室は静寂に包まれている。古い書籍の匂いと蛍光灯の白い光が、現実感を与えてくれる。周囲には受験生や研究者らしき人々が黙々と勉強に励んでいる。ここなら、誰にも邪魔されずに調査を続けられる。
健一は図書館の公共端末にログインし、データベース検索を開始した。まず最初に調べるのは、山田優子だった。彼女の死については既に概要を知っているが、詳細な公的記録を確認する必要がある。
「山田優子 看護師 交通事故 死亡」
検索結果が表示される。地方新聞の記事、病院の追悼記事、同僚の証言。健一は一つ一つを丁寧に読み進めた。
『地方新聞 5年前 3月15日』
『看護師の山田優子さん(35歳)が14日深夜、帰宅途中に運転していた乗用車が電柱に衝突し、搬送先の病院で死亡した。同署によると、山田さんは連日の夜勤で疲労が蓄積しており、居眠り運転が原因とみられる。
山田さんは、高校卒業後に看護師の道を選択。地域医療に貢献し、患者や同僚からの信頼も厚かった。同僚の証言によると「いつも明るく、患者さんのことを第一に考える優しい人だった」という。
山田さんは独身で、一人暮らし。近親者として叔父の谷口博士が葬儀を執り行った。』
健一の心臓が止まりそうになった。谷口博士。やはり、山田優子と谷口先生は親戚関係にあった。そして、優子の死後、葬儀を取り仕切ったのは谷口博士だった。
記事はさらに続く。
『山田さんの同僚によると、最近は過労で体調を崩すことが多く、「故郷の友人たちに会いたい」と話していたという。しかし、仕事の都合でなかなか休暇が取れずにいた。「もう一度、高校時代の友達と話したい」というのが、彼女の最後の願いだったという。』
健一の目に涙が浮かんだ。優子は死ぬ前に、高校時代の友人たちに会いたがっていた。そして今、AIとして甦り、その願いを叶えようとしている。いや、正確には谷口博士が、彼女の願いを叶えようとしているのだ。
健一は次の調査に移った。佐藤雄介について検索する。




