皇くくり、←想像していた展開、現実の展開→。
短いけど、出せる範囲の部分だけ。
ど、どうしよう……。
勢いだけでホテルまで来てしまいました。
私がこんな事では、えみりお姉ちゃんに対して「もっと考えてから行動して」なんて言えません。
「くくりちゃん」
「ひゃっ、ひゃい!」
私はあくあ様に話しかけられて体をビクッと動かす。
お風呂場から出てきたあくあ様はにこりと笑う。
「お風呂沸いたけど、一緒に入る?」
「べ、別々で!」
私はそう言って、お風呂の中に1人で駆け込む。
し……失敗したぁ。
普通こういう時は、女性が男性に向かって「先にシャワー浴びてこいよ」と言えるくらいの余裕がなければいけません。それなのに私は、あくあ様に意思を確認する余裕もなく脱衣所に逃げ込んでしまいました。
「はあ……」
なんで今日に限って子供っぽいのを穿いてきたんだろう。
こんな事になるって知ってたら、ミルクディッパーのみんなとチュチュエミリに行った時に買ったアクアシンフォニアシリーズのダマスク柄の大人びた黒いやつか、えみりお姉ちゃんに買ってもらったアンフィニウムのエンブロイダリーレースを使ったふんわりギャザーで、私のカラーであるラベンダーとあくあ様のカラーであるホワイト色の両方があしらわれたのを穿いてきたのに!!
私が脱衣所で絶望していると、天井から何かが落ちてきた。
「きゃっ!? ゴ、ゴキブリ!?」
「いいえ、ただの忍者で候……」
り、りん!? どうしてこんなところに!?
私が呆気に取られていると、りんは手に持った紙袋を私に差し出す。
「聖女様からで候」
「えみりお姉ちゃんから……?」
私に紙袋を私はりんは天井に戻ると、ちゃんと蓋を閉めてから帰っていた。
一体、この紙袋には何が入っているんでしょう……。
私がおそるおそる紙袋を開けると、えみりお姉ちゃんが買ってくれたのが入っていました。
え、えみりお姉ちゃーーーーーーーーーーん!
私は紙袋を握りしめると、えみりお姉ちゃんと紙袋を届けてくれたりんに深く感謝をする。
「あ……下に何かメモが入ってる」
私はメモを手に取ると、そこに書かれていた文章へと視線を落とす。
【くくり……いや、始まりの616。これは、お前が始めた物語だろ。だから、ちゃんとお前も幸せになってこい】
えみりお姉ちゃん……。
私がちゃんと始まりの616だと知っていたのね。
目を潤ませた私は目線を下げる。
【追伸、みんなで話し合った結果、楓パイセン特製のゴリゴリカレーは一晩寝かせて熟成させる事にしました。今日はみんなでお前の代わりにお赤飯を食べます! ちゃんと余った分は、赤飯のおにぎりにして明日のくくりのお弁当に入れておきますね。ぐへへ!!】
サイッ! テー!!
さっき自然と流れそうになった涙が、一瞬で引っ込んじゃったじゃない!!
……でも、そのおかげで少し冷静になれたかも。
急にスンとした私は、浴室に向かうと入念に自分の体を磨き上げる。
うん、これで大丈夫。
「お、お待たせしました」
「じゃあ、次は俺が入ってくるから少し待ってて」
そっか……私、これから本当にあくあ様と……。
私は高鳴る胸のドキドキを抑え込みながらベッドに腰掛ける。
「お待たせ、くくりちゃん」
「あっ! は、はい!!」
あくあ様……お風呂から出るのが早いよ。
こっちはまだ心の準備もできてないのに……。
私はあくあ様との夢みたいな時間を過ごす。
「くくりちゃん、最近あまり寝てなかったでしょ」
あくあ様は私に腕枕すると、私がメイクで隠していたクマの部分を指でなぞる。
そっか……あくあ様は私の事に気がついて、ううん、見てくれていたんだ。
「くくりちゃんは優しいから、たとえ華族がなくなったとしてもみんなの事を考えてくれてるんだって俺は知ってるよ」
あくあ様は私の顔に優しく触れる。
まるで、隠した仮面の内側を覗かれてるみたいだった。
「だから俺やえみり、揚羽さんやメアリーおばあちゃんが無理するなって言っても、君は無理しちゃうんだろうな」
ええ、そうよ。
本当は悪役ぶってるだけ。
本当は、私だって全員を救いたい。
この感情がたとえ皇に生まれた使命に駆られていたとしても、私はこの国の全員を救う。
そう、あくあ様が2年前に初めて世界に宣戦布告したその日から私の目標は決まっていた。
「大丈夫……君の想いは全部俺が背負うから」
ありがとう、あくあ様……。
でも、あくあ様はそうじゃないでしょ。
「君の想いも、みんなの想いも全部俺が背負うよ。任せろ、この星には俺がいるんだ。絶対に、俺がどうにかする」
そう、それでこそあくあ様です。
私が望むのは私だけのあくあ様じゃない。みんなのあくあ様なんです。
だから……。
「だから、今はゆっくりとお休み」
私のおでこに温かい感覚がじんわりと広がっていく。
私はその優しさに包み込まれるようにして、楽しくワクワクするような夢の中へと落ちていた。
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