表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねがいごと  作者: 流星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
82/83

第八十四話(アスラン)

 リアがラルフの元へ行ってしまってから十年が過ぎた。


 この十年は、国を立て直す事に力を注いできたアスランにとって、あっという間だった。

 リリアはもう戻って来ないかもしれないが、リリアが幸せに暮らしているのなら、それで良い。

 アスランはそう思えるようになっていた。



 そんなある日、リリアが三人の悪魔と一緒に、この世界へ戻って来た。


 十年前と変わらない姿で。


「ラルフ、本当にリリアを返しに来たのか?」


「ああ。それがリリアの望みだ」


 アスランは信じられなかった。


 ずっと自分の感情を殺して生きてきたリリアが、自分で決めた事から逃げて帰って来るだろうか。


 もちろんアスランにとって、リリアが戻って来てくれるのは嬉しい事だ。

 リリアが帰ってくる事だけを考えて、国を守り続けてきた。


 ラルフはリリアがこの世界へ戻る事を、始めから知っていたのだろうか。

 知っていた上でリリアを預かっていたのだろうか。


「ラルフ、お前は本当に悪魔なのか?」


「ああ。人間を不幸にするために生まれてきた悪魔だ」


 ラルフは今まで見せたこともない表情で笑い、城の庭園へ消えていった。



 アスランはリリアの部屋へ向かった。

 リリアは回廊の途中で銀髪の悪魔と一緒にいた。


「リリア!」


 アスランの声に振り向いたリリアの顔は涙に濡れていた。


 王に冷たい態度を取られた時もリリアの兄が死んだ時も世間から「災厄の王女」と呼ばれているのを知った時も泣かなかったリリアが泣いている。


「リリア、何故お前はあそこで泣いていた」


「アスラン。私はこの世界に戻ってきたわけではないの。

 父様やアスランに、この世界に二度と戻らない事を伝えに来ただけ」


「リリア、それでも俺はお前を待つ。

 お前がいつ戻ってきても良いように、お前の居場所は作っておく」


「ありがとう。さようなら、アスラン」


 リリアは、アスランが見たこともない、少し大人びた表情で微笑み、席を外した。



 アスランは庭に出て、静かに空を眺めているラルフを見つけた。


「ラルフ。リリアはこの世界に別れを告げに来ただけだ。

 結局お前には敵わないな……」


「いや。俺は悪魔だ。人間を幸せには出来ない。

 向こうの世界でリリアを泣かせてばかりいた」


「それでもリリアはお前を選んだ。

 人間は笑ったり泣いたり悩んだり苦しみながら生きていく。

 それが人間の幸せなんだ。

 リリアは俺といる間、全ての感情を殺して生きてきた。

 だからラルフ。もう一度リリアをお前の世界へ連れて行って欲しい」


「……ああ」


 そしてリリアは、再びアスランに別れを告げた。


 リリアはもう二度とこの世界へ戻って来る事はないだろう。

 それでもアスランは後悔しなかった。

 ラルフの側で、笑ったり泣いたり悩んだり苦しんだり……。

 人間らしく生きて欲しかった。


 それにアスランは、やるべき仕事が山積みだ。


「ドニー。これから一緒に外の世界を見に行こう。

 豊かな国や貧しい国、戦争が行われている国……。

 そこに生きている人々の生活を知り、その人の立場になって物事を考えられる人間にならなければならない」


「はい。

 悪魔の世界へ行ってしまった、人間のお姫様のように……。でしょう?」


「ああ。そうだ」


 アスランは笑いながらドニーの頭を撫でた。


 本当はリリアと一緒に行くべきだった。

 しかし過去へは戻れない。

 リリアの幸せを、この世界で祈りながら生きていく。

 それがアスランの出した結論だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ