第二十六話
その日、二つの葬儀が行われた。
一つは波打ち際で見つかった白髪のローザの、もう一つは人形のバイオレットの。
この世界で初めての死者に、この世界に住む者達が驚愕した。
ローザの葬儀にリリアを連れて行くわけにはいかないと、ハイドだけが参列することになった。
リリアは白い花を付ける木の下に穴を掘ってもらい、炭の塊になってしまったバイオレットを白いレースのハンカチに包んで埋めた。
その様子をラルフとビンセントが見守った。
三人だけの静かな葬儀だった。
「ごめんね、バイオレット。ごめんね……」
風が吹き、辺りの木々が揺れた。
ラルフはリリアを包み込むように抱きしめた。
「リリア。お前に名前を付けられた人形達は、きっと喜んでいたに違いない」
リリアはうつむいたまま頷き、涙をこぼした。
「日が暮れると寒くなる。屋敷に戻ろう」
リリアはラルフに抱えられ、屋敷の中に入った。
ビンセントは盛り上がった土の上に白い花を一輪置いて、二人の後に続いた。
ローザの葬儀はローザの屋敷で行われた。
葬儀といっても儀式は何もなく、生前仲の良かった友人が集まり、棺の中にローザが好きだった真っ赤な薔薇を手向けていった。
棺の中を見た者達は、ローザの変わり果てた姿に驚き、何故こんな姿になってしまったのか、口々に話し始めた。
ハイドはローザの棺に歩み寄り、ローザの頬を優しく撫でた。
棺の中の赤い薔薇がローザの白髪を隠し、自慢の赤髪に戻ったように見えた。
「ローザ……。お前は永遠の美しさを手に入れて、それで充分だったんじゃないのか?
何故、今さらリリアと張り合おうとしたんだ? 何故……」
いつも自信に満ち溢れていたローザ。
ローザはこうなることを覚悟の上でリリアを襲ったのだろうか。
「棺はどうする? 人間の世界なら土葬や水葬があるが……」
参列者たちは頭を悩ませた。
ハイドは少し考えて、
「火葬にしてくれないか?
ローザはこの姿のまま葬られたくないだろう」
と、提案した。
「そうね。ローザなら、お婆さんの姿のまま土の中で眠らされるなんて、きっと嫌がるわ」
参列者たちの意見が一致すると、参列者たちは崖の上の海がよく見える場所に穴を掘り、棺を入れた。
棺の上にも大量の赤い薔薇を敷き詰め、ローザが好きだった赤いワインを流し込んだ。
ハイドが火を入れると、棺はたちまち業火に包まれた。
「この世界で死んだら、次は何処へ行くのかしら」
参列者の一人が呟いた。
「ローザのことだ。
もっといい場所を見つけて、楽しくやっていくだろう」
棺が燃え尽きる頃、夕日で空も海も真っ赤に染まった。
参列者たちが帰ったあと、ハイドは一人、墓の前でワインを飲んだ。
「お前も飲め」
ハイドはローザの墓にワインを注ぎ、静かにその場を後にした。




