第二十五話
その夜、ローザは鏡の前で髪をとかしていた。
ローザは毎晩、鏡台の椅子に座って肌の手入れをするのが日課だ。
ワインを飲みながら身体中にボディークリームを塗り込み、丁寧に髪の毛をブラッシングする。
肌も爪も髪の毛も永遠の美しさを保ち、自分でもうっとりとしてしまう。
今日のローザは、いつも以上に機嫌が良かった。
「フフ……。今頃ラルフもハイドも嘆いている頃ね。
明日はこの世界で初めての葬儀が行われるわ」
ローザはグラスにワインを注ぎ、ゆっくりと飲み干した。
鏡の前のローザは頬に赤みを帯び、ますます美しく見えた。
「……!」
ローザは首辺りに見たこともない小さなシミを見つけた。
「何これ……?」
シミを確認しようと鏡に近付くと、そのシミはみるみる大きく広がっていった。
頬は垂れ、無数の皺がローザの顔に刻まれていく。
「……ヒッ!」
ローザ自慢の、ウエーブのかかった赤い髪も抜け落ちてゆき、あっという間に白髪になった。
「ローザ?」
部屋の外からハイドの声がした。
ハイドは、馬車の中でのローザの最後の言葉がどうしても気になって、馬を走らせ、ローザの屋敷まで来ていたのだ。
「イヤァァ……! 来ないで!」
「ローザ!」
ハイドがローザの部屋に飛び込んだ。
「見ないで!」
ローザは近くにあったガウンで体を包み、窓から飛び降りた。
「ローザ!」
ローザの屋敷は窓から海がよく見えるように、崖の上に建っていた。
「ローザ!」
ハイドは慌ててローザが飛び降りた窓からローザを探したが、ローザの姿はなく、波が崖にぶつかる音だけが響いていた。




