第二十四話
リリアはベッドの上で意識を戻した。
いつもより天井が高く、リリアのベッドでないことは分かったが、首が痛くて起き上がることも辺りを見回すこともできない。
「リリア……」
心配そうな顔をしたラルフが、リリアの顔を覗き込んだ。
「……ここは?」
「俺の部屋だ」
ラルフはリリアの隣に添うように横になり、リリアの首に手を当てていた。
「バイオレット……。バイオレットは?」
「あの人形か? 今、他の人形に片付けさせている」
「捨てないで! お願い……」
リリアは仰向けになったまま、涙をボロボロこぼした。
「バイオレットは泣いていた……。
私の首を絞めながら泣いていたわ」
「リリア、あれは人形だ。泣いたりはしない。
人形を動かすためのオイルか何かが漏れただけだ」
「ううん。一瞬だけど手の力を緩めたの。本当よ」
「動きが悪くなったからだろう」
「違う……。違うの」
「リリア、落ち着け。
人形は炭の塊になってしまったが、お前が元気になるまで捨てたりはしない」
リリアが泣き出した。
「私のせいでバイオレットが死んだ。
私は……。私に関わるもの全てに災いを与えてしまう」
「リリア」
「ラルフ。
ラルフにだって、いつ災いが降りかかるか分からないわ。
私のせいで……、全部私のせいで……」
「リリア」
「……!」
ラルフはリリアの口を塞ぐようにキスをした。
リリアは驚きのあまり目を見開いたまま固まった。
「リリア。災いなら俺が全て跳ね返す。
まだ結婚はしていないが、今日から俺の部屋で眠ればいい」
リリアは今の出来事が衝撃的すぎて、ラルフの言葉が頭に入らないまま小さくうなずいた。
リリアは心臓がドキドキしていた。
夕食を摂った後、ラルフの部屋に備え付けられたシャワーを浴びてラルフのベッドへ行く。
ラルフはベッドで本を読みながら、リリアが来るのを待っていた。
リリアは自分からラルフのいるベッドに入る勇気がなくて、ベッドの前で立ちすくんでいた。
その様子を見たラルフは小さく笑い、読みかけの本を閉じて横になった。
「リリア、ここへおいで」
「……」
ラルフにじっと見つめられると、ますますベッドに入りづらくなる。
「フッ……。何もしないから」
リリアがゆっくりと歩み寄り、ベッドの側まで行くと、いきなりラルフがリリアを抱き寄せ、ベッドに引きずり込んだ。
「……!」
ベッドの中は、ラルフとリリアの二人だけの世界になった。
「リリア、俺の方に向いて。顔が見えない」
リリアはラルフの方に体を向けたが、恥ずかしくて目は合わせられなかった。
ラルフは、そんなリリアを抱き寄せて、頬や首筋にキスをした。
リリアは、ぎゅっと目を閉じた。
「リリア、俺が怖いか?」
リリアは目を閉じたまま、首を横に振った。
ラルフはリリアの頭を優しく撫でる。
「リリア。朝までずっと側にいるから、安心して眠れ」
リリアは胸がドキドキして眠れそうになかったが、ラルフの甘い香りと、頭を撫でる優しい手に緊張が解けていき、いつの間にか眠ってしまった。




