表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ねがいごと  作者: 流星


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/83

第二十三話

 ある朝、リリアは人形のバイオレットに髪を結ってもらっていた。


 今日は久しぶりに水竜に会いに行く。


 リリアが髪を結ってもらっている間、ラルフはお茶と昼食の準備をし、ハイドはリリアの支度が終わるまで部屋の外で待っていた。


「バイオレット、今日は水竜に会いに行くの」


「……」


 人形のバイオレットは相変わらず黙々と作業を続けるが、リリアは声を掛けるのが日課になっていた。


「ギィィ……、ギギギ……」


 突然、バイオレットから不気味な音が鳴り響いた。


「どうしたの? バイオレット」


 リリアが鏡越しにバイオレットの顔を覗くと、バイオレットは白目を剥いてカタカタと動き出した。


「バイオレッ……!」


 バイオレットは、突然リリアの口をふさぎ、リリアを押し倒した。

 仰向けになたリリアに馬乗りになったバイオレットは、リリアの首を絞めはじめた。


「……クッ!」


 リリアの顔の上に、何かがポタリと落ちてきた。


 リリアがもがきながら目を見開くと、真っ白になったバイオレットの目に涙が溜まっていた。


「ギギギ……」


 一瞬、リリアの首を絞めるバイオレットの手が緩んだ。


「ヒュー……、ゲホッ……!」


 リリアの喉に僅かな空気が入り、リリアは咳き込んだ。


 部屋の外で待っていたハイドが、異変に気付いて扉を開いた。


「リリア!」


 ハイドがバイオレットを払い除けると、リリアの体内に急に空気が流れこむ。


「ゲホッ、ゲホッ……!」


 ハイドはバイオレットに業火を放った。

 バイオレットは一瞬にして炎に包まれた。


「ギィィ……!」


 業火と共に、叫び声に似た音が響く。


「バイオレット!」


 リリアはラルフに抱き抱えられたまま、バイオレットに手を伸ばそうとした。


「どうした……!」


 異様な物音に、ラルフとビンセントが駆けつけた。


「早く……、バイオレットの火を消して。バイオレットを助けて……」


「リリア、あれは人形だ」


 バイオレットを助けようとするリリアを、ハイドが止める。


「嫌……。バイオレット、バイオレッ…… 」


 興奮したリリアはハイドの腕の中で意識を失った。

 バイオレットは燃え尽き、黒い炭の塊になった。


「何があった!」


「人形が暴走して、リリアを襲った」


 リリアの首には人形の指の痕がくっきりと残っている。

 ラルフはリリアを抱き抱え、慌てて自分の部屋へ連れて行った。


 ビンセントは黙って炭の塊に近付き、その中からキラキラ光る何かを拾い上げた。


「……それ、ローザのブレスレットだ」


 ハイドは信じられなさそうな顔で、キラキラ光るブレスレットを見つめた。


「まさか……。人形が壊れて暴走しただけだろう。

 いくら何でもローザはリリアを襲ったりはしない」


 ハイドが半笑いで言ったが、目は全く笑っていなかった。


「なら、術を返せば分かるだろう。

 人形の暴走ならば、ローザの身には何も起こらない」


 ビンセントがブレスレットを光にかざした。


「……」


 ハイドは自分の親指の爪を噛みながら、しばらく考えていた。


 ローザを馬車で送った時の、最後の言葉が引っ掛かる。

 しかしリリアを襲ったのが本当にローザだったのなら、許すわけにはいかない。


「……いいだろう。それでローザの身の潔白が証明されるのなら」


 ハイドが応えると、ビンセントは手にしたブレスレットを握り、呪文を唱えた。

 ビンセントの黒い瞳がみるみる紅く染まっていくのと同時に、手の中のブレスレットが光りだし、強烈な閃光を放ったかと思うと、ブレスレットは、また元の輝きに戻った。


「渡しておく」


 ビンセントは、ぼんやりと立ち尽くすハイドの手にローザのブレスレットを握らせ、部屋から出ていった。


 ハイドは手の中のブレスレットをぎゅっと握り締め、


「ローザ、お願いだ。何も起こらないでくれ……」


と、呟いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ