第二十二話
リリアはローザが帰ったことにホッとしていた。
ローザは明らかにリリアを敵視している。
ローザだけでなく、この世界に住む者は皆、人間でいることに憎悪して悪魔になったのだろう。
そこに何も知らない人間が現れたら……。
忘れたい過去を否応なしに思い出させてしまう。
リリアはこの世界に来ても災いを呼ぶ。
「リリア、部屋に入ってもいいか?」
ハイドの声がした。
「……うん、いいよ」
「リリア、ローザが嫌な感じでごめんな」
「ううん。大丈夫だよ」
「アイツもラルフに、人間の世界から連れて来てもらったから……。リリアに嫉妬しているんだ」
「……そう」
リリアは窓を開けた。
花園から甘い香りが漂ってくる。
「私もいつか悪魔になるのかな……」
「リリア、悪魔は自ら命を断たない限り、若さも命も永遠なんだ。
悪魔になるのなら、よほどの覚悟が必要だ」
「私は『永遠』が、どんなに長いのか分からない」
「そうだな。
だからラルフはリリアを人間のまま、この世界に連れて来たのだろう。
俺は、悪魔になるかならないかは、じっくり考えてからでも遅くはないと思う」
いつになくハイドが真面目に答える。
「……そうね」
リリアは、そう答えたが、悪魔として、この世界に残るのか、人間のまま自分の世界へ戻るのかを早く決めない限り、この世界にいる者たちに憎まれ続けなければならない事を肌身に感じていた。




