1、任務前夜
あ〜クッソ。ダリィ〜。今日も今日とて訓練か。周りの人間はヘタレしかいねぇし、さっさと俺に特殊任務命じろっての。あのババア(アリス隊長)もババアだ。噂によりゃ人を見下すばかりらしいじゃねぇか。仕事は押し付けるは自分は何もしねぇわ。ただのイキった上司じゃんかよぉ。辞めてやろうか?星宮部隊。いや、でもせっかく入ったから辞めるのは惜しい。
俺の名前はサンス・ナタリア、16歳。レンやリコとはユニテイル部隊学校の同期。星宮部隊新入隊員で現在訓練生。立場は激低。おもんねぇの!あと眠い。
「おい聞いたか!?」
「何が?」
(何の会話だ...?)
いつものように早朝訓練をダルがってたら同じ部隊の訓練生のとある会話を聞いた。俺は得意の侵入の技術で盗み聞き。もちろん人の話をこっそりとバレずに聞くのも得意だぜ!
「森宮の訓練生、もう現役隊員と合同任務だって!」
「マジかよ!まだそんな月日経ってないじゃんか!」
「そうなんだよ。だから最初俺もその話嘘だと思った。だけど本当っぽいよ。」
「うげ〜!あの底辺部隊にそんな実力者がいたなんて!誰だ?」
「聞いて驚くなよ...?」
「う、うん...。」
「レン・バーシンだ。」
(え...?)
俺は耳を疑った。アイツが?あの馬鹿レンが?何でよりによってアイツなんだ。
羨ましいという気持ちと置いていかれて腹立たしい気持ちでいっぱいだ。
は?は?聞き間違いか?聞き間違いだよな?あームシャクシャする!!
いや待てよ?ワンチャンこの噂、嘘かもしれないな。よし、こうなったら俺のお得意技術で直接聞き出してみるか!ニシシシシ!
私の名前はリコ・アンリ。あーあ、今日も訓練疲れたなぁ。全身バッキバキ。ユニテイルの時よりキツイんだけど。レンの奴、ここ2、3日姿見えないんだけど?何やってんのアイツ??訓練にも参加しないでこれで現役になれる訳?長官も何も触れないし、私たち訓練生には一切情報共有されないし。
下っ端だから仕方ないかもしれないけど、もう少し現役たちも私たちに対する扱い変えてもいいんじゃないの?別に優遇しろとか言わないし。それでよく現役人手不足だとか言えるよね〜。
先輩はギスギスしてるし、隊長だって優しくないって聞いたし。そんなんだから若手がどんどん辞めていくんじゃないの??
「おい。」
ん?今上から声がした?気のせいか。
「おい!」
うん、どっかからは声はする。でも私にではないでしょう。
「おいって言ってんだろこのゴリラ!」
「うわっ!」
そう言いながらその声の持ち主は天井から降ってき、綺麗に着地した。
「よぉリコ!耳遠くなったか?」
「サンス!?何してるの?ここ森宮の拠点だよ?てかさっき私の事ゴリラって言ったでしょ?」
「うん言った。だってお前ゴリラだろ?」
「誰がゴリラだよ!蹴られたい?」
「蹴られたくはない。あ、そうだ。あんま大きい声出さないで欲しい。見つかったら面倒だしな。」
「え〜…。スリ、逃走、隠れるは得意なんじゃないの?」
「得意だけどさ、あ〜そうだ。俺お前に聞きたいことがあってきたんだ。」
「聞きたいこと?だったら手紙とかでいいじゃん。なんでわざわざリスク犯してくるのさ。」
「俺はそーいう奴だよ。手紙なんて何日かかんだよ。そんなの待ってらんねぇよ。」
「あんたほんと変わんないね…で、聞きたいことって何?」
「お、そうだ!レンのことだ。」
「レン?レンがどうかしたの?」
「お前、なんかアイツのこと知ってるか?」
レン…。
「さぁ?アイツここ2、3日姿見えないの。この間なんか俺クビになるかもー。とか嘆いてたし。そうかと思ったら急に姿見えなくなったし。全く、何考えてんだか。更に前なんかロン先輩に会いに行ったとか言ってたし。」
「ロン先輩?なんでまた?」
「さぁ?サラッとしか聞いてないから詳しいことは分かんない。」
「アイツ、前から変な奴だったけど宮部隊入ってから更に変な奴になったか?」
ハッと鼻で笑うサンス。
「なぁリコ。俺朝とんでもねぇ話聞いたんだ。」
「とんでもない話?」
「ちょい耳貸せ。」
「…え?それほんと?」
「あぁ、あくまで噂だけどな。」
「その話どこで入手したの?」
「知るかよ。俺が聞きたい。」
そう言うってことはサンスも別の誰かから情報を収集したって感じか。世の中肩身狭いなぁ。
「ロン先輩に聞けば分かるかな?」
「さあな?あの人もどこまで知ってるのやら。なんせ森宮じゃねえし。」
そうだよねぇ…。でもレン、アイツ一体この訓練期間中何したの?何をしたらそんなスピードで物事が運ぶの?
「聞けるだけ聞いて来ようか?俺もだけどお前も、アイツだけ先に進むの気に食わないだろうし。」
「うん。ありがとう。この噂が本当かだけ聞いてくれたらいいよ。」
「うぃーっす。また分かったら伝えに来る。んじゃあ見つかるとダルいから俺はこれで。」
そういうとサンスは天井に消えた。
レンだけ先に行くとか正直私のプライドが許さない。私も頑張ろっと。
リコとサンスが出くわす3日前、隊長と面会したレンは早速任務に行くための極秘訓練が行われていた。
極秘訓練は、現役との手合せである。
「遅い!お前はそれでも宮部隊か!俺に何発も喰らってどうする!」
「はい…すみませ…グェ!」
顎に蹴りを喰らう。
「謝る暇があるなら手や足を動かせ!」
手合わせの相手はアレン。かれこれ何発も彼から攻撃されている。
隊長や副隊長、そして他の現役もいる。
「さぁ、もう1本!」
アレンは構える。武器無しの素手での訓練。これも中々しんどい。
「…やぁああああ!!」
パァーン!
「ぐえぇぇぇ!」
「ぐあぁぁぁ!」
「どぅえぇぇぇ!」
駆け出し拳を降ったにも関わらず、掌で交わされてしまう。蹴りを入れても腕でガードされ、さらに殴られ蹴られでレンだけ傷だらけになっていく。
「俺に攻撃の1つも出来なくてどうする?このままだとお前即死だぞ。」
まだまだ余裕のアレン。
(やっべ…これが現役?俺まだ足元にも及んでない。能力だけ強くなったって意味ない。身体の使い方、戦い方、その全てを有効活用して自分の能力を使わないと本当の強者にはなれない…!)
「お〜い訓練生。アレンに負けてどうする?それで任務に行けると思うなよ?」
ガルシアからも指摘される。しかし心も体もボロボロになっている暇はない。
(ここは1つに集中。能力は…今は使ったらダメだ。狙うは人体の急所。みぞおち、後頭部、もしくは心臓。首もありだな。そして俺は…遠方戦が得意!)
高く跳ね上がったレンは近くにあった木の棒を持って戻ってきた。
「隊長…アイツ武器使って…。」
「ララ、今は黙っておけ。」
「でも隊長、ルール上それは反則では?」
「まぁそうかもしれん。でも見てみろ。アレンに対する目が変わったぞ。」
(訓練生のやつ…木の棒なんて持ってきやがって何する気だ?)
「アレンさん、俺も貴方に容赦しません!」
「…そうか。ならやってみろ!」
(アレンさんに隙をまずは作らないと。四方八方に姿を表したらすぐ見つかる。…って思うとサンスの能力羨ましい〜!アイツいつもどっから出てくるか分かんないんだもん。)
ハッ…!
(そうだ、どこから出てくるか分からないようにすれば…!でも簡単じゃない!先ずは…後ろ!)
レンは再び高く舞った。
(訓練生のやつ…一体何を考えてる。もしや俺に隙を作ろうと…?)
「ハッ。甘いな。」
アレンは鼻で笑うと手を地面に着き、足を後ろに高く上げた。
(今だ!)
レンはアレンの脚に棒を絡ませた。
「うぉ!」
アレンの脚に棒が引っかかり、お互いバランスを崩して地面に倒れ込んだ。
「…隊長!!アレンさんが訓練生に負けた!」
「負けてねぇ!今のは反則だ!」
「う〜ん。なかなかやるな。」
「隊長まで!!」
「今のはよく考えたね。」
「副隊長も…!ってか重い!退け訓練生!」
「あ〜すみません…イテテテ!」
アレンの上でへたばっていたレンはいざ退こうと体を動かすとあちこちから痛みが走ってきた。全身傷だらけだった。
「隊長どーします?この怪我じゃ任務どころじゃなさそうっすね。」
「そうだなぁ…。ナース班に連れてくか?」
「はぁ?ナース班に訓練生連れていくなんて有り得ないですよ!」
「でもアレン。こんなヨレヨレの若造を任務に連れてくのかい?」
「ッ…。」
副隊長の言葉に何も言えなくなるアレン。
「いいなぁ〜ナース班。アタイも行きたい!」
「じゃあお前がコイツ連れてけ!」
「え〜嫌ですよ。アタイレディなんで。アレンさんが連れてけばいいじゃないですか。」
「なんで俺が手合わせしてやってさらにナース班に連れてかなきゃ行けないんだ!」
「まあまあそう言わずにぃ〜。あ!今日ナース班の班長さんからパンケーキ作ったから食べに来てって言われてたんだった!隊長〜!行ってもいいですか?」
「仕事は終わったか?」
「はい!任された分はしっかり終わらせました!パンケーキを楽しみに頑張りました!」
「うむ!なら行ってもいいぞ!あまり長居しすぎないようにな。」
「はーい!」
そう言ってララはルンルンでナース班の元に向かった。
「で、隊長。この坊やどうするんですか?」
「うーん、そうだなぁ。…よし、今晩は安静にして明日の夜出発しよう。」
「え〜隊長、副隊長マジですか?本気でコイツを俺が連れて行くんですか!?冗談もよしてください。コイツ結局俺にやられっぱなしだったじゃないですか!」
アレンは地面でのぼせてるレンを指さしながら言う。
「まあアレンそう言うな。」
「報酬はちゃんと出るから。気にするな。」
「気にするなって…そんな。気にするに決まってるじゃないですかー!」
アレンの声が森宮部隊に響く。




