3,訓練生
「起きろー!!」
次の日の朝4時,長官の怒鳴り声と共に起床した。まだ眠い。ユニテイルでもここまで朝早くなかった。
そんなこと言っても無駄だと分かってるのでさっさと身支度を済ませ,グラウンドに集合する。
「え〜ただ今午前4時10分。お前らー!何準備に10分もかかってんだ!5分で準備しろ5分で!遅れた罰としてペナルティだ。今日はまだ初日だから5キロ走で許してやる。さっさと走れ!明日また遅れたら10キロ走らせるぞ!」
「え…でも僕たちこれから10キロ走るんじゃ…。」
「そうだ。だがそれがなんだ?」
「つ,つまりこんな朝っぱらから合計15キロ走るってことですか…?」
「そういうことだ。遅れる方が悪い。嫌ならさっさと来ることだな。」
「え〜,無理だよそれぇ。」
みんなの顔が青ざめ,そして口々に文句を言い合う。
「いいか,これはただのランニングじゃねぇ。お前たちがいずれ宮部隊として戦う立場となった時,長期戦になる可能性だってある。そうなった時に途中で体力無くなって使いもんにならなくなったら宮部隊全員の迷惑になる。体力のない足手纏いはいらん!分かったならさっさと走れ!これが終わったら10キロだ!」
ダッ!
みんながなかなか走りたがらない中,1人100メートル13秒のペースで走り出した。
「レン!?」
「うわマジかよ!アイツあんなスピードで走るのか?」
「ヤッベ〜バケモンだ!」
驚いてる暇もないのでレンに続き,他の訓練生も次々と走り出す。
(長官の言うことは正しい。そしてそれをぐちぐち文句を言う俺らの方が間違ってる。10キロランニングはユニテイルでも散々やってきた。それの本数がちょっと増えただけ。俺は誰よりも早く,強くなってやるんだ!昨日で分かった。いくらユニテイルをトップで卒業したからって上には上がいる。俺はまだ現実を甘く見ていた。次手合わせするときは絶対俺が勝ってやる。それまで俺は今以上にレベルアップしてやる!)
ただただ1人ひたすら走っていると後ろから足音が聞こえてきた。それもどんどん近づいていく。自分なりに周りが追いつけないようなペースで走ったつもりだが,ただ1人,レンについて来た。
「何1人で格好つけてんのよ。」
「リコ!お前,追いついたのか!」
「当たり前でしょ。レンぐらいのスピードについていけなくてどうすんのよ。今は耐えるしかないって私も分かってんだから。この地獄の期間,生き延びないとね!勝手にリタイアなんか許さないからね。」
「ハッ,その言葉。そっくりそのままお返しするぜ!」
そして2人で走る。お互い一歩も譲らない。そしてどちらも決してスピードを緩めない。そして5キロ走は同時にゴールし,再び2人は10キロを走り出す。
「アイツら速っ!もう俺らより2キロぐらい進んでるぞ!」
「もう俺クタクタだよ〜。しかも今からまた10キロだなんて…。」
「噂では聞いてたけどほんと鬼すぎる。」
「こりゃ抜け出したくなる気持ち分かるわぁ。」
「止まってる暇はないぞ!走れー!」
『は〜〜い。』
ランニングが終わり,次は筋トレ。レンとリコ以外の人たちはもうこの時点でクタクタ。
「今から腹筋,腕立て200回ずつだ。腹筋は一回一回丁寧に!そして腕立てはちゃんと顎までつける。いいかお前ら,決して手を抜くな!これ怠けると命取りになる思っておけ!じゃあ始め!」
一斉に筋トレを始める。だがさっきのランニングの直後に腹筋腕立てなのでなかなか思うように体が動いてくれない。中には休憩しながらする人もいる。が,長官はこれを許さない。
「手を抜くなと言っただろ!お前は戦闘中でも手を抜くのか?その一瞬一瞬が現場では命取りになるんだ!死にたくなければちゃんとやれ!」
そして竹刀で叩かれる。
「はいぃぃぃ。す,すみませんー!」
それを見た他の訓練生はビビって余計手を抜けなくなる。
「長官終わりました。」
「私も終わりました。」
まだ5分くらいしか経ってないため,まだ終わらないと油断してた長官が慌てる。
「お,お前ら…まだ開始5分くらいしか経ってないぞ…。本当に終わったのか?」
「「はい!」」
いくらユニテイルをトップ層で卒業したとはいえ,この2人は走るにしろ筋トレするにしろ,早すぎる。きっとどこかで手を抜いてるに違いない。そう思った長官は2人にまた10キロ走るように言った。すると嫌な顔一つせず,またさっきと同じ速いペースで走り出した。
(このレーンはは一周200メートル。10キロ走るには全部で50周も走らないと行けないんだぞ?本当に走ってるのか?)
他の訓練生も興味本位で筋トレを終わらせた人からゾロゾロとやってくる。みんなに見られながら2人はひたすらに走った。
「長官…今あの2人何周走ってるんですか?」
「今は…43周。あと7周だ。」
「ヒェ…恐ろしい。」
みんなが見守る中,2人は見事10キロを走り終えた。さっきよりかなり疲弊はしてる。それを見て流石にかと思い,安堵する人もいる。
「すんげぇ。本当に走っちゃった。」
「お前ら…何したらそうなるんだ?」
珍しく長官が驚く。実はこの2人,ユニテイル時代から早朝ランニングをしていた。それも人にバレずひっそりと。お互いがお互いに負けたくないという思いでひたすら学校の周りを走っていた。暇さえあればトレーニングというトレーニングをしてきたからこそ今役に立っていると言えるかもしれない。
「今日の早朝訓練はこれで終わり。さっさと飯食って8時にはここに来い。それまでは自由だ。」
『ありがとうございました!』
朝4時から7時まで3時間における早朝トレーニングが終わり,続々と食堂に向かう。が,ここでも気が休まらない。現在朝の7時。いつ現役の隊員が来るか分からない。それまでに片付けまで終えなければいけない。そのため全員一握りのおむすびを適当に食べ,洗い物をなるべく出さないようにする。そして残りの限られた時間でストレッチをしないといけない。そうしないと体が壊れるから。
「もうこの時点で疲れた。」
「うわ…なんだかんだで8時になるぞ…。」
「嫌だなぁ。もう辞めたい。」
「それな…。」
普通の人はこうなるのが当たり前っちゃ当たり前なのかもしれない。しかしレンとリコは違う。2人とかかなりの負けず嫌いな性格なため,こんなことで挫けるわけにはいかない。そんな強い精神で訓練に取り組む。
なぜ2人がここまで熱くなるのかというと,彼らにはまたもう1人,ライバルがいるからだ。その名はサンス・ナタリア。彼もかなりの実力者で特にレンとは犬猿の中だった。よくぶつかり,よく競い合い,時には笑い合った中だ。レンとリコは森宮部隊に入隊,そしてサンスはそれよりも上だと言われている星宮部隊に入隊した。今頃彼も自分たちと同じように訓練に取り組んでいるんだろう。そう思うと負けてられないという気持ちがより一層が強くなるのだ。
ライバルであり友であるサンスの存在は大きい。彼がいるからこそどんなにキツく,苦しいことも乗り越えられるのかもしれない。それはサンスも同じ。2人がいるから自分も負けてられないと思う。入隊した場所は違えど,いつかまた共に戦える日がやってくるとしんじてる。きっとあの2人なら簡単に訓練ごときで折れることはない。そう思いながら彼もまた走る。
3人とも誰かに負ける,そして自分に負けるのが何よりも嫌。よく言えば頑張り屋の努力家。悪く言えば頑固な一面があるのかもしれない。
そして再び共に戦える日が来ることを願って今を駆け抜けている。




