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宮部隊一同立ち上がれ!  作者: 宮田リカ
第1章 森宮部隊に入隊します!
5/5

4,限界

今日も今日とて訓練は続く。最初は余裕だと思っていたレンたちにも限界が近づいてくる。


(ヤバい…あと何キロ?あと何本?流石に毎日これはいくらなんでもキツすぎる。ユニテイルの生活乗り越えたとしてもこれは流石に無理かも…!)

初日ではあんなに余裕そうに走ってた10キロも,今やただの地獄。おまけに身体も痛い。きちんとケアをしていても休憩なしの動きっぱなし生活はレンの身体も限界を迎えている。

訓練生としての生活が始まってはや1ヶ月が経とうとしてる。そしてこの時期が1番除隊率が高い。最初は30人以上いた訓練生も今は10人を切っている。あと半月したら更に半分いなくなる。


10キロランニングよりもしんどいと言われている訓練がある。それは急な角度でゴツゴツした崖登り。能力,命綱を使うのは禁止。自分の全身のみを使って登らなければいけない。そして落ちたらお分かりの通り命取りのなるのでみんな恐怖の中よじ登っている。しかも登るタイミングはランニング直後。そして崖も結構高い。疲れ切った筋肉に更に追い打ちをかける。


「これはヤバい…。流石の私も無理かも…。」

「本当にそう。俺訓練期間舐めてたかも。」

「私も…最初の方は余裕だったんだけどなぁ。」

もう2人ともぐったり。だが休んでる暇はない。崖を登り終えたらすぐ棒術の訓練がある。


「ハァー!ヤッ!ヤッ!えい!」

「どりゃー!ヤー!ヤー!」

手を抜かずに何もかも完璧に訓練をこなすのもなかなかの至難の業。必ずと言うほど限界が誰にもやってくるから。


「こらー!レン・バーシン!何ぼさっとしてる!そんなんだとすぐ倒されてしまうぞ!」

「はい!」

「はいじゃあもう一本!俺につつきの一つでもしてみろ!」

「はい!」

フラフラになっている身体を体幹で固定する。足にグッと力を入れ長官に飛び出す。

「ヤァァァー!ハッ!ハッ!」

「全くじゃないか!それでユニテイルトップと言えるのか!もっと前に飛び出さんか!」

「すいません!」

最近は長官に怒られてばっか。いくらポジティブ思考のレンでもこれが毎日続くと心が折れそうになる。 


「お前ら〜!それで宮部隊としてやっていけると思うな!次は能力強化だ!さっさと準備しろ!」

『はい!』


「スプリングセクション!コイル・アーチャー!」

「グリーンセクション!ブロッサム・ストーム!」

疲労が溜まった中発する能力は思ったより力がない。ユニテイルでは通用していたものは長官相手には敵わない。


「お前ら〜!それでも首席と次席か!本当にそうだと言うならそれらしく俺に立ち向かわんか!」

「はい…すいません!」

「ハァ…ハァ…もう一本,お願いします!」

「疲労なんて現場に立てば関係ないからな?どれだけ疲れてようと,命をかけて戦う。それが宮部隊ってもんだ!分かったならこの俺に攻撃の一つでも与えんか!」

そうは言われてもさっきから休憩なしの動きっぱなしであるために足腰に力が入らない。いつもは剣をブンブン振り回しているリコも握るだけで精一杯。体力に自信のあるレンも,呼吸するだけで精一杯。


長官は特にこの2人には厳しかった。隊長に目をかけられていることもあり余計だ。それにユニテイル部隊学校を上位で卒業したということもある。それだけの実力者なら多少の厳しさに着いて行くことができるだろう。どれだけ厳しくても彼らが除隊することはない。そう,上が判断したため,長官も容赦なく2人に攻撃する。周りは休憩しても自分たちに休憩なんて与えられない。少しでもしゃがもうとすると罵声が飛び掛かる。息抜きは許されない。


レンとリコはお互いを見て頷く。そしてユニテイル時代に身に付けた2人だけの必殺技。これだけすれば長官にも良い攻撃ができるだろう。

「スプリングセクション!」

「グリーンセクション!」

「「スパイラル・エラトス・ボム!」」


渦巻いた巨大な根が爆発する。他の訓練生たちは衝撃で立つのに精一杯。そしてモロ攻撃を浴びた長官はというと…攻撃のダメージは受けたもののかすり傷程度。

「嘘でしょ…?」

「マジかよ。これ先生にも通用した技なのに…。」


砂煙が立ちこむ中,ゆっくりと立ち上がる長官。

「フ,ハハハハ…なかなかやるじゃないか。しかし俺はかすり傷程度。攻撃の一つも与えれないとはな…。しつこいようだがユニテイルのトップがそんなもんとはな…。あーあ,ガッカリだ!リコ・アンリ!」

「は,はい!」

笑いながら怒る長官の言葉で心にダメージを受ける。そんな中突然の個人的呼び出し。リコはボロクソ言われることを覚悟する。でも緊張で溢れ返る。

「お前は戦うとき前に出過ぎだ。下手すりゃ真っ先に死ぬぞ。あとレン・バーシンの後を喰らいつこうとしてる。確かに喰らいつくのは大事だ。でもお前はそれより先に行けない。つまりその時点でお前はレン・バーシンに負けてるんだ。そんなことしてたからユニテイル次席で卒業したんじゃないか?」

「うっ…。」


"ユニテイル次席で卒業”

この一言でリコの心に鋭い刃が刺さる。

「どうしてお前は在学中トップを目指そうとしなかった?入学したときはトップだったらしいな。それが…後からひょっこり現れたレン・バーシンに抜かされて。情けない。恥ずかしいと思わないか?」

(そうだ。私はレンに負けてた。ランニングに喰らいつくまではできてもそれより上になることはできなかった。実技も,座学も,最終的に私は全部レンに負けた。強いて勝ってたのは接近戦の訓練のみ。長官の言う通り,ユニテイル入学時私はトップだった。それがいつの間にかレンとサンスが追いついてきて卒業時には2番。情けないし恥ずかしい。)

みんなの前で自分が心に秘めてたものを言われてしまい,何も言い出せなく,俯くリコ。目には僅かながら涙を浮かべてる。それに気付いた長官は軽く溜息を吐く。


「レン・バーシン。」

「は,はい。」

「お前はそれでもユニテイルトップか?」


   グサッ!


今この瞬間,レンの心臓に鋭い棘が何本も突き刺さった。冗談の言い方じゃない。呆れた声と顔だ。

「それから,去年のユニテイルトップの卒業生を知ってるよな?」

「はい…。」

「そいつの名前と所属部隊を言ってみろ。」

「ロン・ハルタク。所属部隊は…星宮部隊。」

「そうだ。おい,そいつは訓練期間なんてあったか?」

「いや…なかったです。」

「うん。なかったよな?数少ない訓練期間を免除された逸材だよな?」

「はい…。」

「どうしてだろうなぁ。同じトップで卒業した身でこんなにも実力に差があるなんて。奴は入隊した当初から部隊で活躍してるぞ?それなのにお前はなんだ。ちょっとキツイことをしただけですぐへたばる。結局余裕そうだったの最初だけだったじゃないか。根性なしはいらん。さっさと辞めたらどうだ?宮部隊なんてお前にとっちゃはるか遠い存在だったのかもな!ハッハー!笑わせるぜ。入隊初日で隊長に荒そうなこと言ったらしいが,果たしてそれが実行できるのか?今のお前じゃ到底無理だろうな。」

リコ以上に言われてしまったレン。でも不思議と涙が出ない。長官の言葉が頭に入らなくなってしまい,感情というものもどこかへ行ってしまった。

(長官の言う通り,俺に宮部隊なんて無理なんだろうな。初めっからこの世界に足を踏み入れること自体間違ってたんだ。もういっそ辞めちゃおっかな。その方が楽かもしれない。)

ただただその場に立つことしかできない。それだけレンにとってショックなことだった。そもそも宮部隊にとってレンは不必要な存在だと長官に言われたようなものだから。


「はい,今日はここまで。後は各自自主練習とする。以上!」


『ありがとうございました!』

他の訓練生が次々と寮に戻る中,1人その場で立ち竦むレン。彼の心はもう既に限界を迎えていた。


「レン…大丈夫?」

リコが話しかけても相変わらずボーッとしてるレン。

「ん?あぁ…まあな。ちょっと言われただけだから気にすんな。」

「そう?でも無理しないでね?」

「無理はしてないさ。ただちょっとダメージ喰らっただけだよ。」

そう言うレンの顔はどこか悲しげな表情を浮かべていた。

「そっかぁ…。」

リコはそれ以上の言葉が見つからなかった。

「俺,宮部隊辞めよっかな。」

「え?」

「ハハハ冗談だよ。じゃあな,お疲れ。リコ。」

レンはすくっと立ち上がり,戸惑うリコを置いて寮の方に向かって行った。

「ちょっとレン…!」

リコが叫んでもレンは決して振り向かなかった。


コンコンコン


その日の夜,森宮部隊隊長であるガルシア・ラボルの部屋の扉を誰かが叩いた。

「どした?入りなさい。」

「失礼します。」

「あーなんだ君か。どうした?もう辞める気になったのか?今日は散々言われたらしいじゃないか。」

「そのことなんですけど…。」

「何だ?」

レンは一呼吸置いて口を開いた。


「1日休暇って貰えますか…?」


そして数秒の沈黙が訪れる。ガルシアは首を捻りながら言った。

「ん〜それは君たちの長官には言ってあるのか?」

「はい。そうしたら隊長直々に許可を貰って来いと言われました。」

「そうか。訳を聞いて良いか?」

「あ〜はい。実は…。」

レンはなぜ自分が1日休暇を貰おうとしているのか訳を話した。その理由が理由だったため,ガルシアは頭を抱え込む。


「ん〜君は今の自分の立場を分かっているのか?」

「はい。重々理解した上でのお願いです。」

レンは深々と頭を下げた。レンの真剣な眼差しから本気なのが伝わってくる。そのため再びガルシアは考えた。そしてレンの熱意に負けた。

「そうか…。ん〜うん,分かった。向こうにはこちらから連絡しておく。」

「本当ですか?」

「ただし,今回だけだぞ?2度はないからな?普通は訓練期間中に1日休暇を貰えない。」

「はい…。」

「だから今回は特別だ。他の理由ならともかくそんな理由でもう一度1日休暇なんて取れると思うな。何度も言うが,次はないからな。」

「はい…分かりました!ありがとうございます!」

レンは再び深々と頭を下げた。

「うん。今日はもう寝なさい。最近ろくに寝れてないんじゃないか?」

「え?ハハハ…そうですかね…へへへ。」

突然の隊長から優しい言葉をかけられ戸惑いつつも笑顔で対応。

「睡眠も大事だぞ。だからもう戻って寝なさい。」

「はい,ありがとうございます。失礼しました。」

「うん。」


レンは軽い足取りで寮に戻った。


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