エピソード6:ロンウェイとフェイフォン②砂漠の夜に語られた過去!
水浴びを終えた二人は服を着ると、フェイフォンはバッグから折り畳み式の釣り竿を取り出した。奇妙なことに、彼女は池ではなく砂丘に向かって仕掛けを準備する。
「え……? 池じゃなくて砂で釣りするの?」
「あの小さな魚じゃ、人間一人分の食事にもならないわ。ましてやあんたの胃袋を満たすには群れ全体が必要よ。それに巴勒斯坦鴿の食料も減らすでしょ」
「じゃあ砂の中に魚がいるってこと??」
「魚じゃないわ。『沙魚』よ」
「シャーユーって何?」
「トカゲの足が生えたナマズみたいな爬虫類。地下水脈のある砂漠の地中に棲んでるの。普通は釣れないけど――」
「だから、あたしの餌はアリの巣の振動を再現する小型装置なの。この辺りにオアシスがあるってことは、シャーユーが生息できる環境があるってことよ」
「じゃあ、砂の中を泳ぐ魔法の魚みたいなものだね!」
「……ぜんぜん理解してないわね」
「でも街の人から食料もらったじゃん?」
「3日分くらいね。あんたが普通の人間みたいに節制すれば、だけど。
砂漠の旅では、食料確保のチャンスを逃さないこと。何が起きるかわからないんだから。
まあ、沙魚が釣れる確率は30%くらい。2時間でダメなら手持ちの食料にしよう。待てる?」
「僕は飢えた動物じゃないよ? それに山の渓流でよく釣りをしてたんだ。瞑想しながらね」
「じゃあそこに座ってなさい。砂漠では体力温存が大事よ」
――――――
夕陽が砂漠を赤く染める中、フェイフォンは釣竿を構え、ロンウェイは瞑想姿勢に。しかし彼の尾だけがリズミカルに動いている。
「それ、落ち着きないから?」
「違うよ。逆なんだ。穏やかになればなるほど、しっぽが動く。おじいさんも不思議がってた」
「半妖の中でも変わり者ね」
「フェイフォンのこと、教えてくれる?」
「何を知りたいの?」
「出身は? 家族は? どこで戦い方を学んだの? どうしてそんなに物知りなの? 髪が青いのは病気? それと……『技術高校学者』になった理由は?先生なの?」
「はぁ!?『技術高校学者』って何よ、それ!?そんな職業あるわけないでしょ!!ぎ・じゅ・つ・こ・う・こ・が・く・しゃ(技術考古学者)だ!!」
怒りを鎮め、フェイフォンは質問に答え始める――
「あたしは『リェンフー・ダ・ジョウ』出身。海の向こうの西にある、巨大な都市よ。おそらく世界で唯一残った『文明的な』街で、大災厄前の技術や生活様式を一部守ってるの」
「父はフェイヤーって言う科学者。環境再生や水の浄化、栽培方法を研究してる」
「母はフェイルアンって女道士。リェンフー・ダ・ジョウを妖怪や超自然の力から守ってるの」
「あと、フェイスンっていう姉もいるわ。あの辺じゃ有名な商人よ」
「舞鳥拳は、母の友達の気難しいバアさんに習ったの。一人で旅できるくらい強くなりたくて、親を説得するために必死で修行したんだから」
「父が研究者で母が道士だから、小さい頃から科学や霊的な本がいっぱいあったわ。でもあたし、スピリチュアルな話はあんまり興味ないの」
「父さんの仕事は尊敬してるけど、あたしは逆のアプローチが好き。父さんが『古い知識から新しいものを作る』なら、あたしは『古いものを掘り出して再生させる』ほうにハマってる」
「大災厄前の世界に憧れてたから、必死で勉強して、今は世界中を回って古代都市を発掘したり、失われたテクノロジーを回収してるの」
「で、髪の青いのはリェンフー・ダ・ジョウの女子の流行り。青い髪なんて天然でも病気でもないわよ。あたしが自分で染めてるの」
「へえ~、世界を知るのって楽しいよね! わかるよ。僕は『今の世界』を知るために旅してるし、フェイフォンは『昔の世界』を知るのが好きなんだ。僕たちって、なんか『同じ違い』って感じ? へへへ!」
「まあ、そういう考え方もできるわね」
釣り糸が引っ張られ始める。
「ねえ、ロンウェイ。山で釣りしてたって言ってたから、初めての沙魚釣りやってみない?」
フェイフォンは釣り竿をロンウェイに渡し、説明する。
「普通の魚と違って、あたしの餌には金属の爪が付いてるから、食いつかれたら逃げられないの。でも砂中のトンネルにいるから、曲がり角で引っ掛かると引き上げるのが大変。だからコツが必要、わかる?」
「うん、多分。モグラを穴から引きずり出すみたいな感じだね」
ロンウェイが糸を引っ張ると、沙魚が砂の下で何かに引っかかっているようだ。フェイフォンは彼の前に立ち、一人で踊るような足の動きを始める。
「ついてきて、ロンウェイ。あたしの動きを真似して」
ロンウェイは慎重に動きを真似するが、つま先立ちや足を交差させながら歩く動きは完璧にはできず、少し遅れてしまう。
しかし沙魚は砂から徐々に引き出され、ついに地表に現れる。
フェイフォンの言った通り、それはトカゲの足が生えたナマズのような見た目で、鱗の代わりにゴツゴツした皮膚を持ち、体長約80㎝だった。
――――――
夜が更ける。沙魚を焼いて食べた後、二人は池の畔の特別なマットの上に横になった。
「フェイフォン、僕の戦隊のためにアイテムを作れるって言ってたよね?」
「ええ、そう言ったわ。何か考えがあるの?」
「うん、『ブレス・チェンジャー』が欲しいんだ。ほら、あのヒーローが腕につけて、特別なスーツに変身するやつ。五行戦隊 龍レンジャーみたいなの。作れる?」
「ふーん……難しいけど、できないこともないわ。ただ材料と道具が高くつくし、あんたには払える金がないでしょ」
「え?でも……手伝えるって言ってたじゃん……」
「そうだけど、あんたのリクエストは難易度高すぎて無料じゃ無理よ。それにあたしはデザイナーじゃないから、スーツのデザインとかは別の人に頼まなきゃだし」
「んー……シンドゥーの人が、あのギャングの賞金って言ってたよね?他の悪党を倒せば、ブレス・チェンジャー作るお金稼げるかな?」
「あら、まあまあ賢いじゃない。人助けしながら資金調達ってわけね」
ロンウェイは横を向いてしばらく考え込んだ後、突然聞く。
「ねえ……なんでフェイフォンの胸はあんなに膨らんでるの?病気?」
フェイフォンはロンウェイの頭を軽くはたいた。
「バカ!早く寝なさい!」
こうして二人は、ポタラ寺院へ向かう旅に備え、砂漠の冷たく広大な孤独の中、眠りについたのであった。




