エピソード4:ロンウェイ④妖怪(ヤオグァイ)ヒーロー誕生の街!
ラーシーが気を失う。ロンウェイとフェイフォンは一瞬見つめ合った後、笑顔でハイタッチする。
「作戦通りだったわね。あんたがブーメランを弾いた時、戻ってくる軌道を計算して待ち構えてたの。
私たちの攻撃で弱らせつつ、『自分の武器』を忘れさせたわけ」
「うわー! すごい! 怒りんぼだけど、頭いいんだね!」
「……は?」
「キャアッ!」
再び耳を引っ張られるロンウェイ。
周囲では、シンドゥーの住民たちがラーシー敗北を目撃していた。しかし彼らはまだ怯えており、「単なる支配者の交代では?」と疑いの目を向ける。
ロンウェイは素早く近くの屋根に登り、叫ぶ。
「みんなー! 悪いギャングを倒したよ! もう自由だ!」
人々は驚きながらも、少しずつ近づいてくる。
「ま、まさか本当か……?」
「ラーシーの代わりに、この街を支配する気はないのか?」
「もちろん! もう怖がらなくていいんだ。平和に暮らしてね!」
「で……なぜ妖怪が人間のために?」
「だって僕、ヒーローだから! 力を使って弱い人を守って、みんなに笑顔と平和を届けるんだ!」
ロンウェイは無邪気ながらも確信に満ちた笑顔で宣言する。住民たちは一瞬躊躇うが、彼の目に嘘がないことを悟る。
(住民の考え)『妖怪がこんな小細工で支配する必要なんてないはずだ』
フェイフォンは住民の疑念を見抜き、淡々と説明する。
「いい? このガキはウーシュイのメンバー15人を倒した。あたしはレストラン前で3人、その前に2人。ウーシュイの総勢はだいたい50人くらい。
で、一番の脅威だった改造人の親分を倒した上に、ほぼ半数も潰したってわけ」
ロンウェイが屋根から飛び降り、手を頭の後ろに組んだままフェイフォンに近づいて言う。
「残りは逃げるさ。逃げなくても、君たちの数が上回ってるんだから大丈夫!」
住民たちは少しずつ理解し――
「やったー!!」
突然の歓声が街に響く。
ロンウェイを担ぎ上げる群衆。
感謝のあまりフェイフォンを抱きしめる住民たちの中、一人の男が下心ありげに接近してきた。彼女は即座に肘打ちを食らわせる。
「触るなこの変態ジジイ!」
***
30分後 ― 街の出口。住民たちが見送る中、フェイフォンに老婆が声をかける。
「お嬢さん……保安官のチョンシュイが到着するまでに、あのラーシーが自力で逃げ出したりしないかね?」
フェイフォンは自信たっぷりに説明する。
「心配無用よ。あのデブが強かったのは改造人だから。機械の腕とハイテク・ブーメランがなければ、ただの大柄な人間よ。鎖なんて一本腕じゃ破れないわ」
住民が不安そうに尋ねる。
「もし他のならず者がシンドゥーを狙ったら……?」
ロンウェイが笑顔で答える。
「その時はまた呼んで! 『妖怪のヒーロー・ロンウェイが守る街』ってみんなに宣伝しといて!世界中どこからでも駆けつけるから!」
住民が困惑する。
「でも……どうやって呼べば?」
「えっ……?」
ロンウェイはその質問に答えられず、戸惑った顔で黙り込む。
するとフェイフォンがバッグから白い円形の装置を取り出す。緑がかった画面と、縁にいくつかのダイヤルがついた「失われたテクノロジー」の部品だ。それをロンウェイに手渡す。
「はい、トランスポンダーよ。失われたテクノロジーのパーツを使ってあたしが作ったの。これがあれば、シンドゥーの人たちが必要な時にあなたと連絡を取れるわ。周波数コードはここよ」
ロンウェイが目を輝かせる。
「わあ! 魔法のアイテム?」
「魔法じゃない。テクノロジーよ」
住民がためらいがちに提案する。
「えと……ラーシー討伐の賞金500万チエン、本当にもらわないのかい?」
「Ꝙ500万!!?」
フェイフォンの目が「Ꝙ」マークに変わる。ロンウェイの視線に気づき、咳払いして取り繕う。
「まあ……確かに魅力的だけど、今日は本業でほぼ倍は稼いだし、今回はパスよ。賞金は街のものにしなさい。あたしは自分のやり方で稼ぐのが性に合ってるの。でなきゃ、とっくに賞金稼ぎか盗賊になってるわ」
「じゃあ、お水と食べ物、少しだけだけど持っていって。お礼の気持ちよ。多くはないけど、心からよ」
「ありがとう、おばちゃん!」
――――
街を離れる途中、フェイフォンはバイクのエンジンをかけながら振り返る。
「ねえロンウェイ、次はどこ行くつもり?」
ロンウェイはぎょっとした様子で、ゆっくりと首を傾げる。
「えーっと……実は……わかんない」
「でしょ? 放っておいたら、また5日間砂漠を彷徨って干からびるに決まってる」
ロンウェイは俯いて黙認する。フェイフォンはバイカー用のゴーグルをかけながら提案する。
「ちょうど前回の探検で儲かったから、暇なのよ。『ジュウラオ』の手がかりがあるかも知れない場所へ案内してあげるわ」
「本当に!?」
「『かも』よ。200年前の人間が今も生きてるわけないんだから。でもあんたが竜人で、その宝珠に本当に魔力があるなら……普通の人が知らない超常現象があるかも。
『ポタラ寺院』へ行きましょう。手がかりはないかもだけど、とりあえずのスタート地点にはなるわ」
「うん、行く!」
「じゃあ乗りな。でも決して触るんじゃないわよ! 即蹴り飛ばすからね!」
「はーい」
バイクは砂煙を上げてシンドゥーの南東へと走り去る。灼熱の太陽と果てしない砂漠だけが、二人を見送った――




