エピソード3:ロンウェイ③人間を守る妖怪(ヤオグァイ)!
シーショウジエンの店では、数人のウーシュイのギャングが親分の帰りを待っていた。そこへ、ロンウェイが走って近づいてくるのを目撃する。
「おい、見ろよ! ガキが一人で戻ってきたぜ」
「ただの散歩だったんじゃねーのか? どうせ頭がイカれてるガキだし」
「それとも、親分を見て自分のバカさに気づいたか」
ロンウェイは風のように店内に駆け込み、呆然とするギャングたちを置き去りにする。
「は?!」
店内でロンウェイはキョロキョロと見回し、すぐにカウンター脇の壁に立てかけられた赤い杖を見つける。
「ああ、ここにいたのか……もう人に貸すのは危険だな」
「おいガキ、親分を見なかったか?」
ロンウェイは振り向きもせず、窓からジャンプして脱出。ガラスが割れる音が響く。
「待てっ!」
「追いかけろ、このアホども! 足を撃ってもいいぞ!」
しかし、ロンウェイが走り出そうとした瞬間――スカーフを掴まれ、地面から2メートル以上持ち上げられる。
振り向くと、そこには緑のモヒカンをした巨漢がいた。
左腕は完全に金属製で、アーマーではなく肉体そのものが機械化しているようだ。
背中には自分と同じ大きさの長方形の物体を背負っており、ロンウェイにはそれが何かわからないが、おそらく武器だろう。
「ラーシー様! もう戻られたんですか!?」
「こいつは何だ?」
「あ、こいつは砂漠でウロウロしてたガキで……シーショウジエンがこいつをうちから750万チエンで買ってくれるって言ってたんだぜ。でも逃げようとしてて……」
ラーシーはロンウェイをじっと観察する。ロンウェイは平静を保ち、反応を待っている。
「お前ら、甘すぎるんじゃねえのか? なんで指の一本か、せめて片手の爪全部でも剥いで、ここが誰の縄張りか教えてやらねえんだ?」
「えーっと……こいつ、頭がちょっとアレなんで。捕まえた時も反抗しなかったから、大人しいと思って……それにシーショウジエンが『健康で丈夫だから高値』って……」
「バカ言え。指1本ぐらいで値が下がるわけねえだろ」
ラーシーは腰からナイフを抜くと、ロンウェイに向ける。
――その瞬間!
ビュッ!
ロンウェイはラーシーの手から消え、スカーフとターバンだけが地面に落ちる。
「!?」
2メートル先に着地したロンウェイ。スカーフとターバンが外れたことで、隠されていた特徴が明らかに――
・額から生えた小さな金色の角
・人間より長く尖った耳
・赤と黄色のドラゴンのような尾
・黒く鋭い爪(手足とも)
「こ、こいつ……人間じゃねえ!」
「ヤ、妖怪だ……!!」
――――
数メートル離れた場所、フェイフォンは単眼鏡を手に、この光景を観察していた。
「まさか……あの子、竜人だったのか!?」
――――
周囲の人々は「妖怪」という言葉にパニックになり、叫びながら逃げ出す。
「妖怪だって!?」
「ラーシー対妖怪じゃねえか!」
「逃げろーっ!!」
ギャングたちは武器を構え、殺意を露わに発砲する。ロンウェイは初めて彼らの本気を感知し、片足立ちで棍棒を頭上に構える独特の構えを取る。
ダダダッ!
弾丸は全て棍棒の回転で弾かれる。ギャングたちは仰天する。
「クソッ……マジで化け物だ!」
ロンウェイの反撃が始まる――棍棒で武装解除、腹部や頭部への打撃、尾の鞭のような一撃。10秒もかからず、15人のギャングが倒された。
ラーシーは静観していたが、突然笑い出し、葉巻に火をつける。
「ガキのくせに、なかなかやるじゃねえか。……提案だ。どうせこのままやり合っても、お前が勝てるわけねぇ。だったら時間の無駄だろ? 俺の部下にならねぇか?
Nº2の座をやる。食い物も酒も、場所も相手も――好きなだけ、好きにしていいぜ?」
「悪い人たちと仲良くなんてできないよ! 人を売ったり、酷い方法で殺したり…あんたたちこそ本当の怪物だ!」
ロンウェイはラーシーに舌をベーッと出す。ラーシーは葉巻をふかしたまま、冷静に返す。
「残念だ。お前ならNº2も勤まったのに」
――そして、戦闘開始!
ラーシーは葉巻を吐き捨て、背中の巨大長方形武器を素早く展開。
ガシャン!
武器は90度に折れ曲がり、巨大ブーメランへと変形。
デインッ!
機械の腕でブーメランを投擲。ロンウェイは棍棒で防ごうとするが、圧倒的な重量に押され、しゃがみ込んで回避する。
ブーメランはそのまま街へ飛び――
ドゴォォン!
2階建ての建物を水平に切断。市民たちは悲鳴を上げ、逃げ惑う。
「いててて! 重すぎるよ~!」
ロンウェイは反撃に転じるが、棍棒の攻撃は全て機械の腕でブロックされる。ラーシーは余裕の笑みで彼を上空へ吹き飛ばす。
ロンウェイは空中で体勢を立て直し、再び反撃に出ようとするが——「バキッ!」
戻ってきたブーメランが背後から直撃。ロンウェイは地面に叩きつけられる。
ラーシーはブーメランを再装着し、ロンウェイの頭をハンマーのように打ち砕こうとする――
ペシャッ!
突然現れたフェイフォンが両足での飛び蹴りをラーシーの顔面に決める!
「フェイフォン……?」
歓喜も束の間、今度はロンウェイの腹に同じ蹴りが炸裂する。
「ぐはっ!?」
「バカァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
フェイフォンが怒鳴りつける。
「いてっ! なんで蹴るんだよ!?」
「あんたが妖怪だって知ってたら、こんな騒ぎに巻き込まれなかったわよ!」
「で……でも、フェイフォンが勝手に……」
「キャアッ!」
フェイフォンはロンウェイの尖った耳を強く引っ張る。
「いいか、角ボウズ! あんたが素直で無邪気なガキだから、助けてやったんだ!
あたし、誰かのボディーガードじゃないんだからね!助けた礼として30万チエンよ!
この世でタダなんてないわ、特にあたしに関しては!」
「『チエン』って、さっきくれた食べ物のこと?」
「あっ! そうだわ! 食事代も請求するわよ!」
「いってててて!」
二人が言い争っていると、背後からラーシーが迫る。
「クソが……妖怪ガキに女ガキ……生きながら八つ裂きにしてやる!」
ラーシーはブーメランを両手で構え、野球の投手のように体を反らせて全力投球の姿勢に。
「ねえ、フェイフォン。この人たち、いろんな人を傷つけてるんだよね?もし倒せば、この街も他の街もみんな安心して暮らせるようになる?」
「まあ、完全には無理ね。水や食料の問題は残るわ。でも少なくとも、命の危険は減るでしょ。でもなんでそんなこと気にするの?」
「レストランで話したじゃない? 『伝説のヒーローたちは役に立たなかった』って。だから、今の世界には『新しいヒーロー』が必要なんだ! みんなに希望と安心を届けるために!」
「バカ言わないで。『ヒーロー』なんて儲からないわ。そんなもの存在しないの。山での生活は知らないけど、ここでは誰も他人なんて気にしない。自分さえ良ければいいのよ」
「……なら、なんで僕を助けてくれたの? 前も、今も」
フェイフォンは言葉を失う――その瞬間!
「デインッ!!」
ラーシーが全力でブーメランを投擲する。
「東方の天の龍! 力を貸して!」
ロンウェイは棍棒の先端に天の竜の宝珠を装着。ゴオオッ! 炎の輪が形成され、ブーメランを辛くも弾き返す。
「ま、まさか……!?」
フェイフォンは一瞬考え込み、叫ぶ。
「ロンウェイ! あのデブを『10時の方向』に叩き飛ばして! 信じて!」
フェイフォンは素早く指定の位置へ移動。ロンウェイは理解できぬまま、しかし頷く。
「行くぞ!」
ロンウェイはラーシーめがけて突進。機械の腕の攻撃をしっぽの反動と自身の低い身長を活かしてかわし、背後へ回り込むと、燃えたままの棍棒でラーシーの背中を一撃する。
ラーシーはそれに耐えるが、ロンウェイはさらに炎を呼び起こし、それが龍の形を取る。
《竜の拳:天竜の憤怒!》
炎の棍棒が龍の形となってラーシーを包み込む。全身を焼かれながら、彼はフェイフォンの待つ位置へ吹き飛ばされる。
「ナイス、ロンウェイ! 次はあたしの番!」
フェイフォンは両扇を広げ、ラーシーの接近を待ち構えていた。攻撃の構えだ。
《舞鳥流:殺鶴の舞!》
フェイフォンは体の周りで扇を舞わせ、まるで舞台の踊りのように美しく正確な動きでラーシーを打ち据える。しかしラーシーは倒れず、苦しみながらも体勢を立て直し、フェイフォンの首を掴んだ。
「このクソアマ……! 確かに動きは悪くねえが、それだけじゃ俺は倒せねえんだよ。今すぐその首をへし折ってやる、ブスがッ!」
「やっぱり、それじゃ足りないと思ってた。でもね――あたしの一撃、ロンウェイの、それに……あんたの。三つを合わせたら、もう耐えられないわ」
「俺の……?」
ガガーン!
戻ってきたブーメランが機械の腕を粉砕し、腹部を直撃。ラーシーは崩れ落ちる。
「ぐああ……クソガキどもが……俺はまだ……」
最後の言葉を言い切る前に――ロンウェイの棍棒とフェイフォンの蹴りが、左右から同時にラーシーの頭を打ち抜いた。
「うるさい!」




