エピソード24:ヂーフェイ大師の予言!天選(ティエン・シュエン)を導く光!
フェイフォン、ヂーフェイ大師、そしてトンチンがヂーリーの家に到着すると、そこにはすでにロンウェイがいた。
「なーんだ、こんなところにいたの?聞いてロンウェイ、あのじじいがポタラの大師様なら、寺に行かなくてもジュウラオのことを直接聞けるじゃない!」
「なっ……『大師様』に向かって『あのじじい』呼ばわりとは!お嬢さん、もっと敬意を払いなさい!」
「ふむ、ジュウラオを探しておるのか?その理由を聞いてもよいかな?」
ロンウェイは天の竜の宝珠を取り出し、ヂーフェイ大師に見せた。
「おじいちゃんが亡くなる前に、僕にこう言ったんだ。
『ジュウラオを探せ。彼ならこの宝珠の正しいの使い方を知っている。そして、お前の夢――天上戦隊シェンレンジャーを作って、世界を悪から救い、人々を守るという夢を導いてくれるだろう』って」
「でもさ、あたしはロンウェイに言ったのよ。ジュウラオって200年前の人間なんでしょ?普通に考えて、もう死んでるって。けど、ヂーリーさんが『神仙』の可能性があるって言ってたのよね」
ヂーフェイ大師は椅子に腰掛け、ゆっくりとお茶を啜る。
「ジュウラオは確かに『神仙』じゃ。神仙とは、気を極めることで神格と不老不死を得た者たちのこと。
逆に、邪気を極めた者は妖怪となる。だからこそ、彼が今も生きていると、わしは断言できるのだ……だが、残念ながら、わしにも彼の居場所は分からぬ」
「最後に彼を見たのは、わしがちょうどお前くらいの歳の頃じゃ。ポタラで修行を始めたばかりだった頃に、ジュウラオが訪れてな……
当時の大師に天の亀の宝珠を託して去っていった。あれからもう八十年……一度も姿を見せておらん」
「は、80年!?」
「……ってことは、ここまで来たのに無駄足だったってこと?ジュウラオが生きてるのは分かったけど、どこにいるかは不明……」
「じいちゃん、なんか手がかりとかないの?」
「……あるかもしれんのう」
そう言って、大師はロンウェイの手にある天の竜の宝珠を見つめた。
「お前の祖父は誰だったかの?」
「バイシエンだ」
ヂーフェイ大師はにっこりと笑い、白い髭を優しく撫でる。
「なるほど……ようやく、ジュウラオの壮大な計画が動き出したということか。
いいか、少年――ジュウラオは大災厄以前から五つの神宝を守ってきた守護者じゃ。
そして、バイシエンはジュウラオの最後の弟子だった。それで、お前の手に天の竜の宝珠がある理由が分かる」
「八十年前、ジュウラオは五つの宝珠を持って旅に出た。それぞれを、彼が信頼する世界中の五人に託したのじゃ。『天選が現れるその日まで、最も相応しい者に宝珠を継承し続けよ』――彼はそう言い残しておる」
「天選 、か。前にシュエンウーがそんなこと言ってた。『宝珠は、五聖獣そのものに選ばれる』って……でも、どうして?」
「それはな、各宝珠には五聖獣の魂が封じられておるからじゃ。心と魂がその獣と完全に共鳴した者だけが、彼らと繋がり、その力をこの世界に顕現させることができるのじゃ」
「八十年前、ジュウラオは五人に宝珠を託したが……その誰一人として、宝珠に『天選 』ではなかった。だから彼らには、次の世代へと宝珠を託す責任が課されたのじゃ。
『いつか、本当に天選 が現れるその日まで』……とな」
「ジュウラオは、そうして代々宝珠を受け継がせることで、いずれそれにふさわしい者の手に渡ると信じておったのじゃ。宝珠が集まり、世界に平和と均衡をもたらす者が現れる日が、ようやく来たのかもしれんな……」
「で?その『天選 』てどうやって分かるの?とりあえず誰かに渡して、火を噴いたら当たり!みたいな?」
「いやいや、そうではない、娘さん。宝珠は、選ばれし者が近づくと輝くのじゃ。
わしは当初、この伝統を守るつもりでおった。レンかトンチンに天の亀の宝珠を継がせて、その者たちが次世代にふさわしい者を見極めていく……そうして、いずれ誰かに反応するその日まで待とうと……」
──そう言いながら、ヂーフェイ大師は二週間前の出来事を思い出す。
「だがある日、シュエンウーが『安気術』の鍛錬をしておる最中に、宝珠が微かに光り始めた。反応したのは……彼だった。
そこで、わしは彼に宝珠を託し、さらに検証したところ、気が確かに宝珠に共鳴しておった。
過去八十年、ポタラの誰にも、ジュウラオが持っていた頃にも、この反応は起きなかったのじゃ」
「そういえば……僕も、じいちゃんがこの宝珠をくれたのって、僕に光ったからなんだ。
あのとき、じいちゃんはもう病気が進んでて……それでも、僕に『竜の拳』を急いで教えてくれようとした。
でも時間がなくて……それで、死ぬ間際にジュウラオのことを話してくれたんだ」
フェイフォンは、胸に何かが刺さるような気持ちになる。ロンウェイが祖父の死を語るとき、いつも穏やかな笑顔を浮かべるのが、彼の本当の気持ちを掴めなくて、心にひっかかった。
『ロンウェイって……いつもおじいさんのこと話すとき、悲しそうな顔しないよね。あのシンドゥーでのときもそうだった。本当に受け入れてるのかな?それとも……』
「……我が小さき竜よ。今のお前にとって最善なのは、残る三つの宝珠の行方を追い、それぞれの持ち主に会って、ジュウラオの手がかりを探すことではなかろうか。
もしかすると、彼らの誰かと連絡をとっておるやもしれぬ」
「で、どこにあるの?」
「ふむ……ひとつは、『白虎門』に預けられた。古くからある武術の名門でな、お前の祖父の『天竜門』とは、長年のライバル関係にある」
「もう一つは、『ハイシャンチョン』という都市にあるらしい。だが、誰に託されたか、またなぜそこだったのか、詳細は不明じゃ」
「そして最後のひとつは……『チンユン道観』に託された」
「チンユン道観!?」
その名を聞いて、フェイフォンが目を見開いて驚く。
「えっ、知ってるの?」
「もちろんよ。リェンフー・ダ・ジョウにある、うちの母親が主宰してる道観だって、前に話したでしょ?つまり……うちの母が、宝珠の持ち主ってこと?」
「その道観を統べる者が君の母であれば――その可能性は極めて高い」
「フェイフォンは宝珠もらわなかったの?」
「そんなの貰ってないわよ。もらったのは、この魔法のコンパスだけ。どこにいてもチンユン道観の方向を指し示すっていうやつ。母が言うには、『絶対に帰り道を見失うな』ってことらしいけどね」
「ははははっ!つまり、選ばれなかったってことかー!」
ロンウェイが指を差して笑うと、フェイフォンが拳でガツンガツンと殴りまくり、ロンウェイの顔はボコボコに。
「で、これからどうするわけ?実家に寄るのは別にいいけど、三つの中で一番遠いのがリェンフー・ダ・ジョウなのよね。
ハイシャンチョンも、うちと同じく高度技術都市のひとつ。そこには前から行こうと思ってたし、ちょうどいいんだけど」
「ってことは……フェイフォン、お前はまだ僕と一緒に旅に出るつもりか?」
「さぁね。運命とかなんとかが、そうさせようとしてる気がするのよね。
そもそも、あんたをここまで連れてきたのも、この街がハイシャンチョンに行く途中にあったからってだけだし。
そこからリェンフー・ダ・ジョウに寄って、実家にちょっと顔出すつもりだったのよ。もそうなると、白虎門は候補から外れるわね」
「え、なんで?」
「白虎門はここから北のシャーモージョウにあるの。
それに、シュエジューの山脈があるせいで、大きく迂回しなきゃならないのよ。
それだけで二週間以上はかかるし、ハイシャンチョンとは真逆の方向なの。
ざっくり言えば……行かないって言ってるのよ、白虎門になんか!」
「じゃあ行かなきゃいいじゃん!」
「あんたに許可とった覚えはないけど!?」
フェイフォンがロンウェイにまたしても拳骨を落とす。その横で、トンチンがロンウェイをそっと起こしながら言った。
「つまりなロンウェイ、お前の旅路には分岐点があるということを、フェイフォンさんは言いたかったんだ。
それに……お前はバイシエンの孫で、竜の拳の使い手でもある。
その立場で白虎門に行くのは、あまり得策ではないかもしれん。
どうしても行くなら、宝珠の持ち主と連絡を取る別の手段を考えるべきだな」
ロンウェイは腕を組み、しばらく考え込む。やがて何かひらめいたように顔を上げた。
「ねぇ、じいちゃん!ヂーリーさんから聞いたけど、運命占いできるって言ってたよね?僕がジュウラオに会うために、どこに行けばいいか教えてよ!」
「おじいさんにもう少し敬語使ったらどう?そんな調子じゃ、ジュウラオに会っても説教されるわよ」
「……おいおい、それを言うなら君が一番無礼だと思うけどな。この中で、大師に一番タメ口きいてるのは誰だと……」
「フフッ、かまわんよ。天選の旅路を助けられるなら、喜んで力を貸そう。
ましてや、バイシエンの孫ならなおさらじゃ。トンチン、砂と盆を持ってきてくれ。砂占いを使おう」
トンチンが普通の盆と砂袋を持ってくる。ヂーフェイ大師は盆を床に置いて座り、ロンウェイにも対面するように座るよう促した。
「お前の祖父は、気の扱いを教えてくれたか?」
「うん、教えてくれたよ」
「よし、ならより精度の高い占いができる。両手で砂をすくい取り、自由な形で盆の上にまけ。撒く前に、気を両手に集中させ、砂にその流れを込めるのじゃ」
「右手には『吉』、左手には『凶』の流れが宿る。その二つを合わせて撒けば、お前の運命の流れが見えてくる」
ロンウェイは両手を水をすくうようにして砂を取り、意識して盆の縁に円を描くように撒いた。撒いた砂の一部は自然と盆の中央にも散らばる。
ヂーフェイ大師は、静かにその模様を数分間見つめた後、口を開いた。
「……ロンウェイ、お前の旅の幸運は、どうもフェイフォンと深く結びついておるようじゃのう。
彼女と共にある時、お前の運は上昇し、運命の道もより明確になる。
まるで、彼女が無意識のうちに、常にお前を正しい道へ導いておるかのようじゃ。
彼女と離れれば離れるほど、お前の旅は困難となり……場合によっては、成し遂げることが不可能になるやもしれぬな」
その言葉に、ロンウェイとフェイフォンは目を見開いて驚く。ロンウェイはゆっくりとフェイフォンの方を見て、尊敬のまなざしを向ける。その視線にフェイフォンは気づき、そっと視線をそらした。
「大師、つまりロンウェイはあたしと一緒にいないと、ずーっと運が悪いままってこと?」
「いやいや、そういう意味ではない。わしが占ったのはあくまで『ロンウェイの旅路』、つまりジュウラオや他の宝珠を探す道筋に限った話じゃ。
人生全体の運勢まで見たわけではないし、ロンウェイの幸運がすべてお前の手の中にあるとは思わんよ」
「ただ、この旅において、お前が彼を『正しい道』へと導いてくれる特別な存在であることは間違いない。
例えるなら――お前は『神に遣わされた導き手』あるいは、『ロンウェイだけの幸運の女神』といったところかのう」
「……まぁ、確かに言われてみれば、あんたがシュエジューを出てからは、ずっとあっちこっちフラフラしてたもんね。あたしが拾ってあげなきゃ、今頃どこでどうなってたか……」
ロンウェイは無言でフェイフォンをじっと見つめている。
「ま、ロンウェイ。これで行き先は決まったってことじゃない?
あたしたちはまずハイシャンチョンに行って、それから実家のリィェンフゥ・ドゥ・ジョウへ。
大師の予言を信じるなら、あたしの判断にも従ってもらうからね?」
「うん!信じるよ!だってフェイフォンがいなかったら、僕は今ここでこうして話してることすらなかったんだもん!」
ヂーフェイ大師は砂の入った盆を片付けながら、フェイフォンに向き直る。
「どうじゃ、お嬢さん。せっかくの機会じゃし、お前の運勢も見てみぬか?わしもそうそう占いをするわけではないからな、特別なチャンスじゃぞ」
「うーん……大師、無礼があったら申し訳ないんだけど、あたし、こういう占いとかあんまり信じてないのよね。母もそういうのやってるけど、なんかピンと来なくて……」
「やってみなよフェイフォン。もしかしたら彼氏見つけられるかもよ?少しは性格も丸くなるかもね~?」
「誰がそんなの欲しがってんのよ!?」
フェイフォンは右手で砂を鷲掴みにして、力いっぱい盆に投げつけた。勢いよく撒かれた砂の一部は盆の外にはみ出してしまったが――
盆の中には、翼を広げた一羽の鳥のような形が、まるで彫刻のように現れていた。その場にいた全員が目を見開く。
「うっそ!?なんでこんなことに!?」
「フェイフォン……なんか……鶏っぽいの描けてるよ?」
「鶏はあんたの母ちゃんだよ!!!!」
ヂーフェイ大師は鳥の砂模様をじっと見つめ、優しい笑みを浮かべる。
「……お嬢さん、見事な気の使い手じゃのう。その流れは、まるで川のように自然で美しい」
「私も、そう感じておりました、大師様」
「ただし、お前は右手だけを使ったから、運命の『障害』や『試練』までは読み取れんかった。……だが、お前は占いを信じぬ者じゃろう。ならば、わしも遠回しはやめよう。はっきり言うぞ」
ヂーフェイ大師は立ち上がり、フェイフォンの目をまっすぐに見て語った。
「お前には、将来偉大な存在になる可能性がある。あるいは……何も変わらず、そのままの自分でいることもできる。
だが、そのためには『困難な試練』を選び、立ち向かわねばならぬ。逃げることもできるが――それを乗り越えた先にあるものは、
自分の人生だけでなく、世界中の人々の運命をも変えるほどの大きな報いじゃ」
「せ、世界中!?さすがに大げさすぎない!?」
その言葉を聞いて、ロンウェイは固まる。彼はフェイフォンを、今までとは違う目で見つめていた。心の中で――フェイフォンの身体が光を放ち、まるで神のように輝いて見えたのだった。
「ちょっとロンウェイ、なにその目。そんなに真に受けないでよ!」
ロンウェイは彼女の両手を強く握りしめ、今までにない真剣な声で言った。
「……フェイフォン。僕、君を信じてるよ。絶対、どんな時も。……ずっと、信じてるから」
「はああああい!?」
ヂーフェイ大師は黙ってその様子を見守りながら、心の中で思った。
『この娘の気は、まるで川の流れのように自然で……そのまま海へと注ぎ、魚たちを導く流れじゃ。彼女こそ――
天選 たちを導く光なのかもしれんな……』




