エピソード25:シュエンウーの別れ!! 「天の協力の宝珠」!
グアンロンチョンのヂーリーの家では、ロンウェイとフェイフォンが次の目的地について話していた。
「じゃあさ、次は『歯医者長』に行くんだよね?」
「『歯医者長』じゃなくて!『ハイシャンチョン』よ!!……ってか、フーリー医師にあと一週間は安静にしろって言われてるの、忘れた?あたしの気のおかげで回復早いって言ってたでしょ」
「早い?僕なんて三日で治ったんだけど」
「それはあんたが化物だからよ!!!普通の人間だったら、銃撃を受けて生きてるだけでも奇跡なのよ!!バカ!!」
トンチンが小声でつぶやく。
「……そんなこと言いながら、部屋中ウロウロしてるし。この子、本当に『安静にする』の意味、分かってんのかな……」
その時、ヂーフェイ大師が家を出て、ヂーリーに話しかけた。
「ヂーリーよ、わしはこれからポタラへ戻る。トンチンを連れていくぞ。そしてシュエンウーを、再びグアンロンチョンの守りとして残すとしよう。あの二人が旅立つまでの間な」
「えっ、もう?今朝戻ってきたばかりなのに……で、でも、ヂーハオの様子を見にポタラへ行くには、どうすれば……?」
「今は、ここにいると良い。シュエンウーは、ヂーハオを救うために何か新しい方法を考えているようだ。お前の存在が、それを支える助けになるかもしれん」
出発前、大師はロンウェイに声をかけた。
「ところで、少年。お前はヒーロー戦隊を結成するために天選を探しているのだろう?シュエンウーも空いておるぞ」
「えっ、シュエンウー?もう誘ってみたけど、行くかどうかはまだ決めてないってさ」
「ホッホッホッホ……心配いらん、少年。あいつはな、決断するのに時間がかかるだけじゃ。特に、故郷を離れるような大きな決断にはな。その辺は、わしに任せておけ。彼は必ず、お前と共に行くだろう」
「ほんと!?やった!ありがとう、じいちゃん!……でも、まさか無理矢理連れてくるんじゃないよね?」
「ふふ、安心せい。無理に引きずることはせんよ。ただ――決断を『ちょっとだけ早めて』やるだけじゃ」
***
その頃、山奥では、シュエンウーが座禅の姿勢で何かを両手で力いっぱい握りしめ、天の亀の宝珠と自身の気が共鳴して光り輝いていた。
そこへ、ヂーフェイ大師とトンチンが、グアンロンチョンからやって来た。
《トンチン》「シュエンウー?こんな山の中で何を……街か野原で瞑想した方が、よっぽど楽なんじゃないのか?」
「あっ、トンチンさん、大師様……いや、ただの瞑想じゃないんだ。……これを、仕上げてたんだべ」
彼がそっと手を開くと、そこには天の宝珠に似た、しかし透明な水晶のような輝きを放つ「宝珠」があった。
《ヂーフェイ大師》「おおぉ……なんと見事な!シュエンウー、お前が作ったのか?」
「へい。天の亀の宝珠の力でな、普通の石からでも宝石とか結晶ができるんちゃうか思て、この辺の岩をようけ集めて『圧縮』して、このちっこい宝珠を作ったんだべ」
《トンチン》「なんという密度……これはすごいぞ。でも、なんでそんなことを?」
「……ヂーハオのためだべ。おいらが宝珠に選ばれたんが、あいつにはショックやったみたいや。そっから道を外してもうた。せやから、おいら、あいつ専用の『天の宝珠』を作りたい思てんねん」
《トンチン》「えっ……新しい『天の宝珠』を、作るってことか……!?」
「へい。天の宝珠には、それぞれ聖獣の魂と気が封じられとるんやろ?せやったら、グアンロンチョンのみんなの魂と気を、ちょびっとずつ込めた宝珠を作れへんかな~思てな……」
「みんなで力合わせて、ヂーハオのために、ちょいずつ気と前向きな気持ちを注いだらな、この宝珠には浄化と仲間意識、それに協力の力が宿るはずや。
そいでヂーハオの気も、ちょっとずつ浄化できるんちゃうかと……この宝珠は『天のグアンロンチョンの宝珠』、その属性は――『協力』や!」
ヂーフェイ大師とトンチンは、シュエンウーの発想に驚く。大師はその立派な髭を撫でながら、深く頷いた。
「……見事な発想じゃ、シュエンウー。グアンロンチョンの民全員の気と善意の集まり――
それがヂーハオの気を強化し、支える柱になる。
たとえ彼らがポタラに行けずとも、この宝珠があれば、彼らの『想い』は、いつもヂーハオと共にあることになる」
ヂーフェイ大師はそっとシュエンウーの肩に手を置く。
「さて……話は変わるが、わしは今からトンチンと共にポタラへ戻る。シュエンウー、お前はもう一週間グアンロンチョンに残れ。
その時間で、できる限り多くの人から気と願いを受け取り、この宝珠を『完成』させるのじゃ。そして――別れの準備もしておけ」
「へっ……わ、別れ!?ど、どういうこっちゃ、大師さま!?」
「シュエンウーよ……お前はすでに、ポタラ史上初の天選となった僧じゃ。ならば当然、ポタラの僧として大災厄以降初めて『旅路』を成す者となるのも、お前にふさわしい」
「ポタラの僧の使命は、古より変わらん。仏の教えを広め、弱き者を守り、精神の道を示すこと。そのために、彼らは世界を旅した。
だが、大災厄以来、僧の数は激減し、ひとりの僧の死は、ポタラ全体の一割を失うに等しい損失となった。よって、外へ出すこと自体が危険となったのじゃ……だが、お前は違う」
「天の宝珠に選ばれた者は、その力を人々のために使わねばならん。
宝珠は、何十年も『待っていた』のじゃ。人類と地球のために、その力を捧げることができる者を……
お前の運命は、グアンロンチョンにとどまることではない」
シュエンウーは少し寂しげな表情を浮かべたが、ゆっくりと頷いた。
「……へい、分かりやした、大師さま。おいら、旅立ちの仕度、さっさとやっちまいます」
「そして――ロンウェイとフェイフォンと共に行け」
「えっ?なんか、特別なわけでもあんすかい、大師さま?」
「ロンウェイもまた、天選のひとり。ならば、同じ使命を持つ者として共に旅をするのは自然なことじゃろう?それに……あの娘の『運命』は、わし自身が見たのじゃ。彼女は、天選たちを導く者となる」
***
数時間後、シュエンウーはグアンロンチョンへ戻った。彼は市民たちに「天の協力の宝珠」の計画を説明し、人々は皆、喜んで協力を申し出た。
シュエンウーは朝から晩まで一人ひとりの元を訪ね、それぞれがヂーハオのために祈りや願い、希望の念を宝珠へと注げるように導いた。その際、彼は市民の両手を取り、気の流れを宝珠に集める術を丁寧に行った。
この工程は、何日もかけて繰り返された。──その合間、シュエンウーはロンウェイとフェイフォンにも、自分が彼らと共に旅に出ることを話した。
「えっと……でも、おいら、まだグアンロンチョンを離れる覚悟、できてへんねん。それにフェイフォンさんのバイク、一人用っぽいやろ?……おいら、どうやって一緒に旅すりゃええんだべ?」
「もしあんたも一緒に来るんなら、ズイエーのバイクの残骸から一台修理してあげるわよ」
「で、でも……おいら、こんな……デカい体でバイクなんて乗れるんか?それに、おいら……バイクって運転したことあらへんねん」
「じゃあさ、君がバイクの後ろに乗って、僕が君の肩の上に乗れば完璧じゃない?」
「あんた、あたしをサーカスの芸人だと思ってんの!? 二人をそんな風に乗せるとか!」
フェイフォンは少し考え込み、何か思いついたような顔をした。
「……そうだ、いいこと思いついた。ズイエーのバイクの残骸を使って、あたしのバイクにくっつける荷車を作るのよ!それで二人を乗せて、バイクで引っ張る形にすれば――
これなら水や食料、燃料もいっぱい運べるし、旅もずっと楽になるでしょ。作るのに数日はかかるけど、その間にあたしも療養できるし」
「天才か!やっぱり僕よりいいアイデア出してくると思ってた!」
「そんなの、難しいわけないでしょ」
シュエンウーはしばらく考え込んでいたが、ロンウェイがその手を取って励ます。
「行こうよ、シュエンウー!君、子供を傷つけるヤツは許さねえって言ってたよね?今この瞬間にも、世界中で悪党が子供たちを苦しめてるんだよ!」
その言葉に、シュエンウーは真剣な、そしてどこか悔しそうな表情を浮かべた。
「……ま、マジなんかい、それ」
「うん、ロンウェイの言う通り。ああいう盗賊どもは、誰にだって容赦しないのよ。ある意味、今の世界で一番の『悪』かもね」
その瞬間、シュエンウーの体に炎が巻き起こり、その瞳にも怒りの火が灯った。
「ほな行ったるわ!!あのクソ盗賊ども、仏の名において成敗したる!!」
「イェーーッ!!」
「……って、あんたそれ、お坊さんが言うセリフじゃないからね!?」
***
その後、フェイフォンは数日間自室に籠もり、ズイエーのバイクの残骸を組み直し、荷車を完成させた。
そして、一週間が過ぎた――
*****
ロンウェイとフェイフォンは、ついに出発の準備を整えた。
フェイフォンのバイクは以前よりも大型になり、後方には──
本来は荷車になるはずだったものが、実際には幅も高さも二メートル近い、美しくて立派な輿に仕上がっていた。強化タイヤと防水カバー付きで、旅にもってこいの仕様である。
「てかさ、なんでバイクも改造したの?」
「普通のバイクじゃ、こんな輿を引っ張るパワー足りないのよ。だから、エンジンをアップグレードして、カー並みのパワーにしたのよ」
「え?バイクに『アップル・グレート』したの?ていうか、なんで『母さん』並みのパワーにしたの?怒らせたらヤバいタイプ?」
「……もう、あんたには期待しないわ」
そこへ、レンとトンチンが野原から戻ってきた。彼らは、ヂーリーと一緒に祈りを捧げていたシュエンウーの元へと歩み寄る。
「ヂーリーさん、これで完成やと思います。天の協力の宝珠、ようやく仕上がったべ」
シュエンウーが手を開くと、そこには美しい淡緑色の宝珠が光り輝いていた。
「すごいよシュエンウー!前は透明だったのに、こんな綺麗な色に!」
「うん……これはな、グアンロンチョンの皆の気と希望が詰まった証や。『緑』は希望の色。つまり、この色は皆がヂーハオに託した願いの象徴なんや」
《レン》「じゃあ……いよいよ新たな天の宝珠が完成したわけだな、シュエンウー?」
「おおっ、レンさん!トンチンさん!」
《レン》「我々は、ポタラ寺を代表してお前に別れを告げに来た。
それと、トンチンはヂーリーさんをポタラまで同行させる任を負う。
この天の協力の宝珠をヂーハオに託すなら、ヂーリーさんが最もふさわしいと思ってな。
そして私は、お前が旅立った後のグアンロンチョンを守ることになっている」
「そうか……でも、お願いがあるんや。他のポタラの僧たちも、この宝珠に気と『よくなってほしい』って願いを込めてくれへんか?
もちろん、レンさんもトンチンさんも、大師様もや。一週間、寝ずに気を込め続けたけど……
みんなの力が合わさったら、きっとヂーハオの邪気も清められると思うんや」
《レン》「分かった。つまり……この宝珠を通して、グアンロンチョンの民とポタラの僧、みんなでヂーハオの『悪』を打ち払うってことだな」
──
グアンロンチョンの門前に、たくさんの人々が集まり、三人の出発を見送ろうとしていた。
《ヨンチー》「ロンウェイ、これからも世界の村を悪党から守ってくれよな!俺もお前みたいな立派なガードを目指して頑張る!」
《子供たち》「ロンウェイにいちゃーん!また来てねー!今度はヒーローの衣装で来てー!」
「もちろん!僕が『赤き天の龍 』、チームの赤いヒーローになるからな!」
《ヌーリー》「フェイフォン、たまには顔出してよね?いろんな旅の話、もっと聞きたいんだから!」
《フーリー》「……本当に、どうしてそんなに早く治ったのか理解できん。しかもちゃんと安静にしてなかったのに。
だが、健康には気をつけろよ、お嬢ちゃん。あんたはお坊さんでも、妖怪でもないんだからな」
「大丈夫よ、みんな。あたし、自分のことはちゃんと分かってるから」
シュエンウーは、最後の水の樽を輿に積み終え、振り返るのを一瞬ためらう。その背中を、ヂーリーがポンと軽く叩いた。
「頑張れよ、シュエンウー。あなたなら、その強さと大きな心で、たくさんの人々を救えるはずだ」
その言葉を聞いたシュエンウーは耐えきれず、ヂーリーに抱きつき、声を上げて泣き出した。
すると、それを見ていた市民たちも感動して一人また一人と彼に駆け寄り、大きな「お別れハグ」の輪ができる。
そこに――ロンウェイが唐突にダイブ!!
そのまま彼も抱きついて大混乱の中、フェイフォンはバイクのエンジンをかけ、旅立ちの準備を終える。
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バイクが勢いよく走り出し、ロンウェイとシュエンウーは後ろの輿から手を振った。シュエンウーはまだ涙をこらえきれない様子だったが、懸命に皆に笑顔を向けていた。
「また来てくれよなー!!」
「シュエンウー、元気でなー!!」
「ロンウェイ、ヒーロー姿見せてくれー!!」
「フェイフォン、アイツらのこと頼んだよー!!」
──舞い上がる砂埃とともに、改造バイクと輿は、あっという間に地平線の彼方へと消えていった――
──グアンロンチョン編──終わり──
ようやく『グアンロンチョン編』が完結した。正直、時間かかりすぎたし、体調のせいだけじゃなくて、単純に仕上げるのが本当に難しかった。特にどうやってこの章を面白く、読んでて楽しい形で締めくくるか…めちゃくちゃ悩んだ。振り返ってみると、導入部分も同じようにうまくいかなかった気がする。どっちも、自分の理想には届かなかった。ちゃんと頑張ったつもりなんだけどね。
でもそれも含めて、次に活かしていきたいと思ってる。僕の一番の課題は、たぶん説明が多すぎるところ。もっと『双子の剣』とか『House of G』から学んで、シンプルでストレートな会話を意識しないと。だって『シェンレンジャー』は、僕が書いてる4つの小説の中で一番シンプルにすべき作品だから。
次の章ではもっと頑張るつもり。応援よろしく。




