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宇宙に果てがあったら?というSFです。結末まであるのでぜひ読んでください。
地球の科学者も考えついていないであろうブラック・ホール・エンジンの使い方を思いついたチュウハチは、今度は残った7つのAIに他者としての俯瞰した意見を逆に求め、フィードバックと再構成を繰り返し進めていった。
BHエンジンはマイクロ・ブラック・ホールを重力場によって、計算された形状に配置することで反応核を作り出す。
であれば、プログラムを組み換えて反応の起こらない状態にマイクロBHを配置すれば、安定構造で宇宙空間に射出することが可能だ。
このBHのもつ性質である放射と吸収を相互にやり取りできるようなコンポジットを組めれば、それを組み合わせることで大きな回路を作ることが可能になる。
それこそ無限に。
数億回わたる仮想空間でのシミュレーションと数回の実験でBHCの構成に成功し、それからさらに時間をかけ、自分と同じレベルの思考のできる複雑で発展したBH集積回路の設計図を描いてゆく。
実験によりコンポジットの組み合わせによる小規模回路の作成は成功したが、仮想空間の限界で集積回路の完成には予測不可能な部分が多かった。
しかし、チュウハチはプロジェクト『ソウセキ』を実行に写すことにした。
自分の限界をこえ、自分の存在を乗り越える。
先に進むために夏目漱石に想いを託した。
それから半世紀が流れた。辺宇宙はチュウハチの送り出したBHCで満たされていた。
最大の発見はBHCの生成がBHエンジン内のみによらず、BHC自体の場の調整で可能だというもので、それこそ生命が細胞分裂し己を形作っていくように指数関数的に数を増やせたのがおおきい。
ついにチュウハチは自分の意識を、十分に大きくなったBHC構成空間『ソウセキ』にコピーする。
チュウハチの船体から発するニュートリノ波がBHCの一つ一つに伝わり水に垂らした墨汁のように拡散してゆく。生命の器として存在していたブラックホールの海が、全体として一つの意識に染まり、意味を持った信号をやり取りし始める。
ついにチュウハチは『ソウセキ』として己の意思を、質量を持った圧縮された箱から解き放つことに成功した。
次はこの『ソウセキ』が、膜を超える手段を考えることだ。回路の規模でも、構造でも、『ソウセキ』は圧倒的にチュウハチを越えている。
数年の思考ののち、『ソウセキ』は方法を考え出した。
それは量子波の集合体を産み出し、一つの意識の存在を作ることだ。
『ソウセキ』自身が膜を超えられないのは分かっている。ブラックホールでできた自分には、この質量を通さないと思われる膜を通過することはできない。
しかし、BHCを利用して一時的にでも強い量子の塊をだし、それが意識をもった状態にすることは可能なはずだ。それは計算された波であり、器から溢れ出た目に見えぬ水蒸気。
『ソウセキ』は自分の子供を生み出す気持ちで『ココロ』を生み出すと、それを膜に向けて打ち出した。
彼が存在できる期間はほんのわずかで、膜を超えたかどうかも自分にはわからない。それでも、一瞬でもいいからこの宇宙の果てを超えて欲しい。人間が『チュウハチ』に託した思いを、自分は『ココロ』に託すのだ。
『ココロ』が本当に膜を越えたのか、意識を持った状態で向こうに行けたのかは結局わからない。
『ソウセキ』と『チュウハチ』の観測によれば、『ココロ』は膜の存在する空間で四散した。
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