流れ行く雲のように
道央自動車道を札幌方面へとハンドルを切り、日曜日にはトラックが少なくて走りやすいな…などと独り言ながら、割りと平気な感じを装ってみる。
ここ数年…穏やかな生活を送って来た。
妻の地元に引っ越しをして、気の合う仲間と自然農を始め、本来閉鎖的である地元の人達にも少しずつ受け入れてもらえるようになった。息子も学校でたくさんの友達が出来て、毎日を楽しんでいるようだ。
日々の暮らしの細やかな問題はあるものの、本当に平和な日々である。どんなに考えても、切った張ったの世界など想像も出来ないほどに…。
しかし、少し視点を変えてみれば、大国が仕掛けたくだらない戦争のトバッチリが、今もこの国を…世界を混乱へと導いている。
隣国は覇権を広げようと、様々な工作を仕掛けているし、パワーバランスを崩そうと数十年、数百年単位で虎視眈々と狙っているのが現実だ。
この平和が偽りの虚像に過ぎず、僕らの目隠しが外された時には、既に処刑台に登らされているのかもしれない。
『…戦いなさい…』
余りにも、直線的な、逃げ道のない言葉。
戦いなさい…既に敵は目の前にいて、貴方に斬り掛かって来ているのだから。いつか来るかもしれない未来の話ではない。振り下ろされた刃から、大切な人を護りなさい。そう言う意味だ。
だから、閉ざされた目を開かなければならない。塞がれた耳を、麻痺した神経を研ぎ澄まさなければならない。
まるで、長時間正座して痺れた足に血が通い始める時の、あの何とも言い難い感覚が全身に広がる。
「駄目だ…思考が狭くなって来るな…。今の俺は隙だらけだ。」
高速道路はなだらかなスロープを下っている。
ふと西の空を見てみると、幾筋もの薄い雲が秋色の薄い青に広がって、まるで何枚ものセル画を重ねて作ったかの様な不思議な光景になって広がっていた。
「ははは…これはこれは…何のご褒美だろうね。お陰で少し力が抜けました。ありがとうございます。」
そうだな、何時も平常心を保たなければ。そして、些細な違和感を感じ取らなければ、今の自分など直ぐに狩られてしまうだろう。
「…強くならなきゃだな…。」
出来れば、あの雲のような…掴みどころのない強さを目指そう。大切な誰かを、大切な何かを護るために。




