↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

時の中で

「ふぅ…いい香りだね。」


「ふふっ、ちょうど収穫してきたばかりだから。何か温かいものでも飲む?」


部屋の中では、数種類のハーブを吊して乾燥している最中のようだ。まだフレッシュな香りが心地の良い空間を作っていた。


「ええ、もちろん。オススメでブレンドしてもらえますか?」


「わかったわ。」


オススメのブレンドハーブティー…メニューには無いが、此処を訪れる人の殆どがオーダーする「今のあなたへのハーブティー」。


彼女は薬草棚に向かうと、おもむろにその内のいくつかの引出しを開け始める。


「これと…これ。…何だかこの子も主張してくるわね…。それと、これかしら。う~ん…確かにいつもと違った感じがするわね…。」


そして、それらを木の皿に取り出すと、一つ一つ確かめるように紙に何かを書き出していく。


「チョロチョロと水の音がするわ…そんなに大きく無い水の流れね。それから…とても小さな祠が見える…。女性の神様ね。長い…これ、何だろ…棒?かな…。」


「…え?…何で見えるんだろ…」


「う~ん…その女神様がね、どうしても伝えろって、そう言うのよ。」


そんな会話を交わしながら、彼女は魔女らしくハーブをブレンドしていく。そして棚から取り出したランプを灯して、それを火にかけた。


「でも…流石にね…ここから先は別料金だけど、どうする?」


「放っては置けませんよね…もともと、今回来たのはその為ですから。今日、これから出来ますか?」


「そうね、体調も良いし…いけるわ。」


「それじゃあ、お願いします。」


彼女…白の魔女は向かいの椅子に座ると、テーブルに置かれていた幾つかの石の中から、一つの水晶を選び取るとそれを左手で包み込みながら目を閉じた。


「今から貴方の情報を取りに行くわ。少し待っていてね。」


「…はい…。」


『…彼女…彼女は貴方との繋がりを持つ…護っている大勢の中の一人…』


『…戦いなさいって、言ってる…』


『…女性を護りなさいって…』


『…水を護って欲しいとも…』


『…えっ!?…彼女は生前、貴方に護られていたらしいわ…。だから今は貴方を護っているって…。』


『…戦いなさいって…』


「僕は戦う力なんてありませんって…大丈夫ですか!?」


白の魔女は僕を見つめて、泣いていた。


『…私ね…見えちゃったのよ…ヨボヨボのおじいちゃんになった貴方が…戦っているところ。ボロボロになってもね…凄い目をして…カッコ良かったわよ…。大丈夫…貴方は強いわ。』


「そう…ですか。」


そうか、そこで自分は死んだんだな。果たして彼女が見た光景は、過去なのか…それとも未来なのか…それは分からないけれど…。


「大丈夫ですよ。護らなきゃならない大切な人の為にも、僕は死ねませんからね。」


『ふふっ…そうね。』


真っ赤な目をして涙を浮かべたままの白の魔女は、無理やりな微笑みを浮かべてそう言ってくれた。


「さて、聞きたい事は聞けました。今日はこれで帰ります。」


「あら…もう帰るの!?もう少しゆっくりしていけば良いのに…。」


「やらなきゃいけない事が出来ましたから、また来ます。」


「そう…あっ、あのね、その女神様が、一生懸命貴方に話しかけているのに、全然受け取ってくれないと言ってたわよ。」


「そ、それは申し訳ないですが…僕の力不足ですよ。」


「いいえ、體も精神も既に受け取れる状態になってるらしいわ。でも、それなのに貴方が拒否してるんだって。見かけによらず頑固なところがあるのね。」


「…ははは…まあ、自覚はありますね…。それじゃ、また。」


すっかり冷めてしまったハーブティーを飲み干すと、魔女の隠れ家をあとにしたのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。