小さな白い魔女
愛車の軽トラで美唄富良野線を2時間程北上して、旭川空港を目指す。
この辺りも水田が広がる稲作地帯で、黄金色の稲穂が頭を垂らし、たくさんのトンボが飛び交っていた。
「今年は豊作かな…。」
去年は米不足からの米価格上昇、そして今年に入り一転した米単価の下落。米農家さん達は経営が立ち行かなくなり、離農しなければならない方が多くいるらしい。冷静に経営状況だけを見ると、この景色が来年は見られないかもしれないと不安な気持ちも湧いてくる。
旭川空港を右折して、更に山を抜けると目的地…龍神様が居るという小さな町に着く。
緑豊かな公園の敷地を横切ると、建ち並ぶ住宅街。その外れにある1軒の庭先に、杖の様な木の枝に掲げられた白いハンカチが目に入った。
軽トラをその家の前に横付けして、長時間の運転で強張った體を解しながら車を降りる。
途端に肺に染み込む様に、爽やかな風が吹いてきた。
「ここの空気はいつも澄んでいて気持ちがいいな…。」
野山のような庭には、良く見ると様々なハーブが植えてある。そして、そこに飛び交う昆虫達。自然と調和した美しい庭だと、素直に感心する。
呼び鈴を鳴らすと、「は~い、どうぞ〜」と声がした。
「あらあら、いらっしゃい。珍しいお客様が来たわね。」
「こんにちは。ちょっと相談があってさ…。」
「相談!?まあ、何かしら…ちょうど良かったわ、今日は暇みたいなの。さあ、入って入って。」
玄関先の古びた看板には「魔女の隠れ家」と書かれていた。




