婚約破棄されて、私の世界は終わった。
この作品は生成AIを使用して作成しています。
石造りの牢は、冷たさすら感じさせなかっ―た。
寒さも、飢えも、痛みも――すべてはすでに過ぎ去った後だったからだ。
ただ一つ、残っているものがある。
憎悪。
それだけが、公爵令嬢エリシアの中で、なおも燃え続けていた。
―――――――――
「――婚約は、ここに破棄する」
国王陛下主催のパーティーの最中。
その言葉は、あまりにも軽く、あまりにも当然のように告げられた。
彼女の婚約者である、いや、婚約者であった王太子は、視線すら合わせなかった。隣には別の女がいる。かつて、エリシアが慈しみ、庇護していたはずの少女だった。
「彼女は国を脅かす危険な魔力の持ち主だ。すでに証拠も上がっている」
証拠。
その言葉に、エリシアは目を見開いた。
証拠など、どうでもよかったのだろう。必要だったのは理由だ。排除するための、正当な理由。
そしてそれは、用意された。
国王も、王妃も動じる様子はない。
「……父上」
縋るように振り向いた先で、公爵は目を逸らした。
母は、すでに席を立っていた。
――それが、答えだった。
王命で結ばれた婚約だった。
幼いころからエリシアの魔力は豊富で、そ――――――の魔力と、積み上げてきた知識と、誠実さと。
何より、人一倍、いや何倍もの努力で国に貢献してきたつもりだった。
それが、魔力が多すぎて危険だ、と言って踏みにじられた。百年以上前に魔力暴走があったから危険だ、と。
国のために、尽くしてきたのに。
民のために、尽くしてきたのに―。
なにより、あなたのために尽くしてきたのに―――!!
―――――――――
そうして、エリシアの魔力は封印され、王宮の地下牢獄に投獄された。
封印の儀は、丁寧で、残酷だった。
彼女の中に満ちていた膨大な魔力は、何重もの呪印によって閉じ込められた。暴れ狂う奔流を、無理やり小さな器に押し込めるように。
骨が軋み、血管が裂けるような感覚。
叫び声すら、結界に吸われて消えた。
「これで安心だ」
誰かが、そう言った。
何が、安心なのか。
――自分たちが、だろう。
牢に落とされてから、時間の感覚は曖昧になった。
「ああああああああああああああああああああああああ!!!!」
最初は、怒りだった。
封印され、体の中で渦巻く魔力が外に出せずに肉体を軋ませ、痛みと怒りがごちゃ混ぜになっていた。
「あ…」
次に、感じたのは、絶望。
どれだけ叫ぼうとしても、声は誰にも届かない。
いや、そもそも声を出せているのかもわからなくなってきた。
「 」
やがて、何も感じなくなった。
だが――
完全に空になることは、なかった。
底に沈殿するように、黒い感情が積もっていく。
裏切り。
嘲笑。
無関心。
それらは腐り、混ざり、やがて形を持ちはじめる。
「●●●●●●●●●●●●!!!!」
封じられたはずの魔力が、それに呼応した。
行き場を失った力は、外に出られないまま、内側で膨張する。
怨嗟を餌にして。
「……ああ」
ある日、エリシアは気づいた。
自分の中に、“何か”が生まれていることに。
それは魔力ではなかった。
もっと濁っていて、もっと重く、もっと――禍々しい。
「いいわ」
彼女は、ひび割れた唇で呟いた。
「全部、くれてあげる」
この国に。
あなたに。
この世界に。
自分を否定した、すべてに。




