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後編

一応、別視点を入れての完結です。


こちらは肌色多めなので苦手な方はご注意くださいm(_ _)m


直接的には表現してないつもりですが……。


暇つぶしにでも、サラッと読んでいただければ幸いです。

「ほら、来いよ。今日は、我慢してくれてありがとうな」



 そんな男前な台詞を吐くのは、ベッドで待つだんちょー。



「いつもは俺の部屋がいいって言うのに、今日は珍しいな。何かあったのか?」



 俺のあてがわれた部屋のベッドに我が物顔で寝転がっているが、だんちょーだから腹は立たない。

 なんなら自分の隣をパンパンと叩いて誘ってくる姿が無防備で可愛い。

「ただの気分転換みたいな〜? だんちょーの部屋だと、邪魔入ったりするし〜」

 誤魔化しに半分ほどの真実を混ぜ込むと、懐へ入れた仲間を疑わないだんちょーは疑う素振りもない。

「まぁ、確かにな。ちび共が来たりもするしなー。情操教育には良くないよな」

 くくくく、と楽しそうに喉を鳴らして笑うだんちょーは、俺にベッドへ縫い付けられても、まだ笑っている。

「……だんちょー」

「はいはい、わかってるよ。集中するから」

 拗ねて呼びかけると、くすくす笑われて頭を抱え込まれるように抱きしめられる。

 だんちょーを抱く時は、抱いてる側なのに抱かれている気分になる時がある。

「……今回も、皆が無事で良かったよ」

 耳元で睦言のように囁かれ、ぽふぽふと背中を叩かれると、あの『お姫様』へのドロドロした気持ちが薄れ────る気がする。

 気がするだけで、ぜーんぜん薄れないんだけど。

 とりあえず、今は目の前のだんちょーに集中しないとね。

 独り占め出来るの、本当に少しの間なんだし?




 ──今日は、ゲストも来る予定だからねぇ。




 くすくすと笑うと、上機嫌だなぁ、とだんちょーが嬉しそうに笑ってくれた。

[視点変更]



 本当はいけない事だとわかっていますわ。



 でも、美しいあの方があたしへ向けた愛しげな眼差しが離れませんの。



 騎士団長との愛が真実の愛だと思ったのは、勘違いだったのかもしれません。



 それを確かめるためにも、あたしはあの方のいらっしゃる客間を目指し、コッソリと真夜中の廊下を歩いていく。

 傭兵のおかげで、平和を取り戻したとはいえ、長き戦いで城の中はくたびれ、見回りに回せる兵士も少ないため、傭兵達のいる客間の方は見回りがいない。

 元恋仲でした傭兵団の団長さんがご好意で、自分達の方は自分達で身を守るから、と。

 本当にお優しい方で……。

 付き合っている間は、普通の女の子になった気分でしたが、あれは真実の愛では無かったのですわ。

 騎士団長の愛の言葉で正気にならなければ、危ないところでしたわ。

 いくらお優しい方とはいえ、一国の姫の相手としては、彼は駄目だったのですわ。

 あの美しい方こそ、あたしの運命の人。真実の愛ですわ。

 今ならわかりますもの!


 薄暗い廊下で、あたしは力強くうなずき、目の前の扉を見つめる。

 ここを開けたら、きっとあの美しい方があたしを見て、


「君こそが我が運命、真実の愛を交わそう」


 そう言ってくださるはずですわ。

 うふふふと、歓喜で震える胸をそっと押さえながら、あたしは静かに扉を開ける。

 どうせなら、ビックリさせて差し上げないと。




 夜遅い時間なせいか、部屋全体は薄暗いが、ベッドの側のランプだけは煌々と灯され、ベッドの上の光景はハッキリと見えた。

 あたしが見惚れた美しい方は、男の顔をして誰かをベッドへ組み敷き、愛しさを隠さない表情で何事かを囁いている。

 それに応えるのは、か細き女性の声──では無かった事に、あたしは目を見張って完全に固まってしまう。

 聞こえてきたのは、少し前までよく聞いていた、優しい団長さんの、甘やかすような優しすぎる声。



「そ、そんな……っ」



 思わず声を上げると、団長さんがハッとした表情でこちらを見て、上にいた美しい方を押し退け……そこで、あたしは美しい方の顔を見て、恐怖で震える。

 タオルを腰に巻き、あたしを心配してくださる団長さんの後ろで、美しい方は美しい微笑みを浮かべ、あたしを見ている。

 つい少し前なら、心が踊ったであろう瞳は、 ただただあたしの心を冷たく凍らせる。

 団長さんへの嫉妬ではない。

 男同士が汚らわしいと思った訳でも無い。

 先程まで愛しく思えた相手が、人の形をした化け物だと気付いてしまったから。

 あたしを見つめる瞳は、何処まで美しく澄んでいるのに、何故かドロドロした底なし沼を思わせる。



「あー、大丈夫か? メイドを呼んだ方がいいか……いや、さすがに……」



 駆け寄って来た団長さんは、背後の美しい方の様子に気付いてないのか、立ちすくむあたしへ触れずにわたわたとしている。

 こんなにも優しい人がくれる愛を、どうしてあたしは捨てたんだろうか、とそう考えた瞬間、ゾッと全身に鳥肌が立つ。

 恐る恐るそちらを見ると、美しい(かんばせ)からはすべての感情が消え、まるで生きた彫像のようなイキモノがあたしを見ていて……。



「ったく、なんて顔してやがる。もともとお前が悪いんだろ?」



 駆け戻った団長さんがパコンッと小気味いい音をさせて、美しい方の後頭部を叩くと、一瞬で生きた彫像がただの美しい青年へと変わる。



「お前の流し目は誤解されやすいんだから、気をつけろよな? ──おい、誰かいるか?」



 むぅと音がしそうな拗ねた顔をする美しい方の頬を軽くつねり、団長さんが外へと声をかける。



 すると、すぐに──、



「はぁい!」



と、あの時、お金の箱を運んでいった美少年が、窓から入ってくる。



「すまないが、お姫様を頼めるか?」


「はい!」


「くく、ありがとう。お前はいい子で助かるよ」



 いつもは悪戯っ子のような団長さんの笑顔が、先程までの行為のせいか艶めいて見えて見惚れてしまう。



「悪かったな。俺が口を挟む事じゃないが、こいつはちょっと捻くれてるから、付き合う気なら相当な覚悟がいると思う。でも、悪いやつじゃないんだ」



「……ごめんなさい」



 素直な言葉が口から洩れ、団長さんは付き合っていた時と同じように優しく笑ってくれ、頭を撫でられた──けど、その手はすぐ離れてしまう。



「俺のような汚い手で、お姫様に触れるべきじゃ無かったんだよな」



 自嘲するような団長さんの言葉を、必死で首を振って否定する。

 感情が高ぶり過ぎて、涙が出てくる。泣くつもりなんて無かったのに。

 なんで、あたしは、さっきまであんな騎士団長の薄っぺらい愛の言葉で揺らいでいたんだろう。



「……あー、くそ、お姫様が本当に性悪なら、簡単に切り捨てられたのになぁ」



 あたしの涙を拭いながら、団長さんは困ったように笑い、また頭を撫でてくれる。



「作戦変更だ。お姫様は連れて行く。騎士団長は、まぁ放置で大丈夫だろ」



 団長さんが苦笑いでそう言うと、空気になっていた美しい方は、本気で嫌そうな顔をしてから、柔らかい瞳で団長さんを見つめて笑っていた。

 とても綺麗な、優しい笑顔だった。






 見惚れているうちに、あたしは傭兵団の皆様と共に行く事になり、祖国は騎士団長が王となる事で話がついていたのはビックリしました。

 もともと騎士団長は、薄いですが王族の血を引いていたので、貴族の方々も納得してくださったみたいです。

 あたしはずっと仕えてくれていたメイドと、あたしを守ってくれていた平民出の騎士と一緒に今日旅立ちます。

 団長さんはもう恋人ではないけど、相変わらず優しいです。

 裏切った事をずっと謝ってたら、次謝ったら罰金な、と言われてしまいました。

 でも、何故団長さんは、あたしを連れ出してくれたんでしょう?

 あの……夜の営みを見てしまった口封じ的な、ものでしょうか?

 思わず思い出した光景に頬を染めると、遠くに騎士団長が見えました。

 隣には──綺麗なドレスを着た女性を数人侍らせて。



「はっはっは、減ってしまった王族を早く増やさないとな」



 腐れ落ちろと思ったあたしは悪くないですよね?



「ほら、行くぞ。あいつらの仕える先を探すついでに、お姫様のいい人が見つかるといいな」



 団長さんも見えていた筈ですが、まるで見えていないように快活な笑顔であたしの手を取ってくれます。

 向かう先には、団長さんのお仲間である傭兵さん達が待ってくれています。

 特に女性陣からは大歓迎されました。

 不思議な事に、団長さんの元恋人とか現恋人はいらっしゃらないそうです。

 皆さん、やはりとてもお綺麗な方ばかりなんですが、何故か仮面を着けてらっしゃいます。

 団長さんに聞いたら、ワケアリな方がいるのと、単純に素顔の方が目立って騒がれるからだそうです。で、あたしも仮面組に仲間入りしました。

 祖国を離れるのは寂しいですが、団長さん達のおかげで持ち直しましたし、騎士団長がいるから大丈夫でしょう。

 あれだけ団長さん達を嘲って、なおかつ色々のたまってらっしゃったんですから、きっと立派に導いてくれると信じてますわ。



「どうした? 何か楽しい事でもあったか?」



「ええ、とても楽しみな事が出来たんですわ」



「そうか、なら良かった。城から連れ出して、こんな生活なんて最悪とか思われてたらどうしようかと思ってたよ」



 くくくく、と笑う団長さんは、自分が性格悪いとかおっしゃいますが、全然お優しいですし、甘々だと思います。

 手酷い振り方したあたしを許してくれたり、騎士団長へ止めを刺さなかったり、騎士団長の馬鹿っぷりを指摘しなかったり、騎士団長の……。



「こーら。今度はなんか悪いこと考えてないか? 悪戯は控えめにな?」



 笑顔に黒さが滲んでしまったのか、団長さんから優しくたしなめられました。



「はぁい!」



 仮面を着けて笑うあたしは、もうコチラ側──。



 一ヶ月後──、



「あらあら、もう落ちてしまったみたいですわ」



 祖国が消えたという知らせを聞いて、あたしは仄暗く微笑むのだった。

何故か、お姫様が真っ黒くなって終わりました。


謎です。


当初の予定では、騎士団長と一緒にざまぁされる予定だったんですが……。


滅びまでの間に、きっと騎士団長には色々あって、ざまぁ、ってなったんだろうなぁと思いながら書いてました。


お目汚し失礼いたしました。

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