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リヴェンジャーズ ~奪われし者たちの復讐歌~  作者: 我楽娯兵
初めての復讐
24/26

小事と大事

 夜も更け、僕たちはコソコソと排水路を這って回るネズミのように地面を低姿勢で走りっていた。

 北西部の山中にある原子力発電所と併設された高炉へと僕たちは侵入を試みていた。

 背中には安いバックパックを背負い、その中にはアームの遺体、セルナノメタルの集合体である装皮を詰め込んでいた。

 硬く守られた高炉施設の厳重な警備体制。

 と言っても人間の巡回等の警備はなく、殆どをドローンを利用した自動化されたものである。

 それが知れただけでも僕たち(主にジェフリー)には御の字であり、カルロの用意したチンピラご用達の国民登録IDジャマ―ので僕たちのIDを読み取られずに済む。


「ここだ。高炉に一番近いフェンスだ」


 ジェフリーは動きを止め、施設周辺に張り巡らされたフェンスを確認して自身の背負うバックパックよりボルトクリッパーを取り出して、説明を開始する。


「ライスボールとカルロは段取りは分かっている筈だが、ジャックはまだ分からないだろう」


「ああ」


「IDジャマ―はドローンの俺達を写したカメラ映像にノイズを入れる。この映像データが中央警備局に送られてここに警備が到着するのはおおよその予定時間は一時間くらいだろう」


「一時間以内にこいつとの片を付けるってことか……分かった」


 僕は今からやる行いをしっかりと頭に叩き込んで、差し迫る時間に緊張感が全身を内側から染み込ませて筋肉の奇妙な強張りを覚えた。


「だが、フェンスのスキャニングで時間はもっと短いはずだ。お前ら準備はいいか」


 ジェフリーは僕たち三人の顔を見て覚悟を確認した。


「ああ、僕は覚悟を決めた」


「古巣の仕事だ。そうそう体からは動きは貫けんよ」


 僕と教授はそう言う。

 カルロはマリファナタバコを根元まで吸いながら手を軽く振って応じる。


「カルロ。仕事中は葉っぱ吸うんじゃねえよ」


「気合の一本だ。さあ始めようぜ」


 マリファナタバコを吸い切って吸い殻を地面で踏み消して土を掛ける。

 呆れ顔で仕方ない言った様子のジェフリーと教授は、時間が差し迫っていることを悟り、フェンスの線にボルトクリッパーの刃を通した。

 バチンバチンとフェンスの網を切り開き、人一人が何とか通れる穴を開け僕たちは施設へと侵入を開始した。



 ………………



 広大な敷地に僕には何のためにあるのか理解できないパイプのがあちこちから伸びてそこかしこへと突き刺さっている。

 この光景からしてまさに発電所と言ったところか、僕のお頭ではどの部分がどの役割を果たしてその役割もろくに理解できない構造を取っている。

 二十五世紀の世界で原子力は生活の中核だ。クリーンエネルギーを叫ばれていた五世紀前の世間では原子力は環境を破壊し、事故の影響で生活圏を著しく奪う悪魔の施設と叫ばれていたようだ。

 実際その時はそうであっただろうが、五世紀も時を進めれば放射能も克服しよう。

 穀物は遺伝子組み換えで放射能に頗る強いものが主流となり、人間自体も放射能耐性を得るため抗放射能血清を開発して接種を義務化されている。

 要は放射能の影響をこの世界では受けない。

 害となっていたモノは今では無害だ。技術革新様様だ。


「左の奥、デカい鉄扉の先が高炉だ」


 ジェフリーが指で指し示す錆の浮いた大型トラックが軽く通るであろう鉄扉。かなりの間使われていないのか錠前も錆で扉とくっ付いているようだった。


「ライスボール。この扉の開閉器に電気は通っているか確認しろ」


「言われなくともやるさ」


 扉横の端末に持参したハッキング端末の端子を差し込んで解析を開始する教授。

 カルロは手動開閉装置が稼働するかどうか確認してこの場を離れた。


「僕はどうすればいい」


「こっち手伝え。錠前を壊さん事には開閉器が動いたところで扉が開かねえからな」


 そう言ってジェフリーは錠前の前に座り込んでバックパックから様々なものを取り出した。

 最初に取り出したのは手堅く、そして物を壊すには持って来いのバールであった。

 力任せに扉と錆で融合してしまった錠前の隙間にバールの先を差し込んで全身の重さを掛けて引き剥がそうとするがまるで剥がれそうになかった。


「クソボケがッ。きちんと手入れぐらいしてろよ」


「どうしようもないな。手伝うぞ」


「いやいい。こいつは二人でどうこうできる状態じゃねえ」


「じゃあどうするんだ」


 軽い舌打ちをして服の下に隠し持っていた何やら発煙筒のような棒を取り出した。

 金属でできた棒。持ち手の下にはつまみのようなものが付いていた。


「こいつで溶かす。離れてろ。火花で服燃えるぞ」


 ジェフリーの凶悪な笑みで何となく察しがついた。ミリタリー系の道具だなと。

 恐らく準備段階で連邦陸軍からがめてきたのだろう。こういった作業に使う工作道具だ。

 僕が離れた事を確認したジェフリーは棒の先端を錠前に押し付けて、後ろのつまみを勢い良く引いた。

 瞬間、ジュボッっという火のつく音が響き、目の眩むような激しい閃光がジェフリーの持つ棒の先から発せられる。

 十秒ほどか、眩い閃光が視界を奪いすぐさまその棒の先から発せられる輝きは失せる。

 まるで魔法のように、錠前があった個所がドロドロに溶け、大穴が開いていた。


「スゴイな、なんだそれ」


 眼を擦りながら僕はジェフリーに近寄って聞く。


「テルミットトーチっていってな。戦車の装甲にも余裕で穴を開ける便利グッズだ」


 まるでナードが集めるコレクターアイテムのような言い方でジェフリーはその使い切った棒を施設の屋根の上へと投げ捨てる。

 僕も男だこういったモノには興味があるがジェフリーの執着心は少し病的だ。

 何がどうなれがここまで武装する必要でがあるのか不明だ。

 僕の警戒心不足なのだろうか。それとも腰に巻いているベルト、セルドライバーがあるからの余裕からなのか、どちらにしろ少しジェフリーの武装収集癖は少し抑えるべきだろう。


「ジェフリー、電源は来ている。いつでも開けるぞ」


「手動開閉装置も生きてる、手でも開けれるぞ」


 教授とカルロはそう報告してくる。

 ジェフリーは少しだけ考え込んで、指示を飛ばす。


「分かった。カルロ、開閉器は壊しておけ。ライスボール、開閉のタイミングをタイマーで設定できるか」


「ああ、出来る。時間の設定は」


「一度開いてニ十分後に閉じ始めろ」


「了解した」


 手早く操作卓を操作して、扉が奇妙な音を立てて空き始めた。

 僅かに開いた扉の隙間から飛び出てくる肌に纏わりついて突き刺してくるような熱気。

 見えた光景は巨大な炉が立ち並び、半自動化された薄暗い製鉄施設の全貌だった。


「手頃な炉にさっさとこいつをぶち込んで片付けるぞ」


 僕たちは施設の中に踏み入った僕たちは稼働している炉を探し、走り回る。

 火花の散る炉はどれも巨大な蓋がされドロドロに溶かされた金属を溢れさせないようにしていて、異物を入れられなくしている。

 操作卓に走って向かう教授が画面を見て渋い顔をしていた。


「今稼働している炉はどれも蓋をされて開けることは出来ない。どうするジェフリー」


「炉の素材の保管庫は」


「今日の稼働はこれで全部だ。追加素材も来るかもしれんが、この操作卓ではそこまでの情報は分からないぞ」


「ッチ。クソが。──仕方ない。無理やり開けるぞ」


「どうやってだよ」


 僕はジェフリーに聞くと、その目は邪悪に満ちた目でギロリと見てくるので何となくだが理解できてしまう。


「お前の腰に巻いているのは何のためだ」


「ふざけるなよ。あんなのに触ったら火傷どころじゃすまない」


「私もそれは反対する。坊やの変身は不完全だ、安定性に欠ける」


「何でもいいから早くしてくれよ。時間がねえぞ」


 反対する僕と教授を尻目にカルロは手首を叩いて時間がないとジェスチャーをする。


「変身中のお前はどれだけ傷を貰っても修復するみたいだ。アームのパンチを受けてケロッとしてんだろ」


 たしかにそうだ。アームのマッハにも達するパンチを受けて僕はこうして健常者として立っている。

 無論変身中は傷を負っていたが変身を解除した途端にその傷がなくなっていると言う事は、ジェフリーの言うように修復効果があると言う事だ。

 覚悟を決めるしかない。

 ベルトに手を伸ばしたとき、その手を止めようと教授が掴んでくる。


「やめるんだ。セルメタルは細胞結合で成り立っている。ある程度の熱には耐えうるがこれほどの高熱には耐えられない可能性がある」


「……心配してくれてどうも、それでもやるしかないみたいだから、やるだけやってみるよ」


 僕はセルドライバーの電源に指を伸ばし、スイッチを押した。


「変身」

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