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リヴェンジャーズ ~奪われし者たちの復讐歌~  作者: 我楽娯兵
初めての復讐
23/26

苦難

 ぼうぼうと音を立てて臙脂色の熱気を放ち、隠れ家の裏にあった焼却炉でアームの装皮を溶かそうと僕たち四人は躍起になっていた。

 整備もろくにされていない打ち捨てられた焼却炉をコンクリートやら分厚い鉄板やらでどうにかこうにか補強して、ガソリン、酸素を次々と投入してヒーロー殺害の物的証拠の隠蔽をしてみるも。


「溶けねえな……」


 絶望的なまでに耐久性の高いアームの装皮は赤く赤熱するばかりでその原型はとどめていた。

 一体どれだけ試しただろうか。ジェフリーは爆薬で粉々にしようとダイナマイトと共に爆破してみてもその形は歪むことなく、カルロが溶解させようと化学薬品に付ければ照りがよくなり輝きが増すばかりであった。

 試行錯誤の末の高熱による溶鉄作業に僕たちは指を咥えて待っているばかりだが、どれだけ試しても傷の一つも入らないその耐久性に半ば諦めたように僕はため息を吐いた。

 ライスボール教授も溶けることなどないと見透かしたのか、隠れ家のガソリンスタンドに引っ込んで優雅にコーヒーを楽しむ始末だった。


「そろそろいい頃合じゃないか?」


「そうだな。出してみるか」


 僕が分厚く高い火柱を上げる焼却炉を指さしてジェフリーは時計を確認して超高温用の耐熱グローブを手に嵌めて焼却炉の扉を開けて、火掻棒で中身を取り出した。

 そこには──。


「溶けないな」


「溶けねえな」


「溶けんなあ」


 僕もジェフリーもカルロも、三人とも同じ言葉を言って唖然とそれらを睨みつける。

 赤々と緋色の色と熱気を放つアームの装皮。決して壊れることも溶けることもない不壊の耐久性に僕たち三人は頭を抱えるばかりだった。

 僕は呆れ交じりにその場に座り込んで、カルロは諦めたようにマリファナを吸う。

 万策尽きたジェフリーは苛立ち紛れに火掻棒を遠く空に投げ捨て、ゴミを蹴り上げる。

 爆破も無理、薬品も駄目、火で炙ろうとも無用となれば一体どうすれば『これ』を処分できようか。

 ジェフリーの頭の中の計画ではまだOSEにアームの死を知られるわけにはいかない。

 そんなこんなでこうして確定的証拠になりうるセルナノメタルの集合体であるアーム装皮の処分は確実に行わなければならないのだが、こうも頑丈では手の打ちようがなかった。


「溶けたか」


 裏へと回ってきた教授の顔は見透かしたように冷たい色を帯びており、僕たちの徒労に終わった姿を見て目を細めてああやっぱりと言った様子だった。


「冷やかしなら死ね。銃なら貸してやるぞ」


「バカをいえ、私は愚鈍なお前たちに助言をしに来たんだ」


 赤々と輝くアームの装皮の焼けた鉄の匂いに顔を顰めながら焼却炉を見て、教授は鼻笑い。

 指を差して指摘してくる。


「密閉性が足りん。酸素供給も甘い。それでは溶かせて鉄がせいぜいだ」


 火箸で装皮を掴み上げる。


「セルナノメタルの融点は3,500°Cピッタリ。タングステンの融点を少し超えるくらいだ、一小市民がどうこう出来るレベルを超えている」


 ジェフリーは苛立った様子で振り返り、怒りの形相で顎をしゃくって喚いた。


「じゃあどうしろってんだ! ああ!? 爆薬も駄目、光熱も駄目。今度は何か? 核爆弾でも持って来いとでもいうのか!?」


「そこまでする必要はない。現行の技術で最も手っ取り早い方法には近づいているからな」


「ああ?」


「焼却という着眼点は褒めてやろう。だが火力が断然足りていない。──T1000は何で溶けた?」


「──あ」


 僕は声を上げてその言葉の真意に気づいた。

 僕は映画好きだ。様々な名作映画を見てきたと自負している。

 ターミネーターシリーズは名シリーズだ。特に2は。

 その2の敵の最後は。


「溶鉱炉ってこと?」


「そうだ、高炉の熱を使いこいつを溶かして隠蔽する。オーロヴィル・シティの高炉設備は原子力発電施設と併設され、鉛を使った部品を多く作っている」


「それって不味くないか、原子力発電施設と併設してるって。ライフライン維持の重要施設の不法侵入は国家反逆罪並みだろ?」


 カルロはそう言い、立ち上がりマリファナタバコの吸い殻を踏み消してそう言った。

 たしかにそうだ。発電所や上水道施設、通信施設、交通管制センターなどそう言った都市の維持に必要な施設への侵入は連邦でなくても最上級の刑罰が与えられる。

 都市生活で最も行政の人間が避けたいのは市民のパニックだ。

 電気が生活の基盤になっている。通信もそう、水道が止めてしまえば一発で街は壊滅する。

 そして道路などの電子制御化が進んだこの街では水道と並び電気は頸動脈のようなものだ。

 そこに無作法に侵入したのなら、警察隊の厄介で済めばいい方だろう。最悪は州軍の無条件発砲でお陀仏だ。そして何よりこの街、オーロヴィル・シティの売りであるヒーローの登場となれば一大事だろう。

 ジェフリーは僅かに考え込んだが、その提案を選択した。


「やるしかねえな。俺のとこの管轄外だがその高炉の警備設備は調べておく。カルロ、IDジャマーを今日中に調達できるか」


「ご用命なら」


「ライスボール。お前は念のためにジャックの変身後の調子を調べろ。明日の夜に決行するぞ」

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