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エルフ王――四百年後、死んだはずの妻が帰ってきた  作者: 忘却セミコロン
第一章 沈黙を解く迷宮

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第三話 炎を纏う剣

戦いを重ねるうちに、アークはあることに気づいた。カイリの斬撃の軌道そのものに炎を纏わせる、独特な魔力の扱い。


アークのやり方と、発想が同じだ。

騎士団の教えは剣そのものに魔法を乗せていたが、アークは自身で少し改良を加えていた。


カイリがアークに興味を示すように尋ねた。

「お前もか」


「ああ。こっちの方が消費が少ない」


カイリの顔がパッと明るくなった。

「だよな!」


短いやり取りだったが、手応えがあった。互いのやり方を、互いが理解できる。それだけで、剣を交える上での信頼が一段深まる。


その会話を境に、二人の連携は目に見えて滑らかになった。シオンが崩し、カイリとアークが同時に踏み込み、退路をシャンテが塞ぐ。無駄のない流れが、自然とできあがっていった。


「これで楽できるわい」

若い三人の息の合いようを眺め、シャンテが目を細めて笑った。




きれいな水の湧く泉を見つけ、その日はそこで野営をすることにした。


シオンが当たり前のような顔をして、調理の準備を始める。手際は良さそうに見えたが、出来上がったものは――味付けという発想そのものが抜けていた。


「なに?」

「いや……」


言葉を濁すアークに、シオンは表情も変えずに鍋を差し出してくる。断れる空気ではなかった。


結局、アークが苦笑しながら手を貸すことになった。干し肉と乾燥野菜を使い、味を整え直す。あっという間に、まともなスープが出来上がった。


「……おいしい」

シオンがぽつりと呟く。


戦場でのあの、冷徹なまでの正確さとの落差に、アークは思わず笑ってしまった。


「戦い方はあれだけ隙がないのに、料理は苦手なんだな」

からかうつもりはなかったが、シオンの眉が寄り、耳が赤くなった。


――意外な一面だ。


アークは、そう思った。





火を囲んでの食事の途中、自然と話は過去に向かった。


「オレとコイツは、鬼の国ドラウグヴァル

から逃げてきた」

カイリが、静かに語り始めた。


護衛をしていた姫――アリアと、恋仲だったこと。二人で駆け落ちする計画を立てていたこと。だが、護衛の中に裏切り者がいて、計画は失敗に終わったこと。


そして、アリアは殺され、姫殺害の濡れ衣を着せられたカイリとシオンは、山脈を越え、この国まで逃げてきたこと。


淡々とした言葉が、重みを持って積み重なっていく。


シャンテが、静かに目を閉じた。

「世界樹は、魂を巡らせる。今生で報われなんだ分は、次の生で――そう信じて、儂は祈るとしよう」

そう言って、老司教は短く祈りを捧げた。姫の魂が、次は安らかであるようにと。


「……ありがとう」

カイリは手で額を抑え、俯いた。


シオンは、何も言わなかった。

ただ両手を祈りの形に組み、顔を伏せている。


アークは、その横顔を見た。

褐色の瞳が微かに、潤んでいた。


――アリア姫は、シオンにとっても、大切な人だったのだろう。


何があったのかまではわからない。だが、彼が抱えているものの重さだけは、アークにも静かに伝わってきた。


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