第三話 炎を纏う剣
戦いを重ねるうちに、アークはあることに気づいた。カイリの斬撃の軌道そのものに炎を纏わせる、独特な魔力の扱い。
アークのやり方と、発想が同じだ。
騎士団の教えは剣そのものに魔法を乗せていたが、アークは自身で少し改良を加えていた。
カイリがアークに興味を示すように尋ねた。
「お前もか」
「ああ。こっちの方が消費が少ない」
カイリの顔がパッと明るくなった。
「だよな!」
短いやり取りだったが、手応えがあった。互いのやり方を、互いが理解できる。それだけで、剣を交える上での信頼が一段深まる。
その会話を境に、二人の連携は目に見えて滑らかになった。シオンが崩し、カイリとアークが同時に踏み込み、退路をシャンテが塞ぐ。無駄のない流れが、自然とできあがっていった。
「これで楽できるわい」
若い三人の息の合いようを眺め、シャンテが目を細めて笑った。
きれいな水の湧く泉を見つけ、その日はそこで野営をすることにした。
シオンが当たり前のような顔をして、調理の準備を始める。手際は良さそうに見えたが、出来上がったものは――味付けという発想そのものが抜けていた。
「なに?」
「いや……」
言葉を濁すアークに、シオンは表情も変えずに鍋を差し出してくる。断れる空気ではなかった。
結局、アークが苦笑しながら手を貸すことになった。干し肉と乾燥野菜を使い、味を整え直す。あっという間に、まともなスープが出来上がった。
「……おいしい」
シオンがぽつりと呟く。
戦場でのあの、冷徹なまでの正確さとの落差に、アークは思わず笑ってしまった。
「戦い方はあれだけ隙がないのに、料理は苦手なんだな」
からかうつもりはなかったが、シオンの眉が寄り、耳が赤くなった。
――意外な一面だ。
アークは、そう思った。
火を囲んでの食事の途中、自然と話は過去に向かった。
「オレとコイツは、鬼の国ドラウグヴァル
から逃げてきた」
カイリが、静かに語り始めた。
護衛をしていた姫――アリアと、恋仲だったこと。二人で駆け落ちする計画を立てていたこと。だが、護衛の中に裏切り者がいて、計画は失敗に終わったこと。
そして、アリアは殺され、姫殺害の濡れ衣を着せられたカイリとシオンは、山脈を越え、この国まで逃げてきたこと。
淡々とした言葉が、重みを持って積み重なっていく。
シャンテが、静かに目を閉じた。
「世界樹は、魂を巡らせる。今生で報われなんだ分は、次の生で――そう信じて、儂は祈るとしよう」
そう言って、老司教は短く祈りを捧げた。姫の魂が、次は安らかであるようにと。
「……ありがとう」
カイリは手で額を抑え、俯いた。
シオンは、何も言わなかった。
ただ両手を祈りの形に組み、顔を伏せている。
アークは、その横顔を見た。
褐色の瞳が微かに、潤んでいた。
――アリア姫は、シオンにとっても、大切な人だったのだろう。
何があったのかまではわからない。だが、彼が抱えているものの重さだけは、アークにも静かに伝わってきた。




